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現場で手軽に作って使えるAIを月額3万円+ソフトウェア料金で実現

エッジコンピューターのスタンダードを目指す「AI inside Cube mini」登場

2020年11月04日 15時30分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

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 2020年11月4日、AI insideはAIエッジコンピューターの「AI inside Cube mini」を発表した。昨年発表されたAI inside Cubeの小型版にあたり、多くの実績を誇るAI-OCRをはじめとするさまざまなAIを現場で作り、手軽に使える環境を実現するという。

AIを手軽に作る、使うためのハードウェアとソフトウェアを提供

 2015年に創業したAI insideは、AI関連の研究開発やビジネスを展開する国産IT企業。AI-OCRの分野で高いシェアを誇っているが、「AI inside X」をビジョンとして掲げ、誰でも手軽にAIを作れ、使える世界を目指しているという。登壇したAI inside 代表取締役CEO 渡久地 択氏は、「AIを作るのに今も時間もコストもかかるのが現状。これだとAIが拡がっていかない。AIを誰でも使える環境を作りたい」と語る。

AI inside 代表取締役CEO 渡久地 択氏

 これを実現するために、AI insideでは3つの製品を展開する。

 1つめは「AIを動かすためのハードウェア」で、昨年から自社開発のGPU搭載エッジコンピューター「AI inside Cube」を展開している。オンプレミスでありながら、届いたその日から使える設計となっているほか、ユーザーが自身のデータをコントロールできるという特徴も持つ。ハードウェア的には電力消費の激しいGPUを搭載しつつ、家庭用の100Vで動作し、追加の冷却も不要な設計を採用する。行政総合ネットワークのインフラでも採用されており、すでに500以上の自治体で用いられているということで実績も高い。

 2つめは「AIを作るためのソフトウェア」で、自社製の「AI inside Learning Center」を使うことで、用途に応じたAIを現場のユーザーが簡単に作れる。渡久地氏は、ゴミ処理場での危険物や不燃物検知をデモ映像を披露。アップロードされたベルトコンベアの映像を見ながら、現場の担当者が不燃物と危険物をより分けることで、機械学習におけるアノテーション処理をGUIから容易に行なえることをアピールした。実際に作られた分類器の精度も99.5%に及ぶという。

危険物検知のデモ

 3つめは「AIを使うためのソフトウェア」で、同社では「DX Suite」というアプリケーションとして提供されている。代表的なソフトウェアがAI-OCRで、2017年11月以来リクエスト数はすでに7億回を数え、前述したハードウェアのAI inside Cubeを加えると、処理件数は倍以上に増える。また、契約数も過去1年で262から5800という爆発的な伸びを実現しており、特別定額給付金事業での地方自治体の申請受付業務で利用が急増している。

さらなるAIの民主化を狙うエッジコンピューターの小型版

 新たに発表されたAI inside Cube miniは、文字通りAI inside Cubeの小型版にあたる。AI inside Cubeの半分となる15cm四方のコンパクトな立方体筐体を採用し、ネジ1本ないアルミのヘアライン仕上げにこだわった。また、エントツ構造を採用し、筐体の下から上にGPUの熱を効率的に排熱する。ハードウェアスペックは開示されていないが、ソフトウェアの改良によりリリース時からすでに約20%の速度向上を実現しているという。

大幅な小型化を実現したAI inside Cube mini

 渡久地氏は、AI inside Cubeの利用事例として、テレビ番組に表示された文字スーパーをリアルタイムにテキスト化するテレビ朝日の事例を紹介。「これまで生放送に対応するために人力でテキスト入力していたので、データ化されてこなかった。しかし、AI Inside Cubeを使うことでデジタル化・データベース化され、検索も可能になった」とDX化の前提として必要なデジタル化の実現に寄与できたとアピールした。

 その他、前述した危険物検出の自動化や、免許証やマイナンバーなど顔写真付き本人確認書類と本人の顔を照合する顔認証の仕組みも利用可能。DX Suiteで文字読み取った名前や住所などの本人情報と突合することもできるという。

リアルタイム本人確認の事例

 発売は11月4日から。価格は月額3万円というハードウェア利用料に、利用するソフトウェア料金を合算したサブスクリプション制を採用した。従来、AI inside Cubeは大企業やBPO事業者ので導入が多かったが、より低廉な料金体系を採用するAI inside Cube miniでは中小企業での普及を狙う。クラウドサービスを自社運用することで高いコストパフォーマンスを実現できるほか、ユーザーデータをAI inside側で保持しないというポリシーを持つ点が大手プラットフォーマーに比べてのメリットとなる。渡久地氏は「もっと広くAIを広めたい。エッジコンピューティングのスタンダードを作りたい」とアピールする。

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