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夢の技術! 自動運転の世界 第29回

自動運転の基礎 その23

世界初になれるのか!? ホンダの自動運転レベル3の意味とは

2020年11月30日 12時00分更新

文● 鈴木ケンイチ 編集●ASCII

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自動運転の世界が一歩前進か!?
ホンダのレジェンドがレベル3車両に!

 2020年11月11日、ホンダと国土交通省から驚きのニュースが発表された。それは「世界初となる自動運転(レベル3)の型式指定の取得」だ。具体的に言えば、ホンダのレジェンドが自動運転レベル3の車両として、国に認められたということ。そしてホンダは、このレジェンドを本年度内に販売すると予告しているのだ。

ホンダ レジェンド

 自動運転レベル3とは、「特定の条件下で、クルマの運転のすべてをシステムが行なう」という、いわゆる「自動運転」と呼べるものだ。ただし、システムが運転継続できなくなったら、すぐにドライバーに運転を戻すのが条件。そのため、ドライバーはいつでも運転に戻れるように準備しておく必要がある。まだまだ完全なる自動運転ではなく、自動運転と呼べる初歩の段階と言えるだろう。

 しかし、それでも今現在、世界でも自動運転レベル3の量産車は生まれていない。ドイツのアウディなどもレベル3相当の技術を完成させているが、法規などの整備が遅れていることもあり、公道を自動運転レベル3のクルマが走れないでいる。また、ドイツメーカー以外でもトヨタや日産、GMなども熱心に自動運転技術の開発を進めているが、いまだ実用車の話まで出ていない。

 そういう意味で、このまま他国で自動運転レベル3のクルマが発売されないうちに、年度内にレジェンドが発売されればホンダが「世界初の自動運転レベル3の実用化成功」の栄誉を得ることになる。これは1972年にホンダが世界に先駆けてアメリカの排気ガス規制「マスキー法」をクリアしたことに匹敵する。マスキー法のときも、世界中の自動車メーカーが必死になってクリアを目指したが、最初に達成できたのがホンダだった。

レベル3の走行条件はかなり限定され
ドライバーはすぐにハンドルを握れることが大前提

 ただし、レジェンドの自動運転レベル3は、まだまだ最初の一歩と言える内容だ。レジェンドの自動運転装置は「Traffic Jam Pilot(トラフィック・ジャム・パイロット)」という名称となる。ハードウェアでいえば、車両にカメラ、レーダー、ライダー(レーザーレーダー)、高精度地図、全球測位衛星システム(GNSS)、ドライバーモニタリングカメラ、作動状態記録装置、サイバーセキュリティー機能、ソフトウェアアップデート機能、外向け表示ステッカーなどを装備する。電源系統、ステアリング機能、ブレーキ機能は冗長化されているというから、すべてが二重になっているのだろう。自動運転のための装置をフル装備していると言える。

 それでも走行可能な場所は、高速道路や自動車専用道路。ただし、中央分離帯のない区間や急カーブ、SA/PA内、料金所では使えない。また、強い雨や降雪による悪天候、視界の悪い濃霧、強い逆光などでシステムが走路を認識できないときもダメ。全球測位衛星システム(GNSS)が使えないとき、運転手がシートベルト非装着のときも作動しない。さらに交通状況は、渋滞、もしくはそれに近い混雑時のみで作動する。走行速度は30㎞/h未満でスタートし、作動後も50㎞/h以下であることが条件となる。

 つまり、天気が悪くないときの高速道路で、渋滞のノロノロ走行が主な使用状況となるようだ。また、ドライバーは前を注視する必要はないが、かといって居眠りや読書をするわけにはいかない。いつでも運転に戻れるように、スタンバイしている必要があるのだ。

 そういう意味では、レジェンドの「Traffic Jam Pilot(トラフィック・ジャム・パイロット)」の進歩は、小さな一歩と言える。しかし、その小さな一歩は前人未踏のもの。世界初が実現すれば、世界の自動車史に残る偉業となるはず。一刻も早い実現を期待したい。

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筆者紹介:鈴木ケンイチ

 

 1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。

 最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。毎月1回のSA/PAの食べ歩き取材を10年ほど継続中。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 自動車技術会会員 環境社会検定試験(ECO検定)。


 

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