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ハイブリッドクラウド管理「Azure Arc」を統合、VM/コンテナ/PaaS基盤として活用可能

マイクロソフト、新世代「Azure Stack HCI」の国内提供を開始

2021年03月01日 07時00分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 日本マイクロソフトは2021年2月25日、新世代「Azure Stack HCI」の国内提供を開始すると発表した。新たにハイブリッドクラウド管理サービス「Azure Arc」を統合して提供されるソリューションで、デル・テクノロジーズ、富士通、日立製作所、日本ヒューレット・パッカード(HPE)、レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ(LES)、NECのOEM 6社が同ソリューションを販売することも発表された。

新世代「Azure Stack HCI」の概要。「Azure Arc」を統合し、仮想マシンだけでなくコンテナ環境やPaaS環境の基盤としても稼働する

日本マイクロソフト 業務執行役員 マーケティング&オペレーションズ部門 Azureビジネス本部 本部長の上原正太郎氏、同本部プロダクトマーケティング部 プロダクトマネージャーの佐藤壮一氏

Windows Serverベースの新OSでAzure Arcとの統合を進める

 これまでのAzure Stack HCIは、Windows Serverベースのリファレンスアーキテクチャソリューションとして提供されてきた。一方で新世代のAzure Stack HCIは、Microsoft Azureの1サービスとして提供されるハイブリッドクラウドソリューションとなる。これにより、顧客はオンプレミスとクラウドを一元的に管理することができ、クラウドへの移行や活用がより容易かつ効率的に実現できる。

 日本マイクロソフト Azureビジネス本部プロダクトマーケティング部 プロダクトマネージャーの佐藤壮一氏は、クラウド活用が進んでもオンプレミスのワークロードはなくならないため、「運用管理の全体最適化」と「ワークロードごとの個別最適化」を同時に実現するハイブリッドクラウドが重要になると指摘する。「そのためには、オンプレミスも最適化しなくてはならない」(佐藤氏)。

 新世代Azure Stack HCIでは、Windows ServerをベースにAzure Arcの機能を統合した専用OSがサブスクリプション形式で提供される。またオンプレミスやエッジ環境で動作する「Azure Kubernetes Service(AKS)」や「Azure Arc対応データサービス(Azure Arc enabled Data Services)」も搭載し、仮想マシンだけでなく、コンテナやPaaSを稼働させるプラットフォームとしても活用が可能だ。

 こうした特徴により、Microsoft Azureへのクラウド移行だけでなく、オンプレミスデータセンターの最新化、KubernetesによるハイブリッドDevOps基盤の導入、エッジ環境におけるインダストリーソリューションのハイブリッドクラウド化などが可能になる。

新世代Azure Stack HCIでは、仮想化ホストとしてのイノベーションにフォーカスした専用OSがサブスクリプション形式で提供される

 なお、今回のAzure Stack HCIの発売にあわせて、Azure Stackファミリーのポートフォリオも再定義された。汎用的なコンピュート/ネットワーク/ストレージ機能を提供する「Azure Stack HCI」のほか、クラウドマネージド型のハードウェアアプライアンスとして提供されるエッジデバイスの「Azure Stack Edge」、AzureサービスとAPIを、自身のデータセンターで稼働することを目的としたソリューションと位置づける「Azure Stack Hub」の3つのラインで構成する。

 「従来からのAzure StackはAzure Stack Hubとなり、Azure Stack Edgeはエッジコンピューティングを促進するAzureのネイティブアプライアンスになる。それぞれが価値を持ったソリューションになる」(佐藤氏)

Azure Stackファミリーのポートフォリオも再定義された

OEMパートナーによる幅広いハードウェア選択肢を提供

 新世代Azure Stack HCIソリューションのOEMパートナーとして、デル・テクノロジーズ、富士通、日立製作所、日本ヒューレット・パッカード、レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ、NECの6社が発表された。日本マイクソロフト 業務執行役員 デバイスパートナーソリューション事業本部の梅田成二本部長は、「エッジから基幹系用途にまで活用できる幅広い製品群が、各社から用意されている」と述べ、各社製品群を紹介した。

OEMパートナー各社から幅広いハードウェアの選択肢が提供される

 また、新世代Azure Stack HCIの導入支援早期パートナーとして、JBCC、日本ビジネスシステムズ、日商エレクトロニクスの3社が参加する。

 ゲスト出席したJBCC ソリューション事業PFS事業部 事業部長 理事の大島貴幸氏は、中堅中小企業を中心とする同社顧客のクラウドに対する期待は「TCOの最適化」と「運用管理負荷の低減」であり、実際にアセスメントを行うと「レガシーアプリケーションへの影響度」や「ソフトウェアパッケージのクラウド対応状況」が課題になると説明する。Azure Stack HCIはこうした課題を解決可能であり、なおかつ「他のHCIソリューションに比べてコストでは50%減、スループットでは8~10倍、可用性ではクラスタリング機能を提供できる。スループットを求めるワークロードではAzure Stack HCIが圧倒的」だと評価した。

 また、Azure Stackを活用しているKPMG Ignition Tokyo クラウド担当ディレクターのアラム・ラウクステルマン氏は、「KPMGでは、モダンクラウドネイティブプラットフォームの『Cloud Next』を提供している。顧客の要望はさまざまであり、それらに応えたいと考えている。Azure Arcを利用することで、ハイブリッドクラウド環境を実現し、オンプレミスにも、エッジネットワーク上のインスタンスにも接続できるようになる。Azure Stack HCIによって、より多様性のあるラインアップが揃うことを喜んでいる」と述べた。

「Azure Stackは日本の市場にマッチした選択肢」

 同社2021年度(2020年7月~2021年6月期)のMicrosoft Azure事業戦略では、既存アプリケーションの「クラウドへの移行」、クラウドネイティブなアプリ開発や既存アプリのモダナイズを支援する「アプリの変革」、クラウド導入プロセス標準化やCCoE(クラウドセンターオブエクセレンス)文化醸成を加速する「クラウド導入活用支援」の3点が掲げられている。今回の取り組みは、「クラウドへの移行」を促すハイブリッドクラウドソリューションの提案に位置づけられるものだ。

 MM総研の調査によると、既存オンプレミス環境の更新方針では「オンプレミスとクラウドを(ハイブリッドで)活用する」と答えた企業が45.2%、また「オンプレミスのままとする」企業も30.7%だった一方で、「完全クラウドに移行する」とした企業は10.4%に留まっている。

 また、日本市場では70万台以上の仮想化サーバー(仮想化ホスト)が稼働しており、今後も増加する傾向にある。2021年以降に更新される仮想化サーバーは、年間8~14万台の規模に達する見込みだという。これらのことから、日本マイクロソフト 業務執行役員 Azureビジネス本部 本部長の上原正太郎氏は、「マイグレーションシナリオにおいて、ハイブリッドクラウドソリューションは重要な要素になる」と語った。

既存オンプレミスの更新方針として「ハイブリッドクラウド化」が4割、「オンプレミスのまま」が3割である一方、「完全クラウド移行」は1割にとどまった

 「Azure Stackによって、ハイブリッドクラウドにおけるアプリケーションのイノベーションを促進することができる。Azure Stackは日本の市場にマッチした選択肢だといえる。OEMメーカーの豊富なラインアップと導入支援ノウハウを持つエコシステムパーナトーにより、かゆいところに手が届くソリューションを提供できる」(上原氏)

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