先進的アイデアをもつ若き起業家たちに聞いてみた

stonは嗜好品というより実用品「SandBox」菊地秋人CEO、西村風芽CTOインタビュー

文●牧野武文/編集 ASCII

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 今までになかった休憩体験が得られることで話題になっているston(ストン)。独自テクノロジーにより、カートリッジ内のリキッドを熱し、発生する蒸気からフレーバーを楽しむというもの。もうひと踏ん張りしたい時には爽やかなミントフレーバーでカフェイン配合の「POWER」、気分を落ち着かせたい時には心安らぐココナッツフレーバーでGABA配合の「CALM」。2種類のカートリッジを気分に合わせて交換して楽しめるのも魅力だ。現在は、起業家やビジネスマンはもちろん、パリコレのバックステージやカーレースのピット、eスポーツプレイヤーまで様々なプロフェッショナルの現場でstonは愛用されている。

 今回お話を伺ったのは、脳波解析データをマーケティングに活用するサービス「ノウミーリサーチ」を提供するスタートアップ企業「SandBox」の菊地秋人CEOと西村風芽CTOのお二方。

SandBox 代表取締役CEO
菊地秋人

 菊地さんは、大学在学中にプロゲーマーとして活動していた経歴を持ち、自身のパフォーマンス維持を課題とした研究を日々行っていた。パフォーマンスを数値化・可視化し、管理する方法を模索していくうちにたどり着いたのが生体情報、すなわち心拍数や脳波の分析だ。はじめは自身のパフォーマンス管理を目的としていた脳波研究を続けるうち、脳の持つ可能性に魅せられ、有志と共にSandBoxを起業するに至った。現在は、同社CEOとして、経営戦略から営業、人事採用など、開発以外の全般を手掛け、忙しい日々を送っている。

SandBox 取締役CTO
西村風芽

 一方、西村さんは、菊地さんが自身の研究成果として外部発信していたブロマガを通じ、同好の士としてそのコミュニティに参加。菊地氏の起業を知り、地元・沖縄を離れて東京の菊地氏と合流する決断をするという行動力の持ち主。創業以来、同社の開発責任者として活躍している。CTOといっても、テクノロジー周りのことはすべてやらなければならない立場で、ときには睡眠時間を削るほどの激務になっているという。

 そんなハードワークをこなすお二人が、stonをどう利用しているのか。詳しく伺ってみよう。

脳波測定マーケティングは従来のマーケティングとどこが違う?

──SandBoxはどのような事業をされているのでしょうか?

西村:脳波を計測して、マーケティングなどの産業応用につなげようとしているスタートアップ企業です。具体的には、企業などからCMなどの評価調査を依頼されて、被験者の方に脳波測定器をつけていただき、コンテンツを見てもらい、その時の脳波を計測、解析します。依頼内容によりますが、CM内容の理解度であったり、興味をもっている部分、あるいはストレスを感じる部分、集中している部分を特定して、改善につなげていただきます。

 依頼をされたら、どういう軸で何を評価するのかを決め、被験者を集めて脳波を計測し、アンケート調査を行い、依頼企業が明らかにしたいことを分析していくという仕事です。

オンライン脳波測定のサンプル動画より。青が注意を反映した脳波成分で、橙が興味を反映した脳波成分

菊地:従来のアンケート方式やインタビュー方式といったリサーチでは、被験者の方の忖度や無意識、あるいは嘘など、不要なノイズが混じることがあります。「モニター代を貰っているのだから褒めないと呼ばれなくなってしまう」「多数の項目に答えるのは面倒だから適当に回答してしまおう」といったようなものですね。こうした結果の歪みを無くすには心理や統計の専門家のアドバイスが必要ですが、多くの現場で一般の社員が担当しているのが現状です。しかし、脳波であれば、こうした歪みを分かりやすくビジュアライズでき、なおかつバイアスを少なくできるのが大きなメリットです。脳波分析を用いることで、より正しく被験者の「心」や「感性」を評価できるマーケティングサービスを提供しています。

 具体的には、TVCMや音声広告、ポスターなどが消費者に与える印象を定量評価するマーケティング評価、プロトタイプ製品が想定顧客に与える印象の比較、採用活動のために作成された動画の印象評価といった活用シーンがあります。

 今はCMなど動画の反応調査を手掛けることが多いですが、今後はゲーム開発や、UI、UXといったヒューマンインターフェースの開発、あるいはイベントの体験などの振り返りにも応用できると考えています。

ヒートマップ動画のサンプルより。被験者で視線測定を行う事無く、動画や画像のそれぞれの部分がどれほど人の視線を惹きつけるかを計測可能

──脳波を測定することで、コンテンツの好感度などのようなものも分析できるのですか?

西村:好感度などはまだ研究が進んでいないところがあって、未解明のところもあります。眠気などはかなり研究が進んでいる分野です。まだまだ脳のことはわからないところも多いんです。

 なので、基礎研究とまではいきませんが、開発をする時、調査計画を立案する時は、基礎研究に近い領域まで踏み込んで作業をする必要が出てきます。その中で、私たちSandBoxは、実験プロトコルの設計や解析ソフトウェアの自動化などが進んでいて、私たちの強みになっています。

スタートアップベンチャーのCEOとCTO、それぞれの仕事

──その中で、お二人はそれぞれどのような業務をされているのでしょうか?

菊地:私は、経営戦略、営業、人事採用など、開発以外のほぼ全般が仕事ですね。

西村:私は開発をほぼ手掛けています。実質会社の構成は、まだ菊地CEOと私の2人で、その他、研究者、大学院生の方々にご協力していただいている形です。ですから、開発周りはほぼすべて私がしなければなりません。

──SandBoxでは、どういったものを開発されているのですか?

西村:例えば、脳波の解析ソフトウェアや、脳波のデノイズツールといったものです。脳波というのはものすごくノイズの多いデータなんです。微弱な電流を拾っているので、筋肉を動かすとすぐにノイズが乗ってしまう。解析する前に、こういうノイズを除去しなければなりません。あるいは脳波データを分解して、α波、β波などに分け、機械学習する仕組みなども開発しています。

 また、被験者の方には、自宅で脳波計測を行なっていただくこともあります。そのような場合は、一般の方でも使い方がわかりやすい測定ツールを開発する必要があります。

──脳波測定にも専用の機器を用意していたりするんですか?

菊地:測定器はオリジナルではなく、ヘッドセット型のような一般に使われてる機器を利用していますが、依頼された解析内容によって、複数のものを使い分けています。被験者の方に自宅で計測を行なってもらうこともありますので、そういった方の元に、分かりやすい、簡易的なものをお送りすることもあります。

──お二人は、元々脳波の専門知識をお持ちだったのですか?

菊地:私は大学生だったころにプロゲーマーとして活動していた時期があって、そのときに、自身のパフォーマンスを可視化できる手段がないか模索していたんですね。そこで行きついたのが脳波や心拍数といった生体情報だったんです。脳波を分析することでパフォーマンス管理ができないかと。その実現可能性を模索していたときに少し研究した程度で、専門家というわけではありません。

 ですが、SandBoxの事業には、その分野で著名な大学や研究機関の専門家チームが参加してくれていますので、そこが当社の強みにもなっています。

西村:私も、もともとはAI分野を専攻していて、脳研究については専門家というわけではありません。ですので、各種開発は、研究者や大学院生と協力しつつ、論文などにあたりながら進めています。

 新しいツールを開発をする時は、開発にかかる時間と同じくらい、新しいロジックについて学ぶということを毎回やっています。常に新しいことを学びながら開発するというのは、とても楽しいですね。

 一方で、問題なのは、新しいことなので正確に工数が見積もれないことです。でも、ビジネスとして開発をしているのでスケジュールは求められる。頑張っているのに間に合わないというのがストレスになります。

 結局、睡眠時間を削ることで間に合わせるしかなく、体力的にもつらいですし、気分が落ち込むことがあります。

stonは嗜好品というより実用品

──なかなかハードなお仕事のようですが、仕事中の”ひと休み”はどのようにされていますか?

菊地:仮眠をとる、散歩する、動画を観ながらストレッチする、といった感じでしょうか。

 嗜好品の類だと、プロゲーマーをしていたころは、気合いを入れるのと糖分補給にエナジードリンクを飲んだりしていましたが、今は1日1杯程度、コーヒーを飲むくらいですね。

菊地秋人CEO(※オンラインインタビューのため、一部画像が粗い箇所があります。)

西村:私は、短い隙間時間に筋トレをしています。器具を使うのではなく自重で、腕立てとかスクワットですね。席を立って、すぐ脇のスペースで短時間行います。

 開発が佳境に入って長時間の作業になってくると、エナジードリンクとチョコ、緑茶は必ず用意します。

 ずっと考え続ける作業をしていると、思考が凝り固まってくるような感覚があるんです。その時に、何かを食べたり飲んだりすると、思考の凝りがほぐれているような気がします。成分というよりも、味や香りを感じることで、うまく思考が散らされるのではないかと思います。

西村風芽CTO

──そのような気分転換にstonは適していると思いますか?

西村:すごくいいと思います。フレーバーの刺激と、口に吸口をくわえるという刺激がうまく作用しているのではないでしょうか。私の場合、フレーバーが気に入って「POWER」の方を使っています。ミントフレーバーの刺激が私には合っているようです。

菊地:stonは、私にとっては嗜好品というより実用寄りのガジェットですね。コダワリ要素が強くて、利用する過程が楽しい。ミニマルなデザインで余計な要素がまったくない。つい手に持って触っていたくなる。色は、他の色は身近に置いておくにはちょっと刺激が強いかなと思って「月白」を愛用していますが、これも落ち着きがあって非常にいいですね。

 フレーバーに関しては、私も「POWER」を愛用していますが、私はもっとミントが強くても良かったかな。鼻から抜ける感じが欲しい。

──stonを利用するのは休憩中ですか? 作業をしながらですか?

菊地:私は仕事を一区切りしたいときに吸ってます。いわゆるコーヒーブレイク的な使い方ですね。でも、コーヒーのようにわざわざ淹れる必要がなく、手軽に使えるので、時短になってます。

西村:私は作業をしながら使います。実は、私はシーシャ(水タバコ)が好きでして、月に1、2回はシーシャの専門店に行って、そこで水タバコを吸いながら作業をすることがあるんです。これもジャムのフレーバーがあって、味、香りを楽しむことができます。中東発祥の文化なので、専門店もそれに合わせた空間にしていたり、カフェっぽくしていたりして、居心地がいいんですね。そういう時間がリフレッシュになっています。

 私にとって、stonは手軽に利用できる感覚があって、味と香りを楽しんでいます。考えたら、エナジードリンクや緑茶も味の刺激を楽しんでいるのだと思います。

周りに迷惑を掛けないならstonでもなんでもあり!
そうして企業カルチャーが育っていく

──stonを周りの方にも薦めたいと思いますか?

菊地:もともと私が先に使いはじめたのですが、西村が興味をもってくれたので、彼のエバンジェリストは私です(笑)。

西村:私の周辺にはシーシャが好きな方が多いんです。でも、自宅で楽しむには時間に余裕がある時でないとできない。手間をかけずに手軽にフレーバーを楽しめるアイテムとして薦めたいですね。なので、フレーバーの種類がもっといろいろあるとより薦めやすくなるなと思いました。

菊地:特にエンジニア層はLIFEHACK系のものが好きですからね。仕事のサポートになるものならドンドン取り入れたいって人は多いんじゃないでしょうか。

西村:私の個人的な考えでは、stonをオフィスで利用するのもありなんじゃないかと思ってます。今はコロナ禍でリモートワークが主体ですが、終息をしたらオフィスか、そうでなくてもどこか別の場所でエンジニアが集まって仕事ができるようにしたい。スタートアップは作るべきものがコロコロ変わっていきます。仕様変更や設計の見直しが頻繁に起きます。なので、話し合いをしながら開発を進めていくというのが理想的なんです。

 そこでは他のメンバーに迷惑をかけないなら、stonはもとより、チョコでもエナジードリンクでも各自が好きなものを用意すればいいと思います。仕事がいちばん大切なので、仕事のサポートになるのであれば、なんでもありです。

 色々な商品があり、我々はスタートアップなのですから、いろいろ試してみることが必要だと思います。

 ですからシーシャですらもOKだと思ってるんですが、煙が出るので、他のメンバーが気になるようであればやめる。そうやって、チームのカルチャーのようなものができあがっていくのだと思っています。

今の時代だからこそ求められる休息体験を提供するston

 stonを利用すると、脳波はどう反応するのだろう──そんな気にもさせるインタビューだった。

 脳波を用いたマーケティング手法はかなり斬新なアイデアだ。実際、2020年2月には、品川ビジネスクラブ「第10回ビジネス創造コンテスト」で、応募総数304件のスタートアップの中から、ソニーよりSSAP(Sony Startup Acceleration Program)賞を受賞している。

 こうした先進的アイデアを持つ若い起業家たちにも支持されるstonは、ある意味、時代に即したガジェットなのだと改めて思う。

 今回のお二人の話しを聞いてみても、休息に対するスタンスは人それぞれだ。「ひと休みをアップデートする」というstonのコンセプトもまた、脳波研究と同じく、未知なる領域へのチャレンジと言えるのかもしれない。お茶やコーヒーといった嗜好品が、長い年月をかけて人々の「ひと休み」に貢献する存在になったように、stonもまた、今の時代だからこそ求められる休息体験を提供できるガジェットとして受け入れられていくだろう。

(提供:BREATHER)

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