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格安データ通信SIMを買って格安に使い倒す! 第173回

KDDIグループの隠れた格安SIM「J:COM MOBILE」の意外な高速さとサポートに少々驚いた

2021年03月07日 12時00分更新

文● 正田拓也 編集● ASCII

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 KDDIのモバイル通信サービスといえば、「au」「povo」「UQ mobile」の3つに、MVNOの「BIGLOBEモバイル」が知られているが、やや忘れがちなのが「J:COM MOBILE」である。元々はケーブルTVの付加サービスとして開始されたことが要因と言えるが、昨秋からはケーブルTVの営業エリア外でもウェブ上から加入できるようになった。

 しかも、2月18日に新プランがスタートし、単体契約なら音声SIMが1GBで月980円(以下、すべて税抜)で、10GBでも月1980円とリーズナブルだ。

ウェブ上での単体申し込みも可能になったJ:COM MOBILE

KDDIグループの中では隠れた存在の格安SIM

 J:COM MOBILEは、昨年9月発表での新型iPhone SEが実質0円で入手できることが話題になったが、今年に入って、総務省により、実際にサービスを提供していたJ:COMの地域会社をKDDIの特定関係法人と扱うことで、端末割引の上限規制がかけられてしまった。ただし同時に、解約の違約金の上限が1000円という規制もついた。

 そのこともあって、J:COM MOBILEでは長期契約が不要の新プラン「J:COM MOBILE Aプラン ST」を2月18日にスタートし、20GBを月2480円で提供。1GB/5GB/10GBというプランも選べるほか、10GB/20GBは加入から12ヵ月間は割引があり、若年者ならさらなる割引も設定されている。

2月18日スタートの新料金プラン

 割引無しの金額だけ見れば、新料金プランの「J:COM MOBILE Aプラン ST」は、他のMVNOの格安SIMの新プランと同等か少し高いくらいで大きな特徴があるわけではない。しかし、J:COM MOBILEは以前からauやUQ mobileでも提供している機種をJ:COM仕様として用意するなど、他の格安SIMにはない端末施策をとっている。しかも、広告には人気女優を起用するなど、メジャー感を出している。

 ネットワーク自体はau網を用いるため、エリアも同じ。となると、MVNOの格安SIMで問題になるデータの流れ具合はどうなのかが気になるところだが、サブブランド並みの速度を保つことができる回線であれば、この料金であれば魅力的になってくる。そこで今回実際に契約して試すことにした。

申し込みは独特、家族の代表が契約する形

 J:COM MOBILEはケーブルTVの付加サービスだったためか、契約方法がやや特殊で、家族の代表者が申し込みする形になっている。1回線だけなら通常と変わりないが、複数回線を契約する場合の名義はすべて代表者となり(最大5回線まで)、料金も代表者が一括して支払う形である。

 加入時の住所入力もケーブルTVの営業エリア内はデータベースから所番地まで選択して入力する方式。住まいが戸建てか集合住宅かも選ばなければならないのは、システムを共用しているからと思われる。

 今回、筆者はSIMだけの契約をしてみたが、ウェブサイトでの手続きが済むと数日たってSIMが送られてきたが、加入時に本人確認書類のデータを送信したものの、配達時に宅配業者に提示を求められた。申し込み時の説明にはそう記載してあるが、2度の確認はあまり気持ちのよいものではないだろう。

 また、2020年12月にはヨドバシカメラ店内の格安SIMが並ぶ一角にJ:COM MOBILEの売り場が登場し、ここでも申し込みはできるが、自宅に送られてくる手順は同じ。取り扱い端末の展示はするものの、店頭では即日渡しもなければ端末代金の支払いも無い。

実際に加入して実測、MVNOの格安SIMよりは良好か?

 店頭では申し込みができないJ:COM MOBILEだが、筆者はウェブサイトから金曜に申し込み、火曜日にはSIMが届いた。SIMだけの契約なので、大きめの箱に緩衝材にくるまったSIMが入っているだけという状態で届いた。おそらく端末購入と同じ箱で発送していると思われる。

箱の中は案内冊子と緩衝材に厳重に包まれたSIMだけが入っていた

 今回はMNPではなく純粋な新規契約のため、端末で設定すれば、すぐに使うことができる。設定といってもAndroid機は案内に沿ってAPNを手動で入力し、iPhoneは構成プロファイルをダウンロードするという一般的な手順となる。

実際のSIMと説明の冊子

 速度計測アプリを使ったところ、速度はほぼ数十Mbpsとなり、きわめて普通に使える。MVNOの格安SIMで問題になるのが昼休みの速度だが、12時45分前後でも10Mbps以下になることもほとんどなかった。この時間帯に動画を視聴しても、途中で画が止まることなく、画質が大きく落ちるようなこともなかった。

昼12時45分頃の速度
(Mbps) 下り 上り
J:COM MOBILE 11.30 19.90
IIJmio 0.52 17.70
BIGLOBEモバイル 4.23 22.20
楽天モバイル 65.50 35.50
夜20時頃の速度
(Mbps) 下り 上り
J:COM MOBILE 12.80 10.60
IIJmio 39.80 15.30
BIGLOBEモバイル 24.20 22.20
楽天モバイル 64.00 12.30
昼12時45分頃の速度
(Mbps) 下り 上り
J:COM MOBILE 20.80 19.10
IIJmio 37.60 29.50
BIGLOBEモバイル 21.40 20.70
楽天モバイル 57.70 35.30

 また、夕方から夜間にかけても良好で、トップスピードこそほかの格安SIMなどに劣るものの、実利用は快適。一日全体を通しても数値的には際立った高速にはならないものの、スムーズにデータが流れてくることが感じられた。

 なお、現在のMVNOの格安SIMは、サービスさえ選べば以前のようにほとんど止まってしまうような速度低下はない。今回比較対象に用いたIIJmioも、測定アプリの数字では下りで1Mbpsを切っているときでも、TVerでのテレビドラマ視聴では画質は落ちても動画が止まることはほとんどなかった。また、同じKDDIグループの格安SIMのBIGLOBEモバイル(タイプA)も12時台の速度低下は少ない。そして、J:COM MOBILEは特に混雑時はBIGLOBEモバイルよりも優秀だ。

 また、比較したなかで数値がダントツの楽天モバイルは、1つの基地局に通信が集中しがちな繁華街では速度低下が大きいこともある。その点、J:COM MOBILEならauのネットワークを使うため、場所による差が出るようには感じられない。

「Speedtest」のグラフでは、最初の速度が高いことがわかる。何度も測定したが、この傾向はほぼ変わらない

 そして、速度のグラフからわかるように最初は速くて、徐々に遅くなっていく。ウェブ閲覧では最初に一気にデータを取得できるため、数字以上にページの表示がスムーズと感じることもある。

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