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ポイントを速習!「Azureの基礎(AZ900)」をみんなで学ぶ 第11回

コストに影響する要因を理解し、さまざまなコスト管理ツールを使いこなして“無駄遣い”を防ぐ

Azureの利用コストを管理、予測して支出を最適化する

2021年01月06日 08時00分更新

文● 大久保有基/FIXER 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 本連載「ポイントを速習!『Azureの基礎(AZ900)』をみんなで学ぶ」では、FIXERの若手エンジニアたちがマイクロソフトの「Azureの基礎(AZ900)」公式ラーニングパスに沿いつつ、Azureを使ううえで覚えておくべき基礎的かつ重要なポイントだけをわかりやすくまとめます。実際に手を動かして学ぶハンズオンのコーナーもありますので、皆さんもぜひ一緒に学んでいきましょう。
(※ 本連載はAZ900試験の受験対策を目的としたものではなく、出題範囲すべてを網羅するものではありません)

はじめに

 本連載「ポイントを速習!『Azureの基礎(AZ900)』をみんなで学ぶ」の第11回では、Microsoft Azureを利用した時に発生するコスト(利用料金)の考え方や、そのコストを正しく管理し、無駄なコストの発生を防ぐ方法について説明していきます。

 Azureのライセンス契約形態や請求の単位、またAzureが備えるさまざまなコスト管理ツールの概要を紹介したうえで、その後のハンズオンでは実際にツールを使って、これからAzureで構築するシステムの月額がどのくらいかかるのか、コスト予測を行う方法を学習します。

Azureを利用した時に発生するコストの考え方

 ほかの多くのクラウドサービスと同様に、Azureは基本的に、使った分だけを支払う「従量課金制」のクラウドサービスです。オンプレミス環境とは異なり初期導入費用はかかりませんし、毎月固定額を支払うサービスとも違って、無駄なリソースを使わなければ(使う量を最小限にすれば)その分コストを節約できます。

※注:Azureの「リソース」とは、仮想マシンやストレージ、仮想ネットワークなど、Azureが提供する各種サービスのことです。詳しくはこちらの記事もご覧ください。

 しかし裏を返せば、自分がどんなリソースをどの程度使っているのかを把握しておかないと、知らないうちに料金がかさむことにもなります。たとえば「テスト用に立ち上げた仮想マシンを起動しっぱなしで忘れていた」「ストレージに大容量データを置いたままにしていた」といった具合でリソースを“無駄遣い”してしまい、翌月の請求額を見てびっくり――そんな経験がある方もいるのではないでしょうか。

 Azureのコストがどのように発生するのか、正しく仕組みを理解して管理しておかないと、想定以上のコストがかかることにもなりかねません。複数ある購入形態の違いやコストに影響してくる要素、現状のコストの確認方法、将来的なコスト予測の方法まで、しっかりと理解しておきましょう!

Azureのさまざまな購入形態

 まずは、Azureを利用するうえで必要なライセンス契約(購入)形態を確認します。今回は3種類を紹介しますが、これらはそれぞれ購入条件や支払い方法が異なります。

  • 従量課金プラン
  • CSP契約(クラウドソリューションプロバイダー契約)
  • EA契約(エンタープライズ契約/Enterprise Agreement)

(※1)LSP=Licensing Solution Partner:マイクロソフトの認定パートナー (※2)MC=マネタリーコミットメント:あらかじめコミットした年間Azure利用枠

従量課金プラン
 ほかの2契約とは異なり、Webから直接申込みができる個人向けのプランです。従量課金契約なので、利用したAzureのリソース量が測定され、月単位で集計した料金を翌月、クレジットカード払いで支払う方法です(契約後、請求書払いに切り替えることもできます)。

CSP契約(クラウドソリューションプロバイダー契約)
 これも従量課金制プランですが、個人向けではなく1社1契約の企業向けプランです。マイクロソフトのCSPパートナーと契約し、CSPを介して購入する形となります。Azureの利用料金は翌月、請求書払いで支払います。

EA契約(エンタープライズ契約)
 CSP契約と同様に、基本は1社1契約の企業向けプランです。ただし従量課金制ではなく、あらかじめAzureの利用枠/利用額を決めて割引料金で購入できる仕組みであり、決めた金額以上はかかりません(その範囲を超える利用が発生した場合は超過料金が請求されます)。また契約期間は3年間で、支払いは毎月ではなく1年ごとに発生します。なおSCE契約(サーバーおよびクラウド加入契約)は、EA契約の下で提供されているライセンスであり、EA契約同様1社ごとに加入を行う必要があります。

コストに影響する要因

 従量課金制で「使った分だけコストがかかる」と言われても、具体的にどんな要因がコストに影響してくるのかを知らないと節約もできないですよね。そこでここでは、コストに影響を与えるいくつかの要素を見てみましょう。

リソース(サービス)の種類
 Azureでは200種類を超えるリソース(サービス)が提供されており、多くの場合は複数のリソースを組み合わせてシステムを構成することになります。利用料金はリソースごとに設定されていますから、システムのコストはそれぞれを合算したものになります。

 リソースの使用量を測定する際の項目、および測定する項目数は、リソースの種類によって異なります。たとえば仮想マシン(Azure VM)ならば仮想マシンのスペック(サイズ)や稼働時間など、またストレージ(Azure Blob)ならばスペックや保存したデータ容量、読み書き回数などを測定して、利用料金を算出する仕組みです。

仮想マシン(Azure VM)のスペック例。それぞれ異なる利用料金が設定されています

 なおAzureでは無料アカウントが用意されており、一定の範囲内であればリソースを無料で試用できます(詳しくは第1回記事を参照ください)。また仮想マシンやストレージ、データベースなどのリソースには、予想される利用量を事前予約することで割引料金が適用されるものもあります(各リソースの料金ページに詳細な説明があります)。継続的に利用するリソースであれば、予約しておけばお得に利用できるわけです。こうした仕組みを知らないまま利用して、余分な料金がかかることのないように注意しましょう。

リージョン
 データセンターを設置している個々のエリアを「リージョン」と呼びます。Azureのリソースは、それを提供するリージョンによっても異なる利用料金が適用されます。たとえば同一スペックの仮想マシンを同じ時間だけ稼働させたとしても、それが日本の東日本リージョンか米国中部リージョンかでは発生するコストが異なってきます。

 さらに、ネットワークコストもリージョンごとに設定が異なります。ということは、リソースの利用料金が最も安いリージョンを選択して、コストが削減できた! と思っていても、実はリージョン間やリージョン~インターネット間で生じる通信(データ送信)にコストがかかった結果、相殺されてしまうこともあるというわけです。

 なおAzureでは、同一価格帯に設定したリージョンを「ゾーン」と呼ぶグループで分類しています。現在、ゾーンは以下の4種類があり、日本の東日本リージョンや西日本リージョンは「ゾーン2」に属していることがわかります。

※ここで言う「ゾーン」は、Azureの「可用性ゾーン」(第4回参照)とは別のものです。

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