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ファン熱狂の「ゴジラ・フェス」、初のオンライン開催が成功した理由

2020年11月21日 06時00分更新

文● 武馬怜子(ダイヤモンド・オンライン

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今年8月までスタジアムや劇場、映画館などのイベントの中止、延期が続き、涙をのんだ人もいることだろう。その後、イベント開催者たちもゆっくりと新型コロナウイルスの感染防止の体制に慣れつつあり、徐々に大型施設の入場規制も緩和され始めた。宝塚やディズニーなど、人数制限や消毒をはじめさまざまなウイルス対策をした上で、大きな施設でイベントを再開し始めたところもある。その中で、あえてオンラインでの「ゴジラ・フェス」を開催した東宝を取材した。(清談社 武馬怜子)

9時間にわたり
オンラインで生放送

写真提供:東宝

 11月3日、第4回を迎える「ゴジラ・フェス オンライン2020」が開催された。今年はコロナの影響を鑑み、スタジオから生放送を行い、視聴者はそれぞれ好きな場所で見る形となった。

 イベントはおよそ9時間にわたって開かれ、「東宝スタジオツアー」「ゴジばん」(怪獣人形劇)など、プログラムもバラエティに富んでいた。たとえば、淡路島公園にあるアニメパーク「ニジゲンノモリ」に設置された実物大ゴジラのアトラクション「ゴジラ迎撃作戦」の製作秘話紹介では、ゴジラの肌色、口内の湿った感じ、歯の形その他、細部に徹底的にこだわり抜いて、何度も本体の色を塗り直したり、どこから見てもゴジラに見られているようにする技術が映像で紹介された。

アニメパーク「ニジゲンノモリ」に設置された実物大ゴジラのアトラクション 写真提供:東宝
毎年の恒例イベントとなる「居酒屋ゴジラ」も盛り上がった 写真提供:東宝

「24時間テレビのような生放送番組系のつくりですが、ネット配信なのでいろんな意見やコメントをユーザー同士が交わすことでより楽しんでいただけたと思います」

 こう話すのは東宝CGO(チーフ・ゴジラ・オフィサー)の大田圭二氏だ。

「もちろん、いろいろ問題点もありましたが、今回やってみて分かったのは、オンラインでイベントをすることの可能性です。イベント会場近郊の人と同じチケット代4000円で離れた場所の人が同じことを楽しめるというのは、大きな利点だと感じました」

 昨年は東京ミッドタウン日比谷前での屋外開催で、入場無料だったこともあって約2万5000人と会場から人があふれるほどの盛況ぶりだったが、一方で、大阪や九州から交通費を何万円もかけて来る人にとっては大きな負担となっていた。

 それが今年のオンライン開催は参加費が1世帯4000円。無料配信のサブステージもあるが、昨年を考えると「結構代金が高いな」と思う人も少なからずいたかもしれない。

「私たちにとっても、初めてのオンラインイベントです。価格設定の議論はありました。時間がかかる問題でしたが、最終的に『1時間500円ぐらいで見積もっての9時間ぶっ通しのイベント』と考えたら、妥当な値段なのではないか、と決着しました」

「ゴジラ・フェス」を取り仕切るチーム、ゴジラ戦略会議(以下ゴジコン)のメンバーは総勢23人で、開催が決まった9月より前から、去年とは違うオンライン「ゴジラ・フェス」のやり方をずっと模索してきたという。

ファンが楽しめる
フェス感の実現に苦労

 盛況に終わった「ゴジラ・フェス」だが、オンライン開催を決定するまでには紆余曲折(うよきょくせつ)があった。もともとはリアルで11月に行う予定で会場も抑えており、開催に向けて動いていた。だが、緊急事態宣言が出された後、東宝のゴジコンでは、リアルでの開催の是非を巡り白熱した議論が繰り返された。

「ゴジラファンにとってこの日は特別な日です。コロナだから『なにもしない』というのは、われわれの選択肢にはありませんでした」

 ゴジコンのディレクターを務める高橋亜希人氏はそう強調する。「特別な日」とは、11月3日は1954年に映画「ゴジラ」が初めて公開された記念日であり、それを祝した「ゴジラの日」なのだ。

 9月初旬に開催の告知がされた「ゴジラ・フェス」ではあるが、その時点で内容はゼロから決めなければならなかった。

「昨年はゴジラの着ぐるみとハイタッチするイベントが、子どもたちにも大人気でした。これは今回は当然できないし、そもそも“オンラインイベント”ってどうやるの?というところから始めなければなりませんでした」

 さらに高橋氏を悩ませたのはフェス時間の長さだ。通常約2~3時間程度のコンサートや映画と違い、このイベントは昼12時~夜21時まで合計9時間。その間ファンを飽きさせないようにする必要があった。

「フェス時間をもっとコンパクトにするという議論もしたのですが、長時間でも楽しんでもらえる『フェス感』を感じられるスペースを作りたかったのです。フェス感を生むのは、世代を問わず好きなだけゴジラ作品について語り合える空間。それを大切にしたかった。昨年までのリアルなフェスの場合は、こちらでイベントを用意する必要はなくて、ファンが集う場所さえあれば楽しんでくれましたが、オンラインでは私たちがイベントをつくらないと回らないですよね」

 高橋氏はそう言って苦笑する。またフェスの内容やイベントゲストの人選にも気を使ったという。ゴジラファンは思い入れが強い人も多いため、フェスの内容はそうしたファンたちに満足してもらえるものでなければならない。だが、一方で、それほど詳しくない人でも楽しめるよう、マニアックになりすぎないように工夫を凝らす必要もあった。そのさじ加減も難しかったという。

リアルとバーチャルの
ハイブリッドなフェスに

 成功に終わったゴジラ・フェスだが、来年以降はどうなるのか?

「私たちとしてはリアルで集まってほしいという思いはありますが、しばらくはハイブリット(混合的)な状態になっていくと考えています」

 東宝初のゴジラ専属チーム・ゴジラルームリーダーの吉川哲矢氏はこう即答した。ゴジラは実際に体感してこそ楽しめるし、リモートでは再現できないところもまだまだ多くあるという。

「例えばリモート運営は、今の状況でもプロ野球などのスポーツ観戦ならほとんどの人が満足できている状況です。しかし、映画のイベントや舞台あいさつ、コンサートや演劇は、生で俳優や歌手を見ることに価値があります」

 吉川氏は「ゴジラ・フェス」をリモートで行ったことの率直な感想も口にした。

「今回オンラインでやったことは、今後のプラスになると思っています。来年以降どうなるかは誰にも分かりませんが、多くのファンに楽しんでもらう場所をつくるのは、IP(知的財産)のビジネスを継続していく意味で大事ですからね。模索していくしかありません」

 最初の映画公開から66年がたち、「ゴジラ」関連の映画は35作品に上る。さらに先述のアニメパーク「ニジゲンノモリ」のアトラクションだけではなく、今月から始まったイベント「続 熱海対ゴジラ」など、そこにいるだけで世代や国籍を問わず人を呼ぶ巨大コンテンツだ。

 また、来年以降にはハリウッド版「ゴジラVSコング(原題)」が公開予定。今後ますますファンが膨らんでいく中で、オンラインにできることはますます増えていくだろう。

「ゴジラ・フェス2020」特設サイト
https://godzilla.store/gfes/2020online/

※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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