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アパホテル、コロナ禍でも「業界初」を連発する独創的経営の極意

2020年12月23日 06時00分更新

文● 元谷 拓(ダイヤモンド・オンライン

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Photo:Diamond

コロナ禍で経済的ダメージを受けているホテル業界。そんな状況で、常に斬新な企画を打ち出し、積極的に新しい取り組みにチャレンジしているのがアパホテルです。進化し続けるアパホテルが大切にしている理念とは――。そこで前回に続き今回も、アパホテル株式会社代表取締役専務でアパ社長カレーのプロデューサーでもある元谷拓氏の著書『アパ社長カレーの野望』(青春出版社)から、アパホテルの独創的経営戦略に迫ります。

進化し続けるアパホテルの独創的な経営戦略

 今回は、いよいよアパホテルの「独創的経営戦略」をご紹介していきましょう。アパホテルの何がいちばん独創的なのか。それは、「新都市型ホテル」というホテル概念を創造し、サービスとして提供した点です。

 新都市型ホテルとは、「ビジネスホテル」と「シティホテル」と「旅館やリゾートホテル」のいいとこどりをした、高品質・高機能・環境対応型にこだわったホテルです。この新都市型ホテルのコンセプトは、1984年に石川県金沢市でオープンした第一号ホテルから徹底しています。目指したのは、「宿泊に特化したコンパクトでビジネスマンが使いやすい、会員制を導入したホテル」です。

 メインの客層であるビジネスマンの要望に応えることを徹底し、その満足を追求して導き出したのが、新都市型ホテルの要素です。まず、部屋は歩き回らずにすべての用が足せる「コンパクトさ」が有効。ベッドは、安心して熟睡できるベッドを追求し、寝心地にこだわって独自に開発したアパオリジナル商品である「クラウドフィット」「エアーリラックス」というベッドと安眠枕を導入しました。

 また、個室での娯楽を重視し、最近ならミラーリングなど最新の機能を備えた大型液晶薄型テレビを設置、ベッドの上でくつろぎながら大画面での映画鑑賞やスポーツ中継を楽しめるようにしています。

 入浴については、一定以上の部屋数のあるホテルには、「手足を伸ばしてくつろげて、心身ともに疲れがとれる」と好評の大浴場、露天風呂を完備。また、部屋に備え付けの浴槽は、独自の設計で卵型のユニットバスを採用しています。これによりゆったり感を維持しつつも湯量を20%カット。そのほか、節水シャワーや全館LED電球で節電するなど環境面での配慮を徹底。その結果、アパホテルの客室での炭酸ガス排出量は、通常の都市ホテルの3分の1になりました。

 こうした「高品質」「高機能」「環境対応型」は、よい相互作用を生む例もたくさんあります。たとえば、歯ブラシなどの使い捨てのアメニティもハイグレードなものを採用しているため、持ち帰るお客様が続出、廃棄コストも削減され、エコにもつながりました。まさしく、「利は元にあり」。高級品を仕入れるので、値段はそれなりにかかりますが、それ以上のリターンがあるのです。

 さらに、お客様の「時間」を無駄にしないこともこだわった点です。会員制の導入によりチェックインの際の記帳が不要となり、さらには従来のホテルでは時間がかかっていたチェックアウトも、部屋のキーを入れるだけで完了する「フリーチェックアウトポスト」を設置。ルームカードキーを投函するだけなので待ち時間がゼロになり、現在のアプリでの予約や非接触型システムによるチェックインにもつながっています。

 高品質・高機能・環境対応型のコンセプトはそのまま、サービスは時代とともにどんどん進化し続けています。そうした新都市型ホテルのコンセプトを活用し、業績の低迷しているほかのホテルのアパホテルへのリブランド化による経営の健全化、いわゆるフランチャイズ展開も行っています。

 アパ社長カレーを生んだアパグループは、そんな独創的なサービスを創業から一貫して提供、つねに進化し続けている会社なのです。

全員が賛成するころには、チャンスは逃げている

 アパホテルが掲げる「新都市型ホテル」のサービスを一人でも多くの方に利用して満足していただくために、さまざまな戦略によって、現在の国内ナンバー1の地位を確固たるものにしました。

 独創的戦略には、前例にない「業界初」の試みがたくさんあり、そのたびに新しい満足が生まれています。たとえば、今では他のホテルでもよく見かけるようになった空っぽの冷蔵庫。これもアパが始めた業界初のサービスです。

 それまでのホテルや旅館の冷蔵庫といえば、買ってきたものを入れるスペースはなく、ビールやジュースなどのドリンク類がぎっしり詰まっていました。さらに夜中、静まり返った部屋に突如「ブーーーン」と音をかき鳴らす冷蔵庫。

 また、自動課金制の冷蔵庫なども登場して、缶や瓶をちょっと動かしただけで購入したことになり、精算時に市場の倍近い値段を請求された……という“怖い冷蔵庫”の話もよく聞きました。

 これを解消したのが、外で買ったものを冷やして保管できる空っぽの冷蔵庫です。さらに、CO2削減等に配慮して、利用するときにスイッチを入れる「入室時の冷蔵庫電源オフ」も取り入れました。これは、エコにつながるだけでなく、冷蔵庫の音が気になるお客様の「安眠できた」という満足にもつながったのです。

 数々の業界初をアパが連発できたのは、「前例がなくても、反対されても、正しいことはやる」というトップの覚悟があったからです。実は、アパが躍進する節目節目には、いつも周りからの反対がありました。

 役員や社員、取引先の人全員が賛成した頃では遅い。そう判断し、これまでいちばんいいタイミングでスピーディーに決断を下してきました。

「拙速は巧久に勝る」

 これが代表・元谷外志雄の信条。「ただし、結果は出さなければならない」という覚悟もセットです。

 会社のリスクと責任はトップがとるという毅然とした態度、そして、先見性による成長局面での判断と実績が社員の信頼に応え、アパの快進撃を支えてきました。このトップの姿勢は、「現状維持は衰退である」という社内の空気となり、現在のアパの成長発展につながっているのです。

アパホテルが「ピンチをチャンス」に変えられる理由

「逆境こそ光輝ある機会なり」は、代表の元谷外志雄の信条ですが、創業以来、本当にたくさんの逆境がありました。経済の大変動では、オイルショック、バブルの崩壊、リーマンショック、また東日本大震災などの自然災害や新型コロナウイルスのパンデミック、そのほか会社にふりかかったアレコレを加えれば、アパが乗り越えてきた逆境は数えきれません。

 しかし、いずれのときも、業績が大きく落ち込むことはなく、逆にそれを好機ととらえて成長のきっかけにしてきました。アパは逆境に強いタイプなのです。「ピンチはチャンス」は、よく耳にする言葉ですが、では、それができる人とそうでない人は、何が違うのでしょうか。

 その違いは、逆境から逃げずに真正面から向き合えるかどうかだと思っています。問題となっている事態から目をそらさず、「どうしたら事態を改善できるか」に焦点を当てることで、神経は研ぎ澄まされ、打開策となるアイディアが生まれるのです。

「新型コロナウイルスに負けるなキャンペーン」はその一つ。アパ直(アパホテル公式サイト・アパアプリ)から予約することで、シングル1泊1室2500円(税サ込)~の特別料金で宿泊できるというプランでした(2020年6月末まで実施)。

 リモートワークが増えたことで、「仕事部屋がない」、あるいは部屋があっても「家族がいてなかなか仕事に集中できない」といった人たちが利用できるように、また、通勤による感染リスクを少しでも減らすため、職場の近くで安価に泊まる場所を提供できれば、というアイディアです。

 都内だと、それまでは1泊1室の相場は1万円ほどですから大幅な割引です。結果、これまで主流だった30~50代の出張族ビジネスマンの利用だけでなく、20代の若い層の利用も増えました。

 コロナ禍でなかなか遠出ができないなか、近場でちょっとした息抜きをしたい、ホテルで旅行気分を味わいたいという方向け、というもう一つの狙いもヒットしたのです。ビジネス的にいえば、新たな顧客を開拓、リピーター獲得へとつながりました。

 もちろん新しい試みにはリスクがつきもの。この低価格キャンペーンは、収益を度外視した企画でした。体力のある企業でないと実現しづらいでしょう。自社の余力を見極め、目先の不利益を補って余りあるメリットがあると分析したうえで実行しているのです。

「正しく選択できる人にとって悪い時ほど良い時はない」というアパ的座右の銘があるのですが、まさにその実例となるケースです。逆境から逃げずに、そのときできる最善策を選び、覚悟をもって実行することで初めてピンチはチャンスになるのです。

※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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