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中朝国境封鎖の裏側、中朝「自作自演」の可能性も?

2020年12月17日 06時00分更新

文● 筑前サンミゲル(ダイヤモンド・オンライン

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コロナ前は検査待ちのトラックの列ができていた鴨緑江と丹東駅の中間に位置する丹東税関 Photo by San Miguel Chikuzen(以下同)

中朝国境をつなぐ橋が封鎖?
物流に影響

 11月上旬、中国北京にある北朝鮮の定期刊行物を取り扱う出先機関が各取引先へ、年内の出版物の発送はできない旨の通達を出した。

 北朝鮮の定期刊行物とは、『労働新聞』や『画報朝鮮』など日刊、月刊の紙媒体のことだ。日本でも研究者や報道機関等が研究、分析を目的に定期購読している。

 出先機関からの通達によると、4月以降の分を8月になんとか1度、北朝鮮から中国へ出荷させたが、それ以降は中国へ出荷することができず、新義州に留め置かれている。年内の出荷は非常に厳しい状態とのことだ。

 中朝国境の新義州と丹東は物流の大動脈である中朝友誼橋(旧鴨緑江第二橋梁・1943年竣工)で結ばれており、丹東だけで中国全体の中朝貿易の7割を占める。つまり、ここが通れないということになる。

中朝どちらが国境封鎖を強化しているのか?
双方の意見が食い違う

 また、毎年この季節になると話題となる北朝鮮のカレンダー。近年は特に「高麗航空」の美人CAカレンダーが注目の的になっている。この恒例のカレンダーは新聞などとは別ルートで出荷されるので、部数は例年より減るが中国へ入ってくる見通しとされていたが、11月末に出荷できないと連絡があったとのこと。

 9月末に中朝国境が2月以降では最大級に封鎖強化されたことが理由だと中国の輸入業者は話す。それにしても、なぜこのタイミングでさらに封鎖を強化する必要があるのか謎が多い。

『正論』12月号が、丹東の中朝友誼橋の定点観測情報として、コロナ前には週1000台から1500台のトラックの通過が確認されていたのが、今年4月には150台から200台に減り、9月には20、30台へとさらに減っていると報じる。加えて、9月20日に中国が丹東税関の封鎖強化へ踏み切ったとも伝えている。

 実は、この話と北朝鮮からの定期刊行物が丹東へ出せなくなったという時期には相関性がみられる。前出の貿易業者は、8月末に新義州で密貿易業者の一斉処刑など大々的な処罰が実施され、9月末には新義州税関も風紀が資本主義的との理由で全員入れ替えが行われたとの情報があると明かす。物流は止まっているが、新義州に慌ただしい動きがあることは事実のようだ。

 研究者や識者の中には、中国側が主導して国境封鎖を強化し北朝鮮からの貨物受け入れを拒否しているとの論調もみられるが、中国の関係者は逆の主張をしている。要するに北朝鮮側が国境封鎖や防疫を強化して貨物搬入を拒否していると。

北朝鮮の国境警備の実態
「防疫」のため中国国内からの帰国を拒否?

 9月に入ると丹東名物の遊覧船などから目視できる範囲の北朝鮮側に国境警備兵が増員され、1人しか入れない粗末な監視小屋を増やしている。マスクをした警備兵が、スマートフォンで撮影する中国側の観光客へ銃口を向けるような仕草もあることから、遊覧船は北朝鮮の国境警備兵を撮影しないようにとの注意を始めた。

北朝鮮側に従来からある国境監視小屋。今年増設されたのはバラック小屋のような粗末なもの

 加えて、北朝鮮は脱北や密貿易を防ぐために国境沿いに地雷を埋めたとの韓国報道もあり、尋常ではない。

 丹東の関係筋は、2月上旬以降、停止している丹東と平壌を結ぶ国際列車の運行を再開させて、乗客の手荷物扱いにして貨物を運搬することを北朝鮮へ提案するも、北朝鮮側は乗客入国に難色を示して合意しなかったと話す。

 さらに、日本のメディアでも報じられているように、吉林省延吉には3万人ほど、丹東には8万人ほどの北朝鮮人が労働者として残っており、中国側は北朝鮮側に防疫を理由に帰国を拒否されていると主張している。

 ほとんどの北朝鮮人労働者は公用ビザで滞在しており、すでに一部は期限が切れて不法滞在状態になっているが帰国できずにいるため、中国当局も黙認しているという(そもそも公用ビザで労働してはいけないのであるが、国連制裁で就労ビザ発行が禁止されたため裏技として使われているとみられる)。

中朝国境封鎖の強化
両国で示し合わせた猿芝居の可能性も

 表面的には、中朝国境封鎖が強化される原因を中国・北朝鮮が双方になすりつけているように見える。しかし、実は両国が国際社会を欺くために示し合わせて猿芝居を演じている可能性も高い。

 北朝鮮は派遣労働者によって貴重な外貨を獲得し続けることができ、中国は安い労働力を安定して確保できるという双方の思惑が完全に一致しているからだ。

 国際社会から指摘されたら、やれ北朝鮮が、やれ中国がと双方を悪者にして、のらりくらりと巧みに回避しているように思える。

線路と道路併用の中朝友誼橋。通行車両は10トンまでに制限されている

 この20年間の歴史を見ても、中朝両国で結託して撹乱させた情報に、日本や周辺国は騙され続けてきたことを改めて思い出したいところだ。

 中国の観光庁にあたる中国国家旅遊局は、北朝鮮ツアーを実施する旅行会社に対して、中朝国境は来年6月まで封鎖を継続し、まずビジネス往来から再開させて、観光目的での訪朝は最後になるとの通達を出している。

 旅行会社は多少早まることはあっても、来年の春までは中朝国境が再び開かれることはないと認識しているようだ。

(筑前サンミゲル/5時から作家塾(R))

※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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