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干支で占う2021年、60年前になぞらえる新旧勢力の攻防とは

2021年01月06日 06時00分更新

文● 末澤豪謙(ダイヤモンド・オンライン

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上海のチャージング・ブル Photo:PIXTA

「辛丑」の2021年
変化の潮流はどうなる

 2021(令和3)年の干支は「辛丑(かのと・うし、シン・チュウ)」だ。

 その意味するところから2021年を考えると、2020年に生じた変化、新勢力が表舞台に立つものの周囲の抵抗も大きく伸び切れないという年になる。

 昨年は菅政権が戦後最長の安倍政権に代わって発足し、米国ではバイデン前副大統領が大統領選で接戦の末、トランプ大統領を破り民主党政権への交代を決めた。

 新型コロナウイルスのパンデミックで世界中が混乱するなかで、いち早くコロナから経済を回復させた中国が世界の次の覇権を握る国として存在感を一段と強めた年だった。

 干支で占うと、21年はこうした新たな勢力の台頭や変化に対する抵抗や障害が大きいということにもなるが、どうだろうか。

新勢力が表舞台に立つが
伸び切れない可能性

「辛丑」は干支の組み合わせの38番目だ。

「辛」は十干の8番目の干で、「鋭い刃物」の象形とされる。甲骨文(殷代の文字)では、「辛」の古い字体は、把手のある大きな針の形をしており、殷の時代に奴隷や罪人に入れ墨をする道具に用いられたとされる。

 刃物で刺すような痛みから「からみ」や「つらい」「きびしい」などの意味があり、また、「新」に通じる。

「辛」は、「上」を「干す(おかす)」意味があり、「現状打破」、「革新」の意味があるともされる。草木が枯死して. 新しい世代が生まれようとする状態を表す。

「丑」は十二支の2番目で、「右手を挙げた形ないし曲がった腕を真っすぐに伸ばす」象形との説がある。

「丑」は「紐」(ひも)で、「曲がる」「ねじる」「からむ」「はじめ」の意味があり、前年の「子」年に種子の中に生じた芽が出かかっているが、十分に伸び切らず、表面に出ていない状態を表す。

 干支的に解説すると、「辛」と「丑」を合わせた「辛丑」には、新勢力が表舞台に立つが、周囲の抵抗も大きく伸び切れない可能性を表すということになる。

 つまり、2016年の「丙申(ひのえ・さる)」に勢力を拡大した経済や政治権力が、2017年の「丁酉(ひのと・とり)」に一段と勢いを増すが、2018年の「戊戌(つちのえ・いぬ)」にはその極致に達し、2019年の「己亥(つちのと・い)」にはピークアウト。2020年の「庚子(かのえ・ね)」には新たな変化、潮流が生まれるという流れのもとで、21年は前年の新たな変化が大きくは動かないということになる。

前回は1961年だった
所得倍増計画で「高成長」に踏み出す

 前回60年前の「辛丑」だった1961(昭和36)年は、国内では前年の12月に池田勇人首相が国民所得倍増計画を打ち出し、10月にリリースされた坂本九さんの『上を向いて歩こう』がその後、内外で大ヒットした。

 国民皆年金制度が確立し、1958年制定の国民健康保険法による国民皆保険制度と併せて日本の社会保障制度の基盤が作られるとともに、資本および貿易の自由化もスタートし海外との経済の枠組みも整備された年といえる。

 岩戸景気(1958年7月~1961年12月)の成熟期だったが、こうした制度の整備が経済成長をさらに支えることになった。

 一方、海外では、1月に米国でジョン・F・ケネディ氏が40代の若さで大統領に就任、8月には東ドイツがベルリン市内に壁を建設、西ドイツとの交通を遮断した、いわゆる「ベルリンの壁」が一夜で造られた。

 第2次世界大戦後、資本主義諸国と社会主義諸国との対立が激化、英国のチャーチル元首相が「鉄のカーテン」と表現した世界の分断が、壁の建設で決定的になり、米ソの冷戦体制が確立、恒常化した年だった。

 大戦の敗戦国だった日本は、安全保障面では西側諸国のリーダーである米国の「核の傘」の下、戦前と異なり軽武装経済優先の国作りのもとで、米英などの戦勝国に経済面で「追いつけ、追い越せ」と高度成長を邁進することになった。

 つまりは、60年前の「辛丑」の年は、日本が世界経済の新勢力として表舞台に立つ一歩を踏み出した年でもあった。

 ただし高度成長は、その後、1970年以降の2度のオイルショック(石油危機)で安定成長軌道に変更を余儀なくされた。

 さらに日本は1995年をピークに生産年齢人口が減り始め、総人口も2008年から2010年頃にピークになって少子高齢社会に完全に突入した。

米中「二強時代」へ変化
安保や経済で間合いをどうとる

 1961年から60年後の「辛丑」の年になる2021年はどうか。

 前述したように「庚子」の2020年に起きた新たな変化は、米国ではトランプ政権後のバイデン政権の誕生、国内では安倍政権の終焉の後の菅政権の発足を意味するようにも思われる。

 そしてよりグローバルに見れば、戦後の冷戦体制が1989年のベルリンの壁の崩壊、1991年のソビエト連邦の解体により終焉後、米国一強時代が続いていたのが、2020年からは米国と中国の二強時代、つまり米中の覇権争いが本格化する変化が起きたと捉えられる。

 米中「新冷戦」時代への変化の下で、安全保障では米国に依存する一方で地政学的には中国に隣接する日本が、21年を皮切りに両国との間合いをどのようにとるのかは、今後、数十年間の日本の安全保障や経済成長のうえで大きな課題となる。

 アメリカ・ファースト(米国第一主義)を掲げたトランプ氏に対し、バイデン新大統領はトランプ時代に深まった米国社会の分断や格差拡大からの「Build Back Better(より良い再建)」を掲げ、経済政策では「バイアメリカン」と「クリーンエナジー」を柱とすることを掲げている。

 外交面では、パリ協定への復帰など、同盟国や国際機関との関係修復に努める構えを見せている。

 だがオバマ政権の1期目やトランプ政権の発足時と比べ、議会での基盤は弱い。

 1月5日のジョージア州の連邦議会上院選挙の二つの決選投票(クラス2およびクラス3)で2勝し、ホワイトハウス、下院と併せて上院でも民主党が主導権を持つ「トリプルブルー」を実現できるかどうかが、新政権のスタートにとって極めて重要だ。

 その結果次第では、大統領選で掲げた公約実施や米国の「より良い再建」が十分にできない可能性もある。

 また新型コロナウイルス感染症対策に手こずり、経済再建に時間がかかり、4年後にホワイトハウスを共和党に奪還されることになれば、19世紀の「モンロー主義」のように、米国は一段と内向き志向となり、国際的には不関与政策を強める可能性も否定できない。

 そうなれば日本の外交や安全保障へも影響も大きい。

株式市場はつまずく年に?
新型コロナの感染動向が鍵

 株式市場はどうか。

 株式相場に関する格言では、「辰巳天井、午尻下がり、未辛抱、申酉騒ぐ、戌笑い、亥固まる、子は繁栄、丑つまずき、寅千里を走り、卯跳ねる」とされている。

「子」の年の2020年は、新型コロナ・パンデミックの影響で、3月に内外ともに株価は暴落したが、空前の規模の世界的な金融緩和と財政出動で反発。年末に向けて米国株価は過去最高値を更新、日経平均株価も12月29日には、バブル期の1990年8月以来30年4カ月ぶりの高値となり、1年を終えると、「子は繁栄」の格言通りとなった。

 十二支ごとの日経平均の騰落率を見ると、21年と同じ「丑年」は▲0.05%と「午年」の▲5.04%に次ぐ低いパフォーマンスを示している。

 2021年は、ワクチンの普及や効果の動向を含め新型コロナウイルス・パンデミックとの戦いが当面の最重要課題となるとともに、近年同様、内外で政治と金融市場や経済のリンケージが強まる可能性が高い。

 特に株式市場に影響を与えるものとして、バイデン新政権の政策動向、日本では東京オリンピックと衆院選の行方に注目が集まることになる。

 菅首相は新型コロナの感染拡大防止と経済の回復を最優先課題に掲げているが、昨年秋以降の感染の再拡大は勢いが増すばかりで、難しいかじ取りを迫られている。

 気温や湿度、UV(紫外線)の低下に伴い新型コロナの半減期が長期化、つまり感染力が強まっていることもあり、重症者や死者は「春の感染第1波」を上回る。

 菅首相は昨年12月14日、年末から今年1月11日までの間、GoToトラベルキャンペーンの利用を全国で一斉停止すると急遽、発表したが、感染拡大は収まらず、1月4日の年頭会見で、首都圏の東京都と神奈川など3県で緊急事態宣言を今週内にも再発出する意向を表明した。

 まさに菅政権にとって「今冬は正念場」の状況だ。

1月の衆院解散はなしに
長期政権へ足場を固められるか

 1月中に召集される通常国会冒頭での衆院解散の可能性はほぼなくなった。7月頃に予定されている東京都議会選挙や夏場の東京オリンピック・パラリンピックの日程を考慮すると、10月21日の衆院議員の任期満了近くのタイミングでの解散・総選挙の可能性が強まっているといえそうだ。

 ただしオリンピック・パラリンピックが開催できるのかどうか、再延期や開催されても、観客を入れてできるのか、無観客で行われるのかも、今後の世界的な新型コロナの感染動向次第だ。

 菅首相にとっては感染拡大防止と経済回復の二兎を着実に追えるかどうかが長期政権への足場を固める鍵となりそうだ。

 バイデン氏と菅氏の共通点は、アルコールを飲まずスイーツが好きな甘党な点だが、アイスクリームを今夏においしく味わえるかは、両氏とも新型コロナをどこまで封じ込めることができるかにかかっている。しかも足元の情勢が甘くないことも同じだ。

(SMBC日興証券金融経済調査部金融財政アナリスト 末澤豪謙)

※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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