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第3波到来、コロナ対策を迷走させる「2つの考え方」

2020年12月09日 06時00分更新

文● 鈴木明彦(ダイヤモンド・オンライン

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写真はイメージです Photo:PIXTA

 感染再拡大の欧米に続いて日本でも新型コロナウイルス感染の第3波が到来している。

 新規感染者や重症者の数を考えると、第1波、第2波を上回る感染拡大といえる。医療の状況を考えると感染爆発を起こさせないことが喫緊の課題だ。

 これまでコロナ対応では、感染防止を第一に考える専門家と経済を重視する政治家の「2つの考え方」が調整されず対策が迷走するきらいがあった。今回は大丈夫なのか。

初の本格感染シーズンでの拡大
年明け後も続く可能性

 新規感染者数の推移を見ると3~5月にかけて発生した春の第1波、7~8月にかけての夏の第2波に続いて、10月以降冬の第3波といえる感染拡大が起こっている(図表1)。

 第3波は、すでに第1波、第2波の新規感染者数のピークを超えており、過去最大の感染拡大の様相を呈している。

 新型コロナの感染のシーズンがインフルエンザと同じと考えれば、コロナ禍が起きてから初めて迎える感染シーズンとなる。

 日本より早く寒くなる欧米にやや遅れて日本でも感染が拡大したのは、想定されたことといえよう。同時に、年明け後も感染拡大が続くということも覚悟しておかないといけない。

 もっとも、新規感染者数の推移はPCR検査の件数の増減にも影響される。

 PCR検査は感染した可能性が高そうな人を中心に行われ、感染拡大の状況と検査数は連動するのだが、感染初期には症状が出ていても検査を受けられない人もいた。

 検査能力が拡大して検査件数が増えてくると、それまで発見できなかった感染者も把握できるようになる。

 第1波の時と比べると、第2波の時の検査件数は大きく増えており、第2波の新規感染者数を押し上げる要因の一つになった可能性がある(図表2)。

 逆に言えば、第2波の時と同じように検査ができていれば、第1波の新規感染者数はもっと多かったとの推測も可能だ。

 そこで、こうした影響を受けにくい重症者数の推移を見てみると、第2波のピークは第1波のピークを下回っており、感染が抑制されていたとも考えられる。

 第3波のもとでもPCR検査数は増えているが、新規感染者数に加えて重症者数も第1波、第2波を大きく上回っており、過去最大の感染拡大と考えてよいだろう。

感染と経済の打撃は比例せず
準備なく経済直撃の第1波

 感染拡大による今年4~6月期の経済の落ち込みの悪夢がさめやらぬところで、また感染拡大となれば、景気腰折れ懸念が強まってくるのは当然の流れだ。

 もっとも、感染の拡大に比例して経済のダメージが拡大するというわけではない。第1波と第2波の感染拡大でも経済に与える影響には違いが見られた。

 図表3は、下の棒グラフで新規感染者数を逆目盛りで示し、上の折れ線グラフで株価(日経平均株価:点線)と景気(景気動向指数CI・一致:実線)の動きを見たものだが、第1波の感染拡大では、世界的に経済活動が停止し、日本の株価も景気も大きく落ち込んだことが分かる。

 さらに、第1波の感染拡大のピークが4月だったのに対し、株価は3月を底に持ち直しに転じた。これは、中国経済がこの頃には底打ちし、いずれ世界経済も底打ちするという期待が広がったからだろう。

 一方、景気は、感染拡大が収まり始めた5月になってから徐々に経済活動が再開されて底打ちしてくる。

 第1波で景気や株価が大きく落ち込んだのは、不意を突かれて備えがなかったことが影響しているのではないか。

 予防の基本であるマスクも手に入らず、テレワークの準備もない中で在宅勤務と言われて当惑した人も多かったはずだ。

 医療体制も感染に対する準備ができておらず、希望してもPCR検査を受けられなかったり、重症者の受け入れ態勢が追い付かなかったりといった医療崩壊の危機が指摘された。

 初めての経験にぼうぜんとする中で、4月には緊急事態宣言が出され、経済活動の停止や外出の自粛を余儀なくされる中、景気は大きく落ち込んだわけだ。

予防や医療が整い回復が続いた第2波
第3波は備えを破られる懸念

 第2波の感染拡大は新規感染者数では第1波を上回るものとなったが、第1波ほどには重症者の数は増えなかった。

 また、経済活動も回復ペースこそ緩やかになってきたが、持ち直しが続いた。7~9月期の経済成長率は前期の反動もあり大幅なプラス成長となった。

 この頃になると、マスク不足も解消され、医療体制も改善が進み、テレワークの広がりなど、感染が続いていても経済活動を続けるウィズコロナの姿が徐々に見えてきた。

 第2波の感染拡大では、多少なりとも備えが整ってきたことにより、医療崩壊、経済活動の停止といった状況を回避し、経済の持ち直しが続いたといえる。

 今回の第3波ではどうなるだろうか。

 第2波の時までに準備されたマスク着用やうがい手洗いの励行、密を避ける工夫といった予防策は第3波でも有効だ。テレワークや製造現場の無人化など、人と人との接触を避けながら経済活動を継続する工夫も広がっている。

 実際、第3波が押し寄せているといっても、感染の広がりは欧米に比べてはるかに抑制されている。

 このように、第2波の時以上に備えは整ってきていると考えられるが、それでも波の大きさはこれまでを大きく上回る。第2波を持ちこたえた備えが、今度は破られるのではないかという不安はある。

 ひとたび備えが破られると日本の弱さが露呈する。

 感染爆発に至らなくても医療体制はひっ迫する懸念が出ている。

 ワクチンの開発も国際的な競争で日本が進んでいるとはいえない。

 PCR検査の実施体制、重症者に対する医療体制、ワクチン開発への取り組みなど、日本の脆弱(ぜいじゃく)な面を強化していかなければならないことは言うまでもない。

 しかし、それには時間がかかる。今はまず爆発的感染を防ぐことが喫緊の課題だ。

感染防止第一の専門家と
経済重視の政治家の間で溝

 この課題が大事だということは共通の認識になっていると思われるが、コロナ対策については、感染防止を第一に考える感染症の専門家と、経済を重視する政治家の2つの考え方が錯綜(さくそう)している。

 感染爆発を回避して景気の底割れを防ぐという目標が双方の合意点として成立しそうだが、実際にはかなり難しそうだ。

 感染が拡大した時には、早く経済活動を制限すべきだという専門家の意見に、しぶしぶ政治家は応じるが、経済重視という基本方針があるのでそのタイミングは遅れ、制限も専門家が求めるほど厳しいものにはならない。

 感染が収まってきた時の対応にはさらに開きがある。経済活動の制限に効果があったのだから、さらにこれを続けようというのが専門家の考え方であるのに対して、感染が収まってきたから、制限を緩めて需要喚起策を打とうというのが政治家の考え方だ。

 つまり、専門家からは、感染がまだ続いているのに、感染リスクを高める可能性がある政策を打つという発想は出てこない。政治家の考え方にお墨付きを与えることも本来、起こり得ない。

コロナ対策の迷走が
経済にとって一番のリスク

 これまで打ち出された新型コロナ対策を感染者数の推移と並べてみると、その背後で専門家と政治家の2つの考え方がせめぎ合っていることが想像できる(図表4)。

 もっとも、コロナ対策を決めるのは政府であって、専門家の意見は参考にされるだけだ。結果として、実際のコロナ対策は政府の考え方が優先される。

 しかし、2つの考え方がうまく調整されないことによって、コロナ対策は迷走しているのではないか。

 Go To キャンペーン政策がその象徴だ。

 政府は第3次コロナ対策で、医療体制の拡充のための自治体への交付金の増額などを決めたが、Go To トラベルやイートは一部の見直しにとどめ、事業は来年6月末まで続けるという。

 だがこれから感染が本格化しそうな時に需要喚起策を続けるのは、さすがにタイミングが悪い。

 いくら、足元の感染拡大がGo To トラベルやイートによるものではないと主張しても、感染リスクを高める可能性がゼロとはいえないはずだ。

 政府は事業規模70兆円超の追加経済対策を決めたが、国民が安心するのは事業規模の大きさではなく、ワクチンや治療法が確立して感染が抑えられた時だ。感染が収まればお政府の対策が無くても需要は戻ってくる。

 今は、第3波の高さを少しでも低くすることに注力すべき時だ。ブレーキとアクセルを同時に踏むような政策を続けることが、日本経済の先行きにとって一番の懸念材料となる。

(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部研究主幹 鈴木明彦)

※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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