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ハーバードで世界の教育を学んで分かった「好奇心」を伸ばす2つの秘訣

2020年11月27日 06時00分更新

文● 本山勝寛(ダイヤモンド・オンライン

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「好奇心」を伸ばす子育てとは? Photo:PIXTA

これからの不確実な社会を生き抜いていくために「教育」に求められることはどんなことなのでしょうか。ハーバードで世界の教育を研究した本山勝寛氏は、これからの日本の教育では「好奇心」を育てることが重要だと言います。なぜ「好奇心」を伸ばす教育が重要なのか、解説します。

時代が変わったのに
変わりきれていない「日本の教育」

 いきなりですが、質問から入ります。

 日本の教育はこのままで大丈夫だと思いますか?

 大丈夫だ、と自信をもって言える人は少ないのではないでしょうか。

 親の立場からしたら学校だけでは心配なので、塾や習い事に通わせ、小さいうちから何かをさせないと不安になってしまいます。先生の立場からは、家庭の環境も理解度も異なるたくさんの生徒たちを、学習指導要領に沿って一斉に教えなければならないうえに、英語教育、プログラミング教育、道徳教育、オリパラ教育、キャリア教育、いじめ対策とやらなければならないことがあり過ぎて、毎日がそれらに忙殺されています。

 日本の教育は何を目指し、どんな人に育てたいと考えて教育制度が設計されているのでしょうか?

 もちろん、「生きる力」といった言葉が文部科学省から示されてはいますが、実態としては、少しでも偏差値の高い大学に合格することが教育のゴールで、そのゴールに向かって幼少期からの子どもの教育が設計されたままになっているように思います。

 少しでも偏差値の高い大学に行くことを目指して、まずは少しでも偏差値の高い私立中高一貫校に合格できるよう、子どもの動機とは別に、周りがそうしているから、親が不安だからという理由で、子どもの発達の早い段階から塾に通わせる。子どもたちは決められたカリキュラムの工場に流し込まれたように、正解をより速く選ぶマニュアルをたたき込まれます。

 欧米諸国に追いつけ追い越せを目指していた高度経済成長期は、それでもよかったのかもしれません。吸収すべき知識と正解があって、それをより速く正確に解答することが求められる人材像であったからです。急スピードで経済成長した日本の底力となった教育も、1980年代までは世界から注目されていました。

 では、先頭集団に既に追いつき、自分たちが新たなものを創造し、開拓すべき時代を迎えた今日はいかがでしょうか?社会に出たら決まった正解のないものばかりです。自らが問題を発見し、複雑な問題を解決するために自分の頭で考えて行動し、トライアンドエラーを繰り返していかなければなりません。学び続けること、成長し続けること、挑戦し続けることが求められるのです。

 時代は変わったのに、教育は変わりきれていない。それが日本の現状なのかもしれません。

これから最も求められる力は
「好奇心」である

 教育のゴールが大学受験のテストでより速く正解を出すことになっているため、学びの成長曲線が受験期でピークアウトしてしまい、大学生や社会人になると多くの人が学びをストップさせてしまっています。本来は、大学生や社会人になってからこそが、高校までの基礎力を応用して各自の学びを開花させる時期であるはずなのに、実にもったいない状況です。

 日本は国際学力調査でも初等中等教育まではトップレベルなのに、大学生、社会人になると、国際社会におけるレベルは低い状況に陥ってしまっています。それでも国民全体の平均的な基礎力は高いのですが、時代を切り拓くような創造性や生産性は低いレベルにとどまっているのです。

 では、日本の教育は何を目指し、どんな人を育てていくべきなのでしょうか?

 私がハーバードで世界の教育を研究し、実際に5児の子どもの父親になってみて痛感しているのは、これからの時代において最も求められる力は「好奇心」だということです。そしてこの「好奇心」を養うことは、日本のこれまでの教育で最も足りていない部分だと思います。

 世界的ベストセラーになった『フラット化する世界』でトーマス・フリードマンは、「フラットな世界では、仕事、成功、学科の分野、趣味ですら、好奇心と熱意がさらに重要になる。なぜならフラットな世界には、好奇心とそれを抱く人間の奥行きや幅をどんどん広げるツールが山ほどあるからだ。フラットな世界ではIQ(知能指数)も重要だが、CQ(好奇心指数)とPQ(情熱指数)がもっと大きな意味を持つ」と語っています。

 今や世界を席巻しているグーグル(Alphabet社)やアマゾンも、社員の採用において好奇心を重視しています。グーグルの人材開発部長は『未来のイノベーターはどう育つのか』(トニー・ワグナー著)のなかで以下のように述べています。

「もちろん賢いことは重要だ。でも知的好奇心のほうがもっと重要だ。グーグルで成功する人は、すぐに行動を起こしたがる傾向がある。壊れている物を見つけたらすぐに直すような性格だ。問題を見つける能力も重要だが、見つけた問題について不満を並べたり、誰かがそれを解決してくれるのを待っていないこと。『どうすればもっとよくできるだろう』と自問すること。それからすべてにおいてコラボレーションが必要不可欠だ。周囲に多様な専門性を持つ人がいることに気がつき、彼らから学ぶ能力のある人物を私たちは高く評価する。」
(トニー・ワグナー著/藤原朝子訳『未来のイノベーターはどう育つのか』(英治出版)より)

 高い好奇心を持っていれば、親や先生から勉強するように強制されなくても自ら主体的に学び、学校を卒業して社会人になってからも常に新しいことを学び続け、上司から指示されなくても仕事を改善し、新たな価値を創り出します。

子どもの好奇心を伸ばす
2つのポイント

 では、どうすれば子どもの好奇心を伸ばすことができるのでしょうか?

 私は「没頭」と「アウトプット」がポイントになると考えています。

 まずはどんなことでもよいので、好きなことに時間を忘れるくらい集中して没頭する体験をたくさん積むことです。マンガにハマること、ブロックで作品をつくること、昆虫採集で自然を探索すること、好きな絵を描くこと。なんでもよいので子どもが好きなことをとことんやらせて、大人の事情で遮らずに、背中を後押ししてあげます。

 そして、自ら何かを生み出すようなアウトプットの機会をつくるとよいです。たとえば、昆虫採集であれば、観察絵日記を書いて、それを一冊の本にまとめて形にする。絵が好きであれば、オリジナルの絵本作品をつくってみる、といった具合です。

 わが家ではハムスターを飼っていますが、オスとメスのペアを育てていたところ、赤ちゃんが生まれました。子どもたちは大騒ぎで、毎日ハムスターと赤ちゃんたちのお世話をしています。どんなエサなら食べるのか、どんなおもちゃだと喜ぶのか、理科の実験のように、一つ一つ試しながら一喜一憂しています。また、マンガ『ハムスターの研究レポート』にはまったり、図鑑やハムスターの飼い方に関する本をじっくり読んで学んだり、自分でハムスターのオリジナルキャラクターを考え、オリジナル絵本を描いてつくったりしています。

 ハムスターに関する知識そのものが将来何かに役立つことはほとんどないかもしれませんが、何かにはまって心から楽しみ、自ら探求し学んだ経験や、自分で考えて作品を創造した経験こそが、「学ぶことは楽しい」ということを理屈抜きに心身に刻み、好奇心を伸ばすことにつながるのだと思います。

 わが家の5人の子どもたちは、自分が幼少期そうだったように、学習塾に通うことはしていません。それよりも、一人一人が与えられた個性をその子と一緒になって探して、見つけ出すこと。そして、好きなものが見つかったら、それをとことんやって没頭できるようにすること。何らかのアウトプットを創り出せるよう、子どもの背中を後押しすること。また、親自身が子どもと一緒になって学びを楽しみたい、そんなふうに考えながら、子育てを楽しんでいます。

 子どもたちも、親たちも、そして先生たちも、もっともっと学びを楽しんでいい。そうすれば育まれた好奇心が原動力となって、だめと言われても自ら学び続けるものです。それが日本の教育が良くなる秘訣だと思います。

※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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