ヘルステックベンチャーの事業展開をサポートする英語オンリーのピッチイベント
妊婦の健康とストレスをモニタリングするアプリなどが受賞:HVC KYOTO 2020
2020年11月19日 09時00分更新
ヘルスケア分野で革新的な技術を持つベンチャーのグローバルな事業展開をサポートすることを目的とした英語ピッチイベント「HVC KYOTO 2020」が2020年10月19日に京都リサーチパークで開催された。日本貿易振興機構(JETRO)、京都府、京都市、KRPが主催する本イベントは2017年の開催から4回目を数え、リアル会場とオンラインを結ぶハイブリッド形式で行われた。7カ国から26社のヘルスケアベンチャーが登壇し、会場ではパートナー企業13社との個別面談も60件行われ、コロナ禍の中でもヘルスケア特化型プラットフォームの先駆けとしての役割が果たされていた。
イベントとあわせて基調講演では、ヘルスケア分野で世界をリードするボストン・ベイエリアから、バイオテクノロジー支援施設「BioLabs」
イベントは早朝から夜まで濃密なプログラムで行われたが、ここではピッチイベントの模様を企業賞に選ばれた4社を中心に紹介する。
◆LAC賞 ファミリーフ https://fami-leaf.com/
妊娠中に5人に1人はかかるといわれる「妊婦うつ」をはじめ、妊婦の健康とストレスをモニタリングするアプリを開発する「UMENOKI」がLAC賞を受賞した。ヘルストラッキング機能による感情サポートや、健康データから食事レシピを提案するなどのメニューを展開し、妊娠中の女性の様々な問題を解消する。開発元のFamileaf(ファミリーフ)は京都大学発スタートアップで、国籍も専門も異なる多様なチームメンバーとアプリ開発に取り組み、アプリは現在、日英・ポルトガル語をリリースしている。ビジネスとしては、自治体や企業向けのサービス展開や、病院とのコラボで個人にあわせたテーラーメイドなサポートを行うといったことも目指している。
◆ジェトロ賞 Repertoire Genesis(レパトア ジェネシス)株式会社 www.repertoire.co.jp
免疫多様性解析を基盤とした新規診断法と治療法の開発支援を行うレパトア ジェネシスがジェトロ賞を受賞した。「治らないをなくす」を企業ミッションに掲げ、ウイルスや細菌などの外敵を攻撃する複雑な免疫システムを詳細に解析するプラットフォームを設立し、大学などの研究機関や製薬企業の基礎研究支援をはじめ、製薬企業における臨床研究支援や治験支援などを行っている。高機能ゲノム編集T細胞の製造基盤技術の確立に向けてAMEDと委託研究開発契約を締結し、COVID-19のハイリスク患者を選別する技術を開発プロジェクトにも参加している。
◆Startup Capital Kyoto賞 MEDICUS AI https://medicus.ai/
オーストリアのMEDICUS AIは医療レポートと健康データをAIで分析するアプリを開発している。血液や尿などのバイオマーカーデータや各種バイタル、投薬といった様々なデータを元にパーソナライズされた健康アドバイスを行い、健康と病気の予防につなげる。医師が診療の際の診断に利用したり、妊婦向けのスマートアシストツールも開発している。サービス提供はプロダクトごとに従量課金して行われる。グローバルなチーム展開を行っており、アジアでは深センにオフィスがあり、韓国や東京にもチームメンバーを抱えている。
◆KRP賞 bitBiome Inc. (ビットバイオーム)https://www.bitbiome.co.jp/
次世代マイクロバイオームの解析と研究を行うビットバイオームは、創業者である早稲田大学研究員の細川正人氏が開発した、独自のシングルセルゲノム解析技術「bit-MAP」によって、1つの微生物細胞から直接ゲノムを解読する技術を実現している。様々なサービスオプションを戦略的に組み合わせ、企業やパートナーの研究開発をサポートする。地球上の99%以上の微生物は培養も解析もされず、未知の生物資源として今後の活用が期待されていることから、同社の今後に対しても期待する声は高かった。
今回のピッチでは、全体的に遺伝子技術を活用した企業が目立った。株式会社UniBiO(ユニバイオ)
その他、脊髄損傷などの治療に臍帯血から培養した細胞で治療する研究を行う香港のMononuclear Therapeutics
バイオテクノロジーの技術は開発から実用化までの時間が長くかかるため、ベンチャーは資金調達だけでなく、人材の確保や事業継続でも長期的な支援が必要になる。ボストンや英国ではラボの設立やメンターによるアドバイスなどに力を入れているという話があったが、日本ではそうした支援態勢はまだ少ないように見えるだけに、今後もHVC KYOTOのような活動が増えることを期待したい。

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