ドナルド前大統領は4年の任期中、ファーウェイをはじめとする中国企業に対して厳しい姿勢を取ったのはよく知られているとおり。その最後のターゲットとなったのがシャオミだ。任期が満了する5日前、トランプ政権はシャオミを「Communist Chinese military companies(中国共産党軍事企業)」というリストに加えたのだ。
シャオミも加わったリストとは一体なに?
1月14日、米国防総省は米国で直接・間接的に運営されているCommunist Chinese military(中国共産党軍事企業)として、シャオミなど8社の中国企業をリストに加えたことを発表した(https://www.defense.gov/Newsroom/Releases/Release/Article/2472464/dod-releases-list-of-additional-companies-in-accordance-with-section-1237-of-fy/)。シャオミのほかには、航空機製造のCommercial Aircraft Corporation of China(COMAC、中国商用飛機)、半導体製造装置メーカーのAdvanced Micro-Fabrication Equipment(AMEC)などが入っている。
このリストは、米政府が1999年に修正した国防権限法(NDAA)の1237条のもとで2020年6月に最初に公開されたもので、中国が進める軍事・市民融合開発戦略への”カウンター”としている。企業、大学、研究プログラムなどが開発したり獲得した専門知識や高度技術に、中国人民解放軍がアクセスすることで近代化の目標を達成しようとしていると米国側は見ているのだ。
一方のシャオミは翌15日に、「パートナーとMiファンへ」としてコメントを発表した。そのなかでシャオミは、「中国軍に所有されていないし、管理されていないし、関連していない。また、米国がNDAAで定義するような“中国共産党軍事企業”でもない」と強調。「自社がビジネスを展開する地域の法に準拠しており、関連する法規制に準拠して運営している」とした上で、「製品とサービスは市民と商用向けとして提供している」と記している(https://blog.mi.com/en/2021/01/15/clarification-announcement/)。
取引が禁止されるファーウェイとはまだ状況が異なる
シャオミと米政府との関係は、同じ中国企業のファーウェイと米政府との関係とは、現時点ではまだ異なる。
まず、ファーウェイは米商務省が定める「エンティティリスト」に入っているが、シャオミのリストは米国防総省の「中国共産党軍事企業」(「Qualifying Entities Prepared in Response to Section 1237 of the National Defense Authorization Act for Fiscal year 1999」)である点(ちなみにファーウェイは2020年6月公開分で、このリストにもすでに入っている)。
エンティティリストは米国輸出管理規制に基づき取引が禁止されるのに対し、シャオミが入るリストではその状況にはなっていない。
では、リストに入ったことで、シャオミにどのような変化が起こるのか? トランプ氏は「中国共産党軍事企業」としてリストされる企業への投資を禁じる大統領令を出している。つまり、シャオミは米国の企業や投資家から資金の調達ができなくなるということを意味する。
シャオミは現在は香港証券取引所に上場しており、米国の証券取引所には上場していない。だが、BlackRock、Fidelity、Vanguardなどの米系ファンドが同社の株を取得しているという(https://www.ft.com/content/8807f7dd-bf76-400c-9bbf-9f713ce5ba57)。
皮肉なことに、2017年11月にトランプ氏がアジア各国周遊の一環として中国に訪問した際、米商務省は複数の大企業の代表者とともに中国と米国の貿易不均衡を是正する目的で商談をしている。これに参加した1社であるクアルコムはシャオミ(とOPPO、vivo)と半導体について法的拘束力のない覚書を交わしている。詳細を見ると「今後3年間で120億ドル相当となる半導体の購入」とあり、「証人としてトランプ大統領と習近平主席」と入っている(https://www.commerce.gov/sites/default/files/department_of_commerce_u.s._-_china_business_exchange_ceo_delegation_companies_signings_and_additional_company_signings.pdf)。

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