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9面ビデオウォールとアライアンス各社の機器で相互接続性を実証、国内/海外市場での最新動向も

4K映像を10GbEで伝送、SDVoEアライアンスが「Interop Tokyo 2021」でデモ展示

2021年04月21日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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Interop Tokyo 2021のネットギアブースに併設されたSDVoEアライアンスのデモ展示。アライアンス各社のエンコーダー/デコーダーをネットギアの10Gスイッチ経由で接続し、9面ビデオウォールに4K映像を表示させていた

 2021年4月14日に開幕した「Interop Tokyo 2021」の幕張メッセ会場では、ネットギアブースにSDVoEアライアンスのデモ展示が併設されていた。SDVoEは、4K画質の高精細映像/音声を10ギガビットEthernet(10GbE)経由で伝送することができる、業務用音声映像(ProAV)市場向けの国際的な標準規格だ。

 2017年に発足したSDVoEアライアンスには現在、業務用映像/音響機器メーカーを中心に50社以上が参加し、相互接続性を持つSDVoE準拠製品は700以上まで増えているという。同アライアンスのボードディレクターを務める岩﨑良平氏に、Interopで展示を行った目的や、グローバルにおけるSDVoEソリューションの採用状況などを聞いた。

SDVoEアライアンスのボードディレクターを務める岩﨑良平氏

マルチベンダーのトランスミッター/レシーバーを相互接続したデモ展示

 今回のInterop Tokyo展示には、SDVoEアライアンスから6社(ネットギア、Semtech、IDK、CANARE、Black Box、ZeeVee)が参加。ソフトウェアコントローラーとネットギアのフル10Gスイッチ「M4300-24X24F」を中心に据え、5社の4Kトランスミッター(エンコーダー)/レシーバー(デコーダー)間をSDVoEで接続して9面のビデオウォールシステムを構成していた。

 このシステムではソフトウェアコントローラーがマトリクススイッチの役割を果たし、画面表示形式(3×3画面、2×2画面、9画面個別など)や表示する映像ソースをタッチパネル/自動で切り替えるデモが披露されていた。エンコーダー/デコーダーは4社のマルチベンダー構成で、異なるメーカー製品間でも映像データが伝送できなければならないが、SDVoE準拠製品間の相互接続性(まさに“Interop”である)により問題なく表示できることをアピールしていた。

下段前面の各社トランスミッター(エンコーダー)から出力された4K映像のSDVoEデータは、ネットギアの10Gスイッチを経由して上段にある各社レシーバー(デコーダー)に届き、映像に変換されてHDMI経由でディスプレイ表示される。ソフトウェア制御によりトランスミッター/レシーバー間の接続が切り替わり、他社製品間で接続されることもあるが、映像は問題なく表示されていた

 岩﨑氏によると、SDVoEアライアンスとしてこのデモ展示を行うのは、国内では今回が初めてだという。

 「このデモでアピールしたいことは、SDVoE製品間で互換性を持っているということです。ほかの(AV over IPの)規格では、メーカー間の互換性があるとうたいながらも、実際にはメーカーごとに若干仕様が異なるケースがあります。SDVoEの場合は、このデモでもわかるとおり完全な相互接続性を確保しています」

 さらにこのデモでは、メーカー間だけでなくチップ世代間の相互接続性も確認できるという。ここで使われている各社のトランスミッター/レシーバーは搭載するチップの世代が異なるが、それでも問題なく相互接続できている。

 「お客様がある世代の製品を導入し、次の段階でシステム拡張のため新世代の製品を導入したいとなったときに、世代間で互換性がなければすべて導入し直すことになります。チップの世代を超えて、SDVoEの互換性をしっかり保てていれば、その必要がありません」

AV over IP化することのメリット:コストと技術進化スピード

 そして、トランスミッター/レシーバー間を10GbEで接続するのがネットギアの10Gスイッチだ。SDVoEデバイスを接続すれば設定変更なしで使える“SDVoE/ProAV Ready”モデルは、現在「M4250シリーズ」「M4300シリーズ」「M4500シリーズ」と拡大している。

デモ展示に使われていたネットギアの10Gスイッチ「M4300-24X24F」。“SDVoE Ready”製品のため、SDVoEのトランスミッター/レシーバーをケーブル接続すれば設定変更なしで映像伝送ができる

 SDVoEは10GbEで4K映像が伝送できるため、映像専用の特別なケーブルを用意しなくとも、カテゴリ6Aケーブルが敷設してある施設ならば容易に導入ができる。

 岩﨑氏は、SDVoEによるAV over IP化によって、映像専用機器ではなく汎用的/標準的なEthernetスイッチが使えるため導入コストが抑えられること、ネットワーク経由でリモートから稼働状況の監視が容易になったことなどのメリットがあると説明した。メーカーやインテグレーター側でも、顧客拠点まで足を運ばずにリモートからサポートすることが可能になる。

 「さらに、これからは8K映像、プロゲーミングの世界ではフレームレートの速い4K/120Hz映像への対応なども求められます。それに伴って映像伝送の帯域幅も拡大しなければなりませんが、専用機器の場合はメーカー側の開発に長い時間がかかります。一方で、(ITの)ネットワーク製品のほうは40G、100Gもすでに一般化していますから、お客様にいち早く次世代のテクノロジーと映像ソリューションを提供できるはずです」

 海外市場では現在、特に中国市場の伸びが大きいと岩﨑氏は説明した。特に、AV over IP規格の1つであるHDBaseTからより高品質な映像を求めて、既存のネットワークを活用しつつSDVoEへの置き換えを図るケースが多いという。

 「ヨーロッパでは、イベント映像業界がSDVoEをかなり推している状況です。それに伴って、(イベントなどで使用される)日本のプロジェクターメーカーさんなどがSDVoEに注目し始めるという変化が起きています」

 国内市場では、トランスミッター/レシーバーの安価なモデルが登場し始めたことで問い合わせや案件が増えており、地方公民館などのホールや議場での採用を中心に、導入事例が増えつつある段階だという。また、文部科学省の「GIGAスクール構想」を通じて学校内へのカテゴリ6Aケーブル敷設が進んだため、そこにも入りやすいのではないかと語る。

 国内市場における展開をさらに活発化させるため、このたびSDVoEアライアンス内に日本市場向けのマーケティングコミッティを新たに立ち上げたという。今回のデモ展示はその一環であり、今後もさらにマーケティング活動を強化して「日本のお客様にもSDVoEを浸透させていきたい」と岩﨑氏は語った。

ちなみに創立25周年を記念したネットギアブースでは、「Orbi Pro」「NETGEAR Insight」によるテレワーク環境やオフィスネットワークのグレードアップ提案のほか、家庭向け「Orbi」やゲーミングWi-Fiルーターの「NIGHTHAWK」、スマートアートキャンバスの「Meural」なども展示されていた

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