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3月打ち上げの衛星4基が完成、国産コンステレーション「AxelGlobe」

地上分解能2.5M、アクセルスペースが生み出す衛星データの可能性

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 超小型衛星の開発・製造・運用ビジネスを行っているアクセルスペースは、現在衛星1基で運営されているコンステレーション「AxelGlobe」に追加する衛星4基の量産製造を完了している。製造された衛星はカザフスタン共和国の宇宙基地から2021年3月20日に打ち上げられる予定だ。

 2020年11月に開催された記者発表会では、アクセルスペースが推進している超小型衛星を用いた宇宙ビジネスの現状、並びに超小型衛星の量産体制について報告がなされた。さらに、日本の宇宙ビジネスをリードする東京大学大学院 工学系研究科航空宇宙工学専攻 教授 中須賀真一氏、NASA アジア担当代表 ガーヴィー マッキントッシュ氏、JAXA 新事業促進部長 岩本 裕之氏、経済産業省 製造産業局 宇宙産業室 室長補佐 伊奈康二氏とアクセルスペース 代表取締役 CEO 中村 友哉氏によって、日本のコンステレーションビジネスを取り巻く環境、ならびに宇宙ビジネスにおける政府と民間の連携に関するパネルディスカッションが行われた。

衛星コンステレーション「AxelGlobe」を開発するアクセルスペース

「AxelGlobe」が生み出す新サービス

 アクセルスペース 代表取締役 CEO 中村 友哉氏は、量産製造に成功した4基の超小型衛星について以下のように説明した。

 3月打ち上げ予定の4基の衛星のほかに、すでに5基の衛星打ち上げの実績があり、日本の宇宙ベンチャーの中でも豊富な実績を持っている企業と言えよう。例えば、2013年と2017年にウエザーニューズ社の人工衛星を打ち上げており、これらの衛星は北極海における航路支援サービス(ナビゲーションサービス)に利用されている。

2013年と2017年に打ち上げたウエザーニューズ社の人工衛星は北極海の航路支援サービスに活用されている

 今回4基の量産製造に成功した衛星は、2018年に打ち上げた「GRUS-1A」に続くもので、現在1基で運営されているコンステレーション「AxelGlobe」を5基体制に引き上げるものとなる。これにより、現在は1カ所につき2週間に1回の観察頻度となっていたものが、2日に1回程度となり、より多様な事業ドメインに宇宙データの利用が適用可能となる。

 この衛星の地上分解能は2.5メートルで、例えば宇宙から撮影した画像から羽田空港の滑走路に描かれている数字が判別できたり、スエズ運河を航行している船舶に搭載されているコンテナの数を把握することができる。

「AxelGlobe」の地上分解能は2.5メートル

 米国などで打ち上げられているコンステレーションの画像データに比べて画質が圧倒的に良いため、河川や農地のモニタリングを行って最適な収穫時期の推定をしたり、海上における物体や赤潮の検出など、単なる画像データの販売ではなく、付加価値を加えたサービスの提供を行っている。

 「我々の画像は解析の仕方によっていろいろな用途が生まれてくる。これまで使ったことのない人にも新たなビジネスを作っていく。日々の事業開発の活動の中でもそういうことを考えている。」(中村氏)

アクセルスペース 代表取締役 CEO 中村 友哉氏

「AxelGlobe」衛星の量産体制

 続いてアクセルスペースCTOの宮下 直己氏から、今回の超小型衛星4基の量産製造に関する発表が行われた。

 従来は設計から開発・テストまですべてを行っていたが、今回は製造を担当する専用チーム「ディジタル製造推進グループ(DMAG)」を新設した。現在はまだ手作業による製造が多いが、将来的にはAIに代表されるディジタル技術を用いて、ディジタル量産という分野で世界に挑戦していきたいとしている。

 今回製造した4基というと(自動車の製造などと比べると)数が少ないが、同型機の衛星の複数製造は日本初であり、非常にチャレンジングな取り組みであった。例えばコンステレーションを構成するためにはすべての衛星が同じ挙動をする必要があるが、4基のうち1基が他と異なる挙動をするといった現象が発生した。そのため1基1基の部品の品質管理の徹底の必要性を痛感したと宮下氏は語った。

 「衛星コンステレーションはこの10年で一気に拡がっていく。我々も自社の衛星の量産だけでなく、世界中のお客さんの衛星をどんどん作っていくという本格的な量産体制の構築を、DMAGを中心に進めていく。」(宮下氏)

アクセルスペース 取締役 CTO 宮下 直己氏

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