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Apple M1搭載で大幅性能アップの「iPad Pro」&カラフル7色「iMac」特集 第33回

小さいながらも“製作者の意図”を見事に反映する高信頼・高画質

iPad Pro 12.9インチのディスプレーは「バーゲン価格」だ

2021年06月06日 12時00分更新

文● 本田雅一 編集●飯島恵里子

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Apple M1を搭載した新iPad Pro 12.9インチモデル

 Apple M1を搭載したiPad Proが登場し、すでに入手している読者もいることだろう。最新のMacと同じプロセッサを搭載し、薄型筐体にもかかわらず性能にはほとんど違いがない。ThunderBolt 3に対応したことでSSDからのデータ取り込み速度も2倍程度に。さらに従来は6GBだったメインメモリが8GB、あるいは16GBへと増加している。

 M1を搭載したことで「iPad Proがどう変わるのか?」と期待していた読者も多いだろうが、筆者はM1搭載iPad Proが本来の実力を発揮し、それを体感できるようになるのは、今年秋に新しいiPadOSがリリースされてからになるのでは?と想像している。

 この話は来週、次期iPadOSの一部機能がアナウンスされるだろうWWDC 2021が、日本時間の6月8日に控えているだけに、コラムの後半で簡単に触れるにとどめたい。が、現時点でもその魅力を存分に感じられる要素がある。それが12.9インチモデルのディスプレーだ。

“黒だけ”ではなく映像の質が全般に向上

 仕組みだけがすべてではないが、より良い映像を実現するには、それなりの仕掛けは必要になる。まずは画質が大きく改善する仕組みから話を進めよう。

 12.9インチモデルだけではあるが、今世代からミニLEDバックライトを採用するディスプレーが搭載され、1万個のLEDを用いた2500分割のローカルディミング制御が行われる。といってもピンとこない方もいるだろうが、多分割のローカルディミングは、液晶が持つ基本的な問題を大きく改善する(ただし適切な制御が伴わないと状況は悪化するのだが)。

 ローカルディミングとは、液晶のバックライトを画面の領域ごとに明るさ調整(ディミングとは暗くすること)するという意味だ。2500という分割数はかなり多いと考えて差し支えない。バックライトを部分的に暗くすると何がいいのか?

 ある小さな領域の中で、最大の明るさの画素が25%だったとしよう。この時、バックライトを25%まで絞り込めば、液晶パネルの画素が持つ表現能力を100%使って、0-25%の明るさを表現することになる。

 液晶は特性上、暗い部分の応答が悪く、細やかな透過量の調整が行えない。さらに液晶シャッターから漏れる光が一定だとすると、暗い領域では漏れた光によって画素の色純度が下がる(鮮やかさが失われる)。

 ローカルディミングを用いれば、液晶が不得意な領域をあまり使うことなく、黒に近いギリギリのところまでを表現できるようになる。 ローカルディミングというと、真っ暗な領域のバックライトを消灯することで、暗闇を表現できるようなイメージがある。確かに暗い部分の表現力は上がるのだが、液晶というデバイスが得意とする表現領域を最大限に活用するため、黒の沈みや暗部階調だけが利点ではない。

 また、ローカルディミングによる制御を行うことで、部分的に明るい映像の場合、ディスプレーに流れる電流の総量を抑えられる。このため一部分だけであれば、より高い輝度を表現できるようになる。iPad Pro 12.9インチの場合、1000nitsまでを表現できるとされているが、ピーク時には1600nitsまで表現できるのはそのためだ(旧モデルは最大500nits)。

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