「3G終了でケータイが使えなくなる」という誤解が広まっている

文●石川温 編集● ASCII

2021年05月31日 09時00分

 あるメディアに「ガラケーサービス終了に抗議する愛用者の言い分」という記事が載っていた。ガラケーを愛用しており、スマホに乗り換える気はない。今後、3Gサービスが終了することでガラケーが使えなくなっては困る、というものだ。

 この記事は公開後、読者の指摘によって修正されたようだが、世間的には「3Gサービス=ガラケー終了」という誤った認識が広まっているようだ。

3Gが終わってもケータイは終わらない

 現在、スマホやケータイは4Gもしくは5Gとなっている。ちまたには3Gで通信しているガラケーもまだまだ多い。

 その3Gだが、各社ともまもなくサービスを終了しようとしている。KDDIが2022年3月31日、ソフトバンクが2024年1月下旬、NTTドコモは2026年3月31日という具合だ。NTTドコモでは同日、iモードサービスも終了させる。

 すでにケータイ向けのコンテンツサービスはユーザー数の減少によってサービスを終了しているところも多い。かつてのようなケータイで情報収集をすることが難しくなっているのは事実だ。

 確かにショップ店頭などでは「3Gが終わるので、スマホに乗り換えよう」的なプロモーションをしているところも多い。これを見えて「3Gが終わるとケータイが使えなくなるのか」と誤解をするのも無理はない。

 しかし、2022〜2026年になったからといって、「ケータイが使えなくなる」というのは間違いだ。

NTTドコモは「ドコモケータイ」新機種を発売する

 使えなくなるのは、あくまで通信技術としての3Gであり、いま、市場には3Gではなく、4Gにつながるケータイというのが一般的になっている。4Gサービスはいまのところ主力であり、5Gが始まったからといってすぐに終わるようなものではない。

 NTTドコモは2021年6月3日に「ドコモケータイ DIGNO ケータイ ベーシック KY-41B」を発売する。通信は4Gに対応。見た目はシンプルな折りたたみケータイで、カメラやおサイフケータイ、ワンセグといった機能は搭載されておらず、通話メインのモデルと言えるだろう。

 ちなみに、世間ではケータイというより「ガラケー」という呼称が一般的になっているが、本来「ケータイ」と「ガラケー」は微妙に違う。

 そもそも「ガラケー」は「ガラパゴスケータイ」の略称であった。世界に比べて、日本のケータイは独自の生態系で進化しており、東太平洋上の赤道下にあるエクアドル領のガラパゴス諸島で独自の生態系が築かれている事になぞらえ、いつしか「ガラケー」と言われるようになった。

 おサイフケータイやワンセグ、赤外線など、日本特有の機能が盛り込まれているため、「ガラケー」とやや馬鹿にされたような言い方が浸透したのだ。

 先述のドコモケータイ DIGNO ケータイ ベーシック KY-41Bにはワンセグやおサイフケータイが搭載されていない。つまり、ガラケーではなく、ケータイという方が正しい。業界的にはスマートフォンに対して「フィーチャーフォン」という言い方をしているところが多い。

ケータイを作り続ける京セラ

 NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクからは、細々ではあるが、ケータイの新製品も発売されている。NTTドコモは先述のドコモケータイ DIGNO ケータイ ベーシック(京セラ)を今年6月に発売するし、KDDIも「かんたんケータイ KYF41(京セラ)」を今年3月に発売したばかりだ。ソフトバンクも2020年3月にDIGNOケータイ3(京セラ)を発売済み。

 ちなみに、見ての通り、いまケータイを意欲的に生産しているのが京セラだ。同社はKDDIの親会社ということもあり、au向けが中心だったが、いまではソフトバンク、さらにNTTドコモにも納入している。京セラはアメリカ市場でも警察や消防などガテン系職業向けのスマホやケータイを手がけており、堅牢性、信頼性で提供のあるデバイスで定評のあるメーカーだ。

 京セラはなぜケータイを作り続けるのか。

 同社によれば「現在、スマートフォン市場が拡大する中で、一定のシニアや法人のお客様の中にはこれからもフィーチャーフォンを使用し続けたいと思っている方々がいます。京セラは、そのようなお客様のニーズにお応えし、メーカーとして継続的にフィーチャーフォンを提供していくという社会的な責任があると考えております」という。

 かつてケータイと言えば、パナソニックやNECが花形メーカーであったが、スマホの波に飲まれてあっさり撤退してしまった。ガラケーを使い続けるユーザーのなかには「操作を覚えるのが面倒だから同じメーカーを使い続けたい」とこだわる人もいるようだが、ケータイを作るメーカーはかなり限られるため、「同じメーカーを使い続ける」というのも難しくなってきているのが現状だ。そんななか、京セラは地道にケータイを作り続けている。

 一方で、メーカーがやる気でも、キャリアがケータイを出し続ける意思がないことには、ケータイが絶滅しかねない。

ケータイ愛用者は悲観する必要なし

 そこで今後の予定について、キャリア3社に尋ねたところ、「ドコモケータイの形式の機種は今後もお客様のご要望を見ながら総合的に判断していきたい」(NTTドコモ)、「お客様のご要望を伺いながら、今後もフィーチャーフォンの提供はしていく」(KDDI)、「3Gが終了しても4Gケータイなどに機種変更することで、ケータイを継続して利用できる」(ソフトバンク)という回答であった。

 いずれにしても、3Gが終わっても、4Gケータイは出続ける。ケータイ愛用者はこれからも悲観する必要はなさそうだ。

 

筆者紹介――石川 温(いしかわ つつむ)

 スマホ/ケータイジャーナリスト。「日経TRENDY」の編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界の動向を報じる記事を雑誌、ウェブなどに発表。『仕事の能率を上げる最強最速のスマホ&パソコン活用術』(朝日新聞)など、著書多数。

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