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不倫発覚後の明暗を分ける「許される力」の身に付け方

2020年12月13日 06時00分更新

文● 鈴木涼美(ダイヤモンド・オンライン

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パートナーに許されがちな男に共通する最も大きな特徴とは(写真はイメージです) Photo:PIXTA

2020年ももうすぐ終わるが、今年は不倫報道が相次いだ。東出昌大、渡部建、瀬戸大也、近藤真彦、さらに先月は元衆議院議員の宮崎謙介氏の4年ぶり2度目の不倫が発覚した。だが、その後、離婚する夫婦もいれば、そうでない夫婦もいる。果たして「許される力」を身に付けるために必要なこととは。(作家・社会学者 鈴木涼美)

4年ぶり2度目を
キメた元衆議院議員

 12年ぶり2度目の紅白出場を決めたのはミスチルだが、個人的には4年ぶり2度目をキメた元衆院議員の不倫報道の方にどうしても目が行く。

「イクメン議員」をうたっていただけに、議員辞職までせざるを得なかった4年半前のスキャンダル以降、ワイドショーや雑誌インタビューではお調子者のオシドリ夫婦っぷりが人気を呼び、今年10月には騒動を乗り越えた妻の著書が話題となっていた。

「許すチカラ」なんて、女としてはあんまり発揮したくないが、妻を持つ男としては、ぜひともパートナーに持ち合わせてほしいのでしょう。今回のスキャンダル以降の夫婦の雰囲気を覗いても、「やっぱり人生楽しむ鍵は、許すチカラを持った女性をゲットすること」と確信した殿方も多いのではないか。

 確かに、男にとっても女にとっても、自分がどんな人間であるのか、どんな価値観で何を信じ、何を尊び、何を軽蔑しているか、簡単に言えば「Who I am」をよく理解してくれるパートナーを見つけることは、ありのままの自分で生きていく上でとても有利にはなる。

「自分を犠牲にしてもいつでも守るべきものはただ一つ 君なんだよ」(※1)なミスチルに惚れ込むのか逃げたくなるのか、「女好きは俺らの悪いくせでも遊びなんかじゃないよ」(※2)の長渕にキュンとするのか呆れるのか、「行かないでね何処にだってあたしと一緒じゃなきゃ厭よ」(※3)の林檎をかわいいと思うのか重いと思うのか、「見知らぬ人でもかまわないからふるえるこの肩どうぞ抱きしめて欲しいの」(※4)な静香がいとおしいのか軽薄に感じるのか、その辺りの価値観が合わないと、どちらかが息苦しくなり、どちらかが不安を募らせる。

 ただし、人という字は二つで一つなので、許すチカラは許されるチカラと共にあって初めてそのチカラの真価が発揮されるのは言うまでもなく、というかそこが一番大事なのだけど、どうも男は都合よく、女の器と世間の器こそ重要だと信じがちなのだ。彼女が厳しいから、時代が不寛容だからと言う前に、自分のそのあたりを見直したらどうかと本気で思う。

 女の方だって、浮気ひとつで世界が終わるとは滅多に思っちゃいないが、世界を終わらせる浮気もあるとは大概思っている。相手の器量で人生変わるというのは、半分は本当だが、半分しか本当ではない。

許される男に
共通する特徴

 浮気していることがはっきりと判明している知人男性たちの顔を思い浮かべて、もしパートナーにバレたら世界が終わるであろう人物と、バレたところで終わるのはせいぜい一晩の安眠くらいだろう、あるいはもう何度かバレているが割と無傷である、という人物というのは結構明確に分けることができる。

 ただし、例えば当該男性がメディア露出するような著名人である場合、家庭で許されるかどうかと世間に許されるかどうかと多少は被るがイコールではない。

 いずれにせよ、週刊誌に報道される可能性が低い多くの人たちにとって気になるのは、世間というより自分の家庭に抹殺されることだろうから、ここではひとまず社会的生命の話はおいておく事にする。

 さて、あくまでパートナーに許されがちな男に共通する最も大きな特徴は、ある場面で悪者になりきる、もしくはある人物にとっては悪者になりきる度胸があるということである。

 多くの「許されたい男」は、許されたいが故に、悪者になりきれず、いい顔をしがち、いい男ぶりたがるという性質を持つが、本来的な意味で許されるチカラを持つ男は、「誰に許されたいのか」を明確に言える男である。

 J-POPついでに、「人はどちらにつくかで見方が変わってしまう あれは身を引いたのか それとも逃げ出したのか」(※5)と歌ったのは大黒摩季だけれど、一対一の関係が基本的構造の恋愛関係においては、それを三角にした途端に、Aの位置に立つかBの位置に立つかでCの印象は真反対になるものである。そして、できればそれを平準化して、どちらにも悪くない印象を持ってもらおうとした途端、両者からの印象は地獄のように悪くなる。

 ちょっと前に、浮気が原因で別れた知人カップルの、女性の言い分だけをアンフェアに引用すると、大体こんな感じだった。

「こちらは付き合って1年半、あちらはただの浮気相手。彼は私とは別れたくないと言いながらも、私との言い合いの中であちらさんの肩を持った」

 そんなのありえなーいという女性の大合唱が起こりそうだが、よくよく思い出すとこれは頻繁に目の当たりにする事態である。

 男はたとえ自分が悪くても、女が浮気相手や元カノ、愛人などを罵倒すると、「あの子もそんなに悪い子じゃない」的な謎な正義感を振りかざして来ることがある。「元カノが俺に連絡してきたのは、本当に最近具合が悪くて助けが必要だったからで」 とか。「いや、あの子は確かに俺に妻がいるのを知っていて旅行に行きたがったけど、純粋な子なだけで悪意はなかった」とか。

 確かに人間は誰しもいいところの一つくらいあるし、完全なる悪人というのは探すのが難しい。が、そんな世の真理は、クリスマスにしか行かない教会や法事の時のお寺にて説いてもらえば十分なのであって、浮気男の口から聞きたくはない。

 大黒摩季ねえさんには悪いが、その時に本命の女が望んでいるのは、世の真理や客観的事実や第三者の冷静な見解などではなく、非常に偏った愛情表現なわけで、目の前で浮気相手の全てのSNSをブロックして、なんならメールで 「もう関わるな」くらいの悪態を送りつけて、俺が間違っていた、相手の女は最低なブスの尻軽女でお前は最上級のいい女だ、くらいの甘ったるい愛の言葉を耳元で囁くくらいしてほしいというのが本音なのだ。

浮気が許される資格が
ある男は極めて少数

 さて、私は本妻になったことはなく、大して本腰ではない愛人的立場の経験があるので、当然、そのような妻にとって理想的な態度が取れる男を愛人側から見れば、最低最悪の無責任男であることを知っている。女子会で悪口の全てを出し切って非難され、愛人の親友たちからは「家燃やそうぜ」と言われるレベルでもある。

 ただし、家庭を捨てて愛人に走る男は割合としては非常に少ないわけで、いずれにせよどちらか一方にしか許されないのであれば、別れたくない方、多くの場合は妻の方に許されるために全てを尽くすしかない。この、急角度というか白と黒の優先順位を一貫してつけていられるかどうかに、バレた時の家庭の平穏はかかっている。

 その意味では、一貫して愛する妻との仲を優先しているようにちゃんと見える元衆院議員は許される男の部類に入るのだろう。

 ただし、そもそも妻や家庭にバレる男というのが、愛人への最低限の礼節を欠き、女を酷く憤慨させる者だということは、以前この連載でも多目的トイレの神様を参考にしながら書いた。元衆院議員も、週刊誌を読む限り、どうやらそんな経緯で釣った女にバラされたクチ。

 実際はここが一番難しいのだ。妻と愛人に明確な優先順位をつければバレた時には許されがち、しかし妻と愛人を露骨に生き物として差別しすぎるとバラされがち。それで結局、どちらにも冷たい顔ができずに、バラされるくらい愛人へのケアをおろそかにして、許されないくらい妻をも軽視するという最低パターンの組み合わせ男が爆誕することもある。

 要は、愛人に対してバラされない程度の敬意を保ちつつ、妻にはその敬意が見えないようにする、というちょっとしたテクニックが必要ということになる。

 そんなものは身に付け得るものだろうか。いや、これを身に付けられないのであれば、本来、尊重しあえるパートナーとの生活と、刺激的でリスキーな夜を両方手に入れる資格がないのだけど、身に付けているのは上流の1%くらいしかいないのが問題なのだ。

 そもそも、その2つを手に入れたいというのは男の、極めて自分勝手な、人をなめ切った、理不尽で子供っぽい甘い夢なのである。

 そして多くの自信過剰な浮気男たちは、「ちゃんと妻も満足させてるもん」とか正論めいた迷言をほざくのだけど、満足というのはそもそも他者が「十分なケアをしている」と勝手に外から決めつけるものではなく、本人の主観でしかないというのは歴史を見ても明らかだ。

 フランス革命時も学生運動の時も、与えている側は民たちがそれほど痛みを持っているなんて想像していなかった。自分勝手な甘い夢は、もちろん相応の犠牲と痛みを伴って、何かしらを削り取っている。その削り取りが愛人に偏れば逆上させてバラされるし、妻に偏れば家庭崩壊につながる。

 結局最も重要なのは、一対一を勝手に三角にしたときに、男が選択すべき優先順位が、「女>女>自分」だということなのだ。

 許されるチカラがゼロの男は「自分>妻>愛人」という構図を当然のごとく信じているし、許されるチカラをそれなりに持っている男でも、その構図は「妻>自分>愛人」になっていることがほとんどで、優先順位の一番下に、一番の痛みが注がれることをわかっていない。

 今自分が浮気をしていて、自分がとっても満足で楽しくて苦しくないのだとしたら、それは妻か愛人の誰かに全てのしわ寄せが行っている証拠だと考えた方がいい。

 つまり、復讐されない程度に愛人の自尊心を保ち、しかし許されるくらい妻を大切にできる男というのは、本人は別にスーパーハッピーではないはずなのである。仕事や金銭面で苦しかったり、時間のやりくりや体力の限界が近かったり、ハートが引き裂かれて痛かったりするはずで、それを引き受けてでも男女のまぐわいを求める女好きであって初めて、現代の許されていないけど許される可能性もある浮気への重い扉にようやく手をかけられる。

 そして私の経験上、男は女以前に自分のことが好きすぎて、そこまで女好きである場合はそう多くはない。ということは、結論的に、浮気をする資格がある男は、今現在浮気している男の数に比べて極めて極めて超少量であると言わざるを得ない。

歌詞出典:(※1)Mr.Childerem『Everything』作詞作曲:桜井和寿 (※2)長渕剛『俺らの家まで』作詞作曲:長渕剛 (※3)椎名林檎『ここでキスして。』作詞作曲:椎名林檎 (※4)工藤静香『嵐の素顔』作詞:三浦徳子 作曲:後藤次利 (※5)大黒摩季『あぁ』作詞作曲:大黒摩季

※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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