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中堅企業を阻む「3つのデジタル化の障壁」を指摘、定額制DXコンサルティングサービスなど新施策も

デル・テクノロジーズ、中堅企業「IT投資動向調査2021」発表

2021年03月25日 07時00分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 デル・テクノロジーズは2021年3月24日、今年で5年目となる「IT投資動向調査2021」の結果を発表した。DX(デジタルトランスフォーメーション)による全社横断的な事業変革に着手している中堅企業の半数以上(51.7%)が業績回復傾向にある一方で、「事業変革推進には投資の最適化が必須」と考える企業が4分の3(75.4%)を占めるなど、デジタル化を妨げる障壁も明らかになっている。

 同日の記者説明会では、今回の調査結果に対する分析のほか、この調査結果に基づいた同社の新たな中堅企業向け施策について発表が行われた。

「IT投資動向調査2021」の調査結果ハイライト

デル・テクノロジーズ 上席執行役員 広域営業統括本部長の瀧谷貴行氏、同 広域営業統括本部 西日本営業本部長の木村佳博氏

「部門ごとの働き方改革や営業変革は業績回復の後押しになっていない」

 IT投資動向調査2021は、2021年2月から3月にかけて、国内中堅企業(従業員数100~999名)の1500社を対象に実施されたもの。中堅企業におけるIT投資規模やDXへの投資動向、顕在化している課題など83項目にわたる回答を得ており、今年は特に、テレワーク環境下における働き方改革の進捗、デジタル化推進の実態やIT人材育成、BCPなど、ニューノーマル時代に向けた動向についても質問の範囲を広げている。

 デル・テクノロジーズ 上席執行役員 広域営業統括本部長の瀧谷貴行氏は、「調査結果からは、デジタルを活用した既存業務プロセスの効率化によるコスト削減、新たな事業価値創造を目指したDXへの投資のバランスを取りながら、データのデジタル化に着手し、全社横断的に事業変革に取り組むことで、ニューノーマル時代における業績回復傾向を強めることができることがわかった」と総括した。

 調査結果を見るとまず、業務データの可視化やデジタル化に向けた部門新設、AIを活用した業務の自動化事業変革といった「全社横断的な事業変革」に取り組んだ企業は3.5%。非常に少ない数字ではあるが、そのうちの51.7%の企業が「業績は回復傾向にある」と回答している。一方で、テレワークやWeb会議導入など「働き方改革」に取り組む企業(全体の60.5%)で業績が回復傾向にあるのは24.9%、オンライン商談やセミナーなどの「営業変革」に取り組んだ企業(5.4%)では8.3%と低く、全社横断的な事業変革に取り組む企業は「成長している企業の比率が圧倒的ともいえる結果になった」(デル・テクノロジーズ 広域営業統括本部 西日本営業本部長の木村佳博氏)としている。

 「必要に迫られて、部門ごとに行われた働き方改革や営業変革といった取り組みは、業績回復の強力な後押しにはなっていない。業績回復のためには、全社横断的な事業変革が必要である」(木村氏)

部門ごとではなく全社横断的な事業変革に取り組んだ企業では、業績回復傾向が強く見られている

 デジタル化推進に向けた人材確保については、「自社内で人材を育成(IT部門内)」が44.5%、「自社内で人材育成(事業部門内)」が30.9%となり、中堅企業においても内製化を重視する傾向が見られている。ただし木村氏は「今後は事業変革に取り組む新たな知見の不足が懸念される」とも指摘した。

 また、昨年の調査ではIT投資先としてランキング圏外だった「経営判断に必要な情報やデータの可視化」を検討、計画する企業が21.7%と急増した。これについては「中堅企業の多くがデジタイゼーションの重要性を再認識した結果」だと分析しており、同様に昨年は圏外だった「デジタル化技術を活用した新たな収入源の創出」も6.1%と大きく進捗している。

 さらに、コロナ禍による経済環境の悪化によって、平均で12.3%のコスト削減が求められている。ただし、従来の業務時間の短縮(60.3%)、業務量の削減(49.2%)を筆頭とした取り組みが行われているものの、こうした対策で見込まれるコスト削減効果は平均8.2%にとどまり、さらなる取り組みの推進が求められていることがわかっている。そのほかにも「低コストで事業変革に取り組みたい」と考える企業は多く、たとえば補助金や助成金の活用を実施/検討している企業は62.0%に達した。

 リモートワークが浸透するなかで、VPNを含む社内ネットワーク環境がボトルネックとなっているケースも増加している。「ネットワーク環境の刷新や見直しを検討または計画」している企業が、前年比11.0ポイント増の40.1%に達した。また既存システムのクラウド移行を検討する企業は36.8%、すべてのPCをWindows 10に移行済みの企業は55.4%となっている。

中堅企業のDX実現支援に特化した「定額制DXコンサルティングサービス」

 瀧谷氏は、今回の調査結果から中堅企業における「3つのデジタル化の障壁」が浮き彫りになったと指摘した。

 「今回の調査結果から、中堅企業では『着手すべき事業変革領域が判断できない』『経営判断に必要な情報がデータ化されておらず事業変革を始められない』『事業変革の検討をスタートできない』という3つのデジタル化の障壁が明らかになった」(瀧谷氏)

 こうした調査結果を受けて、同社では2021年度の新たな中堅企業向け施策として「DXコンサルティングエコシステムの構築」に取り組むことを発表した。パートナーとの連携により、中堅企業のDXに特化したコンサルティングサービスを利用しやすい価格帯で提供し、「中堅企業の変革を加速させることを目的とした支援策」だと説明する。

 具体的にはまず今年4月から、無料のオンラインDX相談会や事業計画書支援、無料DXアセスメント、中小企業診断士による事業再構築補助金の無料相談窓口といったものを提供していく。さらに、奈良先端科学技術大学院大学やdTosh、DN Technology & Innovationとのパートナーシップによる「定額制DXコンサルティングサービス」も新たに提供する。

中堅企業における「3つのデジタル化障壁」と、今年取り組む新施策

 定額制DXコンサルティングサービスは、奈良先端大およびdToshと共同で進めてきた「中堅企業DXアクセラレーションプログラム」プロジェクトで蓄積したノウハウから、中堅企業の変革DXの障壁となっている「提案・現状分析」「データ収集・分析/示唆」「プロトタイプ開発」「サービス化」「アフターフォロー」といった各領域を支援するもの。

奈良先端大およびdTosh、DN Technology & Innovationなどとのパートナーシップで「DXコンサルティングエコシステム」を構成

 DN Technology & Innovationでは、データ収集からゴールに向けた仮説設定、方針の明確化といった「現状分析・企画」を50万円(税抜、以下同様)、プロトタイプ開発の方向性を明確化する「データ収集・分析/示唆」を月額98万円、プロトタイプ開発とともにデータ収集、モデル構築、学習システムとしての評価を実施する「プロトタイプ開発」を月額98万円、サービスとしての利用実施に向けたチューニングなどを行う「サービス化」を月額190万円で提供する。

 「親会社である大日コーポレーションのDXや、他社のDXに取り組んできた経緯があり、社内にはUXの専門家、データサイエンティスト、開発部門など、DXを支える専門部隊がある。中堅企業に最適化したメニューを用意しており、なにをしたらいいのかわからないという入口のところから、自社のサービスに組み込むところまでをサポートすることができるほか、継続的なサポートも行う。日本の中堅企業のDXを支援したい」(DN Technology & Innovation CDO 兼 AI & DX Lab General Managerの石橋正章氏)

 またdToshでは、「現状分析」「データ事前分析」「プロトタイプ検証」「商品開発」「社員のDX強化支援」などのサービス項目を組み合わせた、月額5万円~50万円までの4つのプランを用意。社内に開発体制が準備できない場合には、データベース構築やビジュアライズ、予測モデルなどの追加メニューも選択できるようにしている。

 「社内にDXを推進する専門家が少なく、DXに向けた段階的な投資や施策が用意されていないことから、効果的なデジタル化を実現できている企業が少ない。奈良先端大と、この大学から生まれたdToshの組み合わせにより、学術的な指導のもと、各企業が安心してDXを推進できるようになる。様々な分親から研究者や有識者を集めて、スピード感を持った形で、産学連携型の支援体制を取ることができる」(dTosh 代表取締役、奈良先端科学技術大学院大学 情報科学領域博士研究員の平尾俊貴氏)

 デル・テクノロジーズでは、この定額制DXコンサルティングサービスに関するエコシステムを、随時拡大していく考えだ。

今後もDXコンサルティングエコシステムを随時拡大していく方針

 さらに、中堅企業におけるワークスタイル変革の新施策も用意した。具体的には、50台以上のPCを導入した企業に「Microsoft Teams」や「OneDrive for Business」を1年間無償提供するなど、働き方のユースケースにあわせた3種類のパッケージを用意した「ワークスタイルリデザイン支援パッケージ」、電子署名システムのフロー連携などを支援するために、Boomiによるデータ統合などを提供する「中堅企業向けBoomi特別プラン」を用意している。

 また、中堅企業のIT責任者が情報交換を行う「中堅企業異業種交流会 オンライン」の開催、データーセンター事業を展開するカゴヤ・ジャパンとの連携により、HCIを活用したパッケージソリューションである「Kagoya FLEX HCI」の提供、Windows 10の更新管理やセキュリティ、Microsoft 365の活用方法などのコンテンツをオンラインで提供する「中堅企業Windows 10駆け込み寺」、PCの管理やヘルプデスク機能を提供する「PCマルチベンダーサポートプログラム」も提供する。

ワークスタイル変革でも「4つの障壁」と支援策を明らかにした

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