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柳谷智宣のkintoneマスターへの道 第98回

kintoneでDX化する人材を育成する「J CAMP」に参加したら一皮むけた

2021年06月11日 09時00分更新

文● 柳谷智宣 編集●MOVIEW 清水

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サイボウズ社が提供しているウェブサービス「kintone」は、一言で言うなら「簡単に自社の業務に適したシステムを作成できるクラウドサービス」だ。業務アプリを直感的に作成できるほか、社内SNSとしての機能も備えスピーディーに情報共有ができるなど魅力が盛り沢山だ。本連載では、そんなkintoneの導入から基本機能の紹介、そしてアプリの活用法など、ビジネスの現場で役立つ情報を取り上げていく。第98回では、kintoneでDXを推進する人材を育成する「J CAMP」について紹介する。

 課題を解決するためにkintoneを導入し、自分たちでアプリを作れることに感動し、業務効率を改善している企業は多い。しかし、あれもこれも実現したいとチャレンジしていると、そのうち壁に突き当たってしまうことが多い。何となくテンプレートからアプリを作ることはできるが、使いにくいような気がするとか、従業員に使ってもらえず活用が進まない、という課題が出てくるのだ。

 kintoneの担当者のスキル・知識の問題なのだが、独学でこのハードルを越えられる人は少数派といっていいだろう。そんな人に向けて、kintoneの開発支援を行なっているジョイゾーは、DX人材育成サービス「J CAMP」の提供をスタートした。今回、4月に開催された「J CAMP 第1期」に筆者も参加したので、その様子を紹介しよう。

企業課題をヒアリングしてその場でアプリを構築するロールプレイにチャレンジ!

企業課題をヒアリングしてアプリを設計するスキルを学ぶ

 ジョイゾーは2010年に創業し、2011年にkintoneがリリースされたのと同時に、kintone専業のSIerとして事業を行なってきた。現在は、「システム39」という顧客の目の前で対面開発するサービスが人気だ。1回2時間の打ち合せを3回実施し、その場でkintoneアプリを作ってしまうというのが特徴だ。

 ヒアリングを含めて2時間×3回で企業システムが完成するのは、もちろんノーコードプラットフォームであるkintoneのおかげでもあるが、ジョイゾーのスキルも高いことも間違いない。すでに700件以上の対応実績があるという。

ジョイゾーが得意とする2時間の対面開発サービス「システム39」

 中小企業のkintone担当にも、このスキルが求められているのではないだろうか。的確に社内のニーズをヒアリングし、短時間にアプリを作成できれば、kintoneの活用を促進できるようになる。

 アプリの作り方は、時間をかけてトライアンドエラーを繰り返していけばある程度学ぶことができる。「cybozu developer network」をはじめ、kintoneの情報はネットにたくさん公開されているので、分からないことがあれば教えてもらえる環境がある。

 しかし、社内の課題をヒアリングして、アプリの設計を行なう、というスキルを身につけるのはなかなか難しい。筆者も数え切れないくらいkintone最前線の取材を繰り返し、実際に自分の会社にも導入し、アプリを作り、活用の連載まで持っている。それでも、複雑な課題をピンポイントで解決できるアプリを構築できるのか、というとその自信はない。

 kintoneの認定資格である「アプリデザインスペシャリスト」の勉強をすれば身につくのかな、などと考えていたところ、今回のお話をいただき、渡りに船と参加させてもらった。

 「J CAMP」は週に1回、4週で全4回開催される。最初のDay1、2は3時間、Day3、4は4時間の集中講座となる。今回はビデオ会議サービス「Zoom」を利用した。定員は10名とのことだが、今回は筆者を入れて5名が参加した。

参加者と開催者、合わせて10人がZoomに集った

 Day1はなかなか緊張する。Zoomには10人が参加し、半数が開催サイドと分厚い布陣だった。前半はデジタルトランスフォーメーション(DX)や業務改善に関わる講座。なぜDXをしなければならないのか、どうやってすればいいのか、何が必要なのか、などを解説してくれた。

 DXに関しては筆者もよく記事を書くが、確かに全体を理解せず、テレビCMの登場人物のようにふわっと「DX重要だよね」と感じているだけという企業は多い。言語化して繰り返し言われるとわかりやすいのでとても良いことだと思う。

「システムは完成したら終わりではなく、完成してからがスタート」などは、新型コロナウイルスの接触確認アプリを作った厚生労働省も肝に銘じておくべき金言だろう。

 後半はデータベースの講義で、これはとても役に立った。kintoneアプリを作るのに、必ずしもデータベースに関して深い知識が必要なわけではない。しかし、複雑なデータを管理し、業務で活用するためには、やはりデータベースをしっかり設計する必要があるのだ。

 初日で慣れていない状況でも、3時間は思ったよりすぐに終わってしまった。集中していたこともあるが、休憩やアイスブレイク、ワークショップなどを混ぜて、楽しく勉強することができた。

企業がDXをしなければならない理由を理解する

 Day2はデータベースの勉強の続きに加えて、「システム39」とkintoneの考え方を学んだ。ワークショップ形式で、まずはお題が出されて、参加者はkintoneのスレッドに考えていることを書き込み、その後検討と解説が行なわれる。この日だけでも10項目を行ったので、なかなか頭が疲れた。

 DXを実現するためのこつを18個教えてくれたのだが、自社でkintone活用がうまくいかなかった状況を思い返すと、いくつもできていないポイントがあった。何となくは感じていたが、言語化して指摘されることで、課題が浮き彫りになったのだ。そんなに突飛なことではないのだが、この作業ができておらず、いつまで経っても霧の中を歩いていたのだな、と理解した。

 Day3とDay4は4時間ずつかけてロールプレイングを行なった。「システム39」のように、依頼者にヒアリングし、その場でアプリを構築するという訓練を行なったのだ。1人がクライアント企業の業務担当役、1人がヒアリングを担当、1人がアプリ開発を行うという分業制だ。残りの2人は観察役として参加する。

 短時間で区切り、役割を交代しながら、5セッションを2日間行なう。最初に、ジョイゾーのメンバーによるデモンストレーションが行なわれたが、流石だった。ヒアリングしながら、みるみるアプリができあがっていく。

 とは言え、実際にやってみるとそううまくはいかない。初日から、クライアント役の人の要求は高い。「顧客リストを作りたい」なんてシンプルな話ではなく、複雑な製造工程の最適化と不良在庫の削減などを求められるのだ。

ロールプレイングは難しく、持ち時間があっという間に過ぎてしまい、筆者はまともなアプリを作れなかった

 最初はできなかった。しかし、Day4が終わる頃、全員、人が違ったようにスキルが向上していた。これは、体験することで伸びるスキルなのだな、と感じた。システム開発の仕事に就くか、社内のkintone担当でごりごりとトライアンドエラーを繰り返して身に付くのだろう。筆者が、少し調べてとりあえず動作するアプリを作っているのとは別の領域だと理解した。しかし、そこまで難しいことでもない、と今は感じている。

 上司や部下、他部署、取引先が抱えている業務課題をヒアリングし、本人も把握し切れていない原因を引き出し、解決手段を考え、可能なところをkintoneアプリに落とし込む。そして、そのアプリを改善し続けることで、DXが見えてくるのだ。

 「J CAMP」の価格は「システム39」と同じく、39万円(税別)となる。個人で気軽に試せる価格ではないが、企業がkintone人材のスキルをアップデートすると考えれば高くはないだろう。

 現在、「J CAMP 第2期」の募集が行なわれている。スケジュールは第1回が7月14日(水)から。興味がある人はジョイゾーのウェブサイトで確認してみよう。

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