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デル・テクノロジーズが国内事業戦略を説明、「Dell Technologies World」の振り返りも

「『Dell Technologies APEX』はデル自身の変革でもある」

2021年06月14日 07時00分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 デル・テクノロジーズは2021年6月10日、国内市場における事業戦略説明会を開催した。日本法人社長の大塚俊彦社長は、重点戦略として「戦略的トランスフォーメーションの推進」「新しい価値創造の追求」「新しい働き方の実現」の3点に取り組んでいることをあらためて強調。「これまでと同様に、日本のお客様の変革に貢献する真のパートナーになることを目指す」と述べた。

 さらに日本法人CTOの黒田晴彦氏が、5月5と6日(米国中部時間)に開催されたグローバル年次イベント「Dell Technologies World 2021」において紹介されたメッセージや注力する方向性などを説明した。

日本における2021年の重点戦略

デル・テクノロジーズ 代表取締役社長の大塚俊彦氏、同社 CTOの黒田晴彦氏

重点戦略として「3つの“Lead”」に取り組む

 大塚氏は冒頭、グローバルの2022年度第1四半期(2021年1月~3月期)の業績を報告した。売上高は前年同期比12%増となる245億ドル、営業利益が同 26%増の27億ドル、純利益が56%増の18億ドルとなった。大塚氏は「第1四半期としては過去最高の売上、営業利益」だったと述べ、同社ビジネスは堅調に推移していると総括する。

 デル・テクノロジーズでは、自社で調査した「2020: Dell Technologies Index」に基づき、グローバル/日本の顧客の多くが「今後1~3年の投資対象エリア」と回答した5G、エッジ、データマネジメント、ハイブリッドクラウド、AI/ML、セキュリティを「6つの成長領域」ととらえている。大塚氏は、この成長領域に重点的な投資を行うとともに、製品強化やソリューション強化、人員体制の大幅強化を行う考えを示す。

 日本法人における重点戦略としては、「顧客の変革に貢献する真のパートナーに」というビジョンの下で、3つの“Lead”に取り組んでいることを紹介した。

 ひとつめのLead Now=「戦略的トランスフォーメーションの推進」では、顧客企業が課題とするデジタル変革(既存ITの競争力強化、xFH:Work From Home実現、デジタル競争力確立、社会インフラ変革)に貢献するという観点から取り組む「WIN2(Winning In New Normal)」の推進、継続的に投入している戦略製品/テクノロジーを活用した先端経営の実践支援、業種別アプローチ強化や戦略パートナーシップの強化と推進によるGTM(Go To Market)の進化に取り組む。

 「コロナ禍においては、課題により沿った提案活動が、これまで以上に必要になる。それに向けて、戦略パートナーシップとの強化にも重点的に取り組む」(大塚氏)

 次のLead Future=「新しい価値創造の追求」では、5月のDell Technologies Worldで広範なポートフォリオを発表したDell Technologies APEXに注力し、「構想段階から実装段階に入っていく」(大塚氏)。また、前述した6つの成長領域への投資を強化し、国内では「5G Lab」や「AI Experience Zone」の解説、「Cloud X Team」の新設、顧客や研究機関との連携強化を図る。また5Gパートナーシップも強化していくと述べた。

そうした取り組みの最新事例として、NTTやNTTドコモ、ソフトバンクとの5Gインフラに関する協業、東京大学や京都大学、北陸先端科学技術大学院大学とのHPC分野における協業などを紹介

 3つめのLead Ourselves=「新しい働き方の実現」では、ハイブリッドワークスタイルを自ら推進し、リモートワークやコラボレーションを通じた生産性と創造性の追求、顧客エンゲージメントの改革、さらに今年9月に予定している新オフィス(東京・大手町)への移転にも触れた。

 この新しい働き方の実現においては、Technology、Powple/Culture、Communicationの3点から、生産性と創造性を追求する「Connected Workplace 2.0」の実現に取り組んでいるという。Communicationについて、大塚氏は「日本では四半期に1回だった全社 All handsを隔週で実施し、米本社でも経営幹部の会議が隔週で行われている。また、社員との定期的意見交換を行い、施策に反映している」と説明した。

Dell Technologies自らが「新しい働き方の実現」の取り組みを進めている

デジタル化の進む世界を紹介した「Dell Technologies World 2021」

 続いてCTOの黒田氏が、5月に開催されたDell Technologies World 2021の振り返りを行った。

 基調講演において同社 会長兼CEOのマイケル・デル氏は、この1年間は世界中がコロナ禍に揺れた「大変な1年」だったが、そのなかでも「人類は多くのことを学び、多くのことを成し遂げてきた。世界はしなやかな強さを示した」と語った。その代表例はウイルス解析、ワクチン開発、ワクチン配布、長期効果の測定といった医療分野におけるテクノロジー活用だ。

 もちろん、その他のあらゆる業界/領域においても、デジタルテクノロジーの活用は加速した。たとえばアメリカンエクスプレスでは、大量のデータを分析することで、コロナ禍を通じて「多くの中小企業がビジネスをオンライン化していること」「消費者のオンライン支出が急増したこと」などが確認できたとし、これに基づいて新たなビジネスを創出すると語った。

 重要インフラ向けITソリューションを提供するDuos Technologiesでは、5GとAI、エッジコンピューティングの能力を活用した貨物列車車両の自動検査システムを構築し、検査時間を120分の1に短縮できたとした。医療機関のCincinnati Children's Medical Centerでは、患者のMRIやCTの画像データをAIで分析したり、心臓手術にVRを活用している例を紹介。ハネウェルでは、設備に搭載しているセンサーから収集しているデータを、5Gとエッジコンピューティングを利用することでリアルタイムに処理した例を紹介した。

Dell Technologies World 2021で紹介されたDuos Technologies、Cincinnati Children's Medical Centerの事例

すべてをサービスで提供するために、デル自身も変革を図る

 同イベントで“最大の目玉”として発表されたのがDell Technologies APEXだった。

 Dell Technologiesでは、すでに昨年10月のイベントでas a Serviceビジョンとして「Project APEX」を披露していたが、今回はその製品ポートフォリオを体系化し、正式なソリューションとして発表した。現時点ではAPEX Infrastructure Services、APEX Console、APEX Cloud Services、APEX Custom Solutions、APEX Partnershipがラインアップされている。

 黒田氏は、APEXのメリットとして「経費で支払うことができ資本の保全につながること、サービスを提供するデルが資産を持つためハードウェアの負債を除去できること、エッジコンピューティングの実現を支援できること、データの保管場所が明確になり、機密データの管理が行いやすいこと」を挙げた。

“すべてをサービスとして提供する”Dell Technologies APEXポートフォリオを発表

APEXの想定ユースケースと実際の顧客活用事例

 なお、これまでの製品提供から「サービスの提供」へとビジネスモデルを変化させるために、デル社内でもエンジニアリングやセールスからサービス、サプライチェーン、ファイナンスまで、すべての部門が変わっていく必要がある。黒田氏は「APEXはデル自身のトランスフォーメーションでもある」と語り、その動きを強化していく姿勢を示した。

APEXはデル・テクノロジーズ全体にとっての「新しい挑戦」でもある

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