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冬の危険な高血糖にどう対応すべきか、専門医に聞く「トリプルリスク対策」 高血圧、高糖質、脂質異常症の「トリプルリスク」対策を専門医に聞く(2)

2021年01月15日 06時00分更新

文● 高橋 誠(ダイヤモンド・オンライン

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血糖コントロールは、日ごろの食生活の積み重ねである(写真はイメージです) Photo:PIXTA

血糖コントロールを映し出す鏡「HbA1c」(ヘモグロビンエーワンシー)」は、過去1~2カ月間の平均血糖値を示す。血圧・血糖・血中脂質の数値悪化は相互に関連し、いわゆるトリプルリスクと呼ばれる。この冬、命に関わる深刻なトリプリリスク回避のための「高血糖対策」を、国際医療福祉大学医学部 坂本昌也教授に聞いた。(医療・健康コミュニケーター 高橋 誠)

健診直前の付け焼き刃ではない
サステナブルな生活習慣と検査を

 国際医療福祉大学医学部 坂本昌也教授(同大大学三田病院内科部長、糖尿病・代謝・内分泌内科学教授)は、「この冬にHbA1cが8.0%を確実に切るように」と外来患者に伝えている。

「明日は、人間ドックだから」といって、飲食を控える。ありがちな習慣だ。健康診断直前に食生活を改めて空腹時血糖値を基準値以内に収める、こんな付け焼き刃の対処では改善できないのがHbA1c。 過去1~2カ月間の血糖コントロールの結果だからだ。継続的に食生活を改めなければ、HbA1cは下がらない。しかも、血圧・血糖・血中脂質の数値悪化は相互に関連する。だから、坂本医師は長期的な見地から薬や食事、運動を患者に指導する。

 血圧・血糖・LDLコレステロール・中性脂肪の数値を含め、間を空けない、定期的な検査は自身の命を守る。特に50代のうちに、ぜひとも検査を受けてほしいのが、腎臓、心臓、血管の動脈硬化度。腎臓は相当悪くならないと自覚症状がなく、タチが悪い。自分の「異常なし」の感覚を信用してはいけない。採血でクレアチンあるいは、eGFR、尿タンパク/アルブミンをチェックすれば、腎臓の動脈硬化度は比較的簡単に確認できる。

 喫煙習慣がある人は、心機能の検査は必須。50代で検査をし、タバコをやめる、食生活を変えるなどすれば、80代まで元気でいられる率は高まる。

 坂本医師は、近著『最強の医師団が教える長生きできる方法』(アスコム)で「日本人に糖尿病が増えたのは、たくさん糖質をとるようになったからではない。食の欧米化と運動不足が原因」と指摘している。ここでは、坂本医師が患者に直伝する、実践的な高血糖対策を公開する。

トリプルリスク回避のための
高血糖対策

◎ゆっくりと味わって食べる習慣を

「野菜から食べる、いわゆるベジファースト」が良いと言われる。しかし、食べる順番を実践できない状況もある。そこで、バランスの取れた内容のものを「味わって食べる」習慣を身に付ける方がよい。そのほうが確実に糖尿病対策に役立つ。血糖値の上昇・下降の幅を極力小さくすることは糖尿病対策の重要なポイントである。

 早く食べるから糖尿病になるわけではない。しかし、「サッと食べる」習慣を変えられないでいると、血管へのダメージは大きくなる。空腹を満たすために食べるのではなく、味わって、(コロナ禍では難しいが)できれば人とおしゃべりしながら、ゆっくりと食べた方が、血糖値スパイク(食後1~2時間程度の血糖値の急上昇。隠れ糖尿病ともいわれる)が起こりにくくなる。

 サッと食べてしまうものの代表格が麺類。あまり噛まずに食べてしまえるのでインスリンの分泌が追いつかず、血糖値スパイクが起こりやすい。加えて、スープを飲むと塩分摂取量が多いのも問題。栄養バランスの悪さや塩分量の多さなどが問題視されるファストフードも、サッと食べられてしまう。一口ごとに味わって食べている人はあまり見かけない。「急いで食べる」「意識はスマホの画面に集中して味には無頓着」といった印象だ。

◎シンプルラーメンにはキャベツやキクラゲを

 麺類よりも、品数が多く、食べるのに時間がかかる定食を選ぶ。もし麺類を食べるなら、少しでも食べるスピードを遅らせたい。麺とスープだけより、プラスアルファがあるものがいい。生キャベツやキクラゲ、小松菜などの野菜がたっぷりのっているようなラーメンを選ぶ。

◎エナジーバーは非常事態の選択肢

 効率よく各種の栄養成分を摂取でき、「GI値が低い(=糖の吸収を抑えられる)」「カロリーが低い」などのうたい文句があるエナジーバー。愛用している人もいる。食事をきちんととる時間がない時に活用するには便利だ。しかし、食事の選択肢の一つに常に入るのはお勧めできない。エナジーバーの食事で栄養成分をとれているからと、反動でジャンクなものを食べてしまうことになりかねない。

 食事は毎日、寿命が尽きるまで続くもの。バランスのいい食事を味わって食べる習慣を少しだけでも実践してほしい。これが、無理なく、ストレスなく、生活習慣病対策を続けられる方法だ。

ドカ食い防止と
血糖値コントロールの重要性

◎血糖値測定アプリの活用を

 糖尿病は脂質異常症、高血圧症を併発しやすい。これらの疾患のチェックがまだの人は、今のうちに検査を受け、数値によっては脂質異常症、高血圧の薬物治療も取り入れる。さらに、血糖値の定期的な確認も重要。皮膚に貼ったセンサーにリーダーを近づけるだけで血糖値を測定できる機器もある。測定した血糖値や血圧、体重、歩数、食事などの生活記録を一括管理できる無料アプリもある。コロナで活動量が減り、血糖コントロールが思っている以上に悪くなっているかもしれない。定期的に確認し、特に血糖値の上と下の幅が大きい時は、食事内容を見直す。

◎間食をうまく取り入れる

 サラリーマンはどうしても朝食をサッと済ませざるを得ない。昼食時は空腹でつい「ご飯大盛り」を頼みたくなってしまう。夕食も、消化の良いメニューを少量食べる程度にしたい。例えば、午前と夕方の2回、カカオの含有率が高いチョコレートやナッツ類、ヨーグルトやチーズなどを少量食べる。すると空腹による食べ過ぎを抑えられる。また、血糖値の急上昇を回避でき、吸収を抑えられるので一石二鳥。空腹時間が長く続いた後に食事をすると、血糖値が急上昇し、急降下する。これが血管にダメージを与える。血糖値の変動はあまり大きくしないように気をつけたい。

◎バランスよくタンパク質をとる

 朝はご飯、味噌汁、漬物、昼はうどん・そばやご飯と簡単なおかずでは、タンパク質がほとんど摂取できていない。朝・昼の食事に納豆や豆腐、卵を加える。味噌汁に豆乳や牛乳を加えるのもいい。うどん・そばを食べるなら、鶏肉や卵、野菜類を加える。

 サバ缶やイワシ缶の水煮を常備しておき、味噌汁やうどんにこれらの缶詰や豆腐を入れる。サバ缶、イワシ缶は塩分不使用のものにすれば、さらに望ましい。

 卵や肉類でタンパク質摂取量を増やすと、脂質やコレステロール量の摂取も増えるので、できれば大豆・大豆加工食品を積極的にとり、腎臓機能が低下していなければ、タンパク質摂取量を増やしたい。

◎危険な、甘いものを誘う食材

 緑茶は糖分や塩分が入っている飲み物ではない。普段から好きでよく飲んでいるなら、常識の範囲内の飲み方で問題ない。砂糖入り缶コーヒーや缶紅茶、ジュースなどを日常的に飲んでいた人が、それらの代わりに緑茶にしたのなら、ぜひその習慣を続けてほしい。

 ところが、「糖尿病にいいから」と緑茶を飲み始める人は、過剰な飲み方に陥りがち。1日7杯も8杯も、寝る前にも緑茶。緑茶は水分であり、緑茶に含まれるカフェインには利尿作用や覚醒作用、胃液分泌促進作用などがある。睡眠やトイレの回数、胃腸に影響を与える。場合によってはかえって心臓に負担がかかってしまう。

「緑茶を飲むと、つい欲しくなって」と緑茶と一緒に和菓子を食べている人も。糖分取り過ぎにつながりかねず、糖尿病がかえって悪化するリスクがある。ヨーグルトは体にいいが、ジャムや蜂蜜をかけて食べるためカロリー摂取量が増え、血糖コントロールがうまくいかなくなるケースもある。

自己判断で薬を減らさない
大切なのは日ごろの食生活

◎薬は主治医の判断に従う

最強の医師団が教える 長生きできる方法『最強の医師団が教える 長生きできる方法』(アスコム刊)、筆頭著者、国際医療福祉大学坂本昌也教授ほか総勢10人のドクターが、長生きの秘訣を「食事」「運動」「睡眠」「生活習慣」「治療法」に分類し63項目紹介している。216ページ。

 処方された薬は自己判断で服薬量を減らしたり、飲むのをやめたりしてはいけない。規定通りに服用すること。コロナの影響で病院に行きづらくなる状況を考慮し主治医と相談の上、可能であれば予備の薬を十分に手元に置いておくのもいい。

 新型コロナウイルス、インフルエンザウイルスは、ともに気温が低くなれば、より感染・発症率が高くなる。この冬、流行の続くコロナ、インフルエンザ予防のために、血糖コントロールを良くし、感染しても発症しない、たとえ発症しても重症化しないようにしたい。血糖コントロールは一朝一夕では改善されない。千里の道も一歩から。日ごろの食生活の積み重ねである。

 病気予防に役立つことが研究で明らかになっている食品はたくさんある。それらの有効成分に、もし薬と同等の作用があるなら、抽出し、薬とするための研究が行われる。例えば、イワシやサバなどの青背の魚に豊富な必須脂肪酸EPAは、高脂血症を予防し、動脈硬化・心筋梗塞・脳梗塞対策につながる。世界中の医学者に研究され続けてきた結果、現在は医薬品やサプリメントとして登場している。「○○○が病気予防にいい」という情報は、頭の片隅に軽くとどめておく程度にしよう。

(監修/国際医療福祉大学医学部教授、国際医療福祉大学三田病院内科部長 坂本昌也)

*トリプルリスク対策は4回のシリーズでお届けします。第3回は「運動法」、第4回は「睡眠法」「認知症対策」の予定です。

◎坂本昌也(さかもと・まさや)
国際医療福祉大学医学部教授。同大三田病院内科部長、連携部長、糖尿病・代謝・内分泌内科学教授。専門は糖尿病治療と心血管内分泌学。1970年、東京都港区生まれ。東京慈恵会医科大学卒。東京大学、千葉大学で心臓の研究を経て、現在では糖尿病患者の予防医学の観点から臨床・基礎研究を続ける。日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本内分泌学会の専門医・指導医・評議員を務める。高血圧、高糖質、脂質異常症のトリプルリスク対策、総合診療能力に長け、高い患者支持率を誇る。2019年2月、米国糖尿病学会機関誌に、「糖尿病は冬に悪化する」という感覚的事実を、世界で初めてエビデンスとして発表した。「高齢者は血管のダメージに注意」「若い人は食事の意識を高めよう」と広く啓蒙している。日刊ゲンダイ人気コラム「進化する糖尿病治療法」を連載中。

※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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