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高齢者にとってはLINEよりZoomのほうが簡単!?

スマートシティ化に不可欠な「住民の合意形成」を実現するには?

文●石井英男 編集●ASCII

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今回は東京大学 小泉秀樹教授(中央)、イノラボ所長 森田浩史氏(左)、同シニアプロデューサー 野崎和久氏(右)によるディスカッションの模様をお届けする

Webプラットフォーム上でいかに議論するか?

 スマートシティとは、IoTをはじめとするICT技術をエネルギーや生活インフラの管理に用いることで生活の質・都市運用・サービス効率を向上させようというもの。また日本ではSociety 5.0の社会実装の場としても注目が集まっている。

 今まさに世界各地で実装が始まっており、日本においても内閣府・総務省・経済産業省・国土交通省が「スマートシティ官民連携プラットフォーム」を設立、すでに113もの地方自治体が加盟中(2019年現在)。

 街のスマートシティ化は良いことづくめのように感じるが、進める上で住民の同意は必須であり、特に重要視されているのがシティエンゲージメントだ。これは、住民の街に対する愛着心・帰属意識・思い入れの強さ、加えて街(自治体)と住民が相互を信頼し、住み良い街づくりに向けて成長しあう関係性のこと。

 そしてそのために必要となるのが、住民の議論と合意形成の場である。

 今回のテーマは、その「住民の議論と合意形成の場」をICTによって実現しようという試みとその課題・解決策などについて、スマートシティとシティエンゲージメント研究・実践の第一人者である東京大学 先端科学技術研究センター 共創まちづくり分野の小泉秀樹教授、そしてスマートシティの実証実験を行なっている株式会社 電通国際情報サービス(ISID) オープンイノベーションラボ所長の森田浩史氏、同シニアプロデューサー 野崎和久氏のお三方によるディスカッションの模様をお届けする。

※今回の取材はオンライン上で行なった。

スーパーシティ実現には住民の参加や
未来像の実現に向けた合意が必要

森田 スマートシティに関しては2011年のイノラボ設立以来、注力テーマとして取り組んでおります。また、都市OSや合意形成基盤など実現の仕組みについて技術的な観点でリードしているディレクターの野崎も同席しています。

野崎 ISIDの野崎です。よろしくお願いいたします。

森田 スマートシティに関しては何回目かの波が来ている状況で、現在論点として挙がっているのはスーパーシティ実現に向けた住民合意形成です。

 これはスマートシティをさらに進化させたものです。〈移動、物流、支払い、行政、医療介護、教育、エネルギー・水、環境・ゴミ、防災・防犯安全〉のうち5つ以上の領域で2030年にデジタル化・スマート化を完全実施した都市を指す、というのが元々の定義でしたが、2020年に「住民の参加や未来像の実現に向けた合意」が追加されました。

内閣府『「スーパーシティ」構想について』より

森田 これが追加された経緯としては、カナダのトロントでGoogleのラボ組織「Sidewalk Lab」が進めていたスマートシティの取り組みが、住民の参画や未来像の実現への合意が取り付けられず中止になってしまったことにあります。

 日本政府もその事実を深く受け止めていて、今後日本が進めるスマートシティに関しては、まず住民の合意を前提として進めなければいけないと。

 うまく乗り越えた事例として、住民と一緒にまちづくりをしているスペインのバルセロナが挙げられます。そこで使われている仕組みが「Decidim」という、参加型Webプラットフォームです。みんなが参加して、まちづくりに関してディスカッションするもので、市長の肝入りで2015年から運営されています。

 すでにバルセロナでは、このDecidimでディスカッションされたものに予算を付けて実装していくサイクルが出来上がっています。これが非常に良い事例だということで、我々はDecidimを日本語化して積極的に使っていこうと考えています。すでにいくつかの自治体さんとも話を進めている状況です。

 今日は第一人者である小泉先生と、日本で進める上で何が課題となり、その課題をどう乗り越えていけばいいのか、ディスカッションさせていただきたいと思っています。

スマートシティ化へのカギを握る
今注目のプラットフォーム「Decidim」とは?

 住民の意見を収集し、政策へ活かすために作られたWebプラットフォーム。バルセロナをはじめとするスマートシティ先進都市にて利用されている。イノラボの発表によると、「バルセロナでは、2015年からの4年間で4万人以上がDecidimから政治参加し、都市に暮らす人々の生活に直結する議題などに対し、1万を超える提案から約1500のプランが採択されて」いるという。

イノラボではこのDecidimを活用したまちづくりを推し進めている。現在は横浜都心臨海部にて実証実験中

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