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新年度経営方針と2024年までの中期経営戦略を説明、IT人材育成や「インソース化」支援も強化へ

日本MS吉田社長、日本全体のDX推進に向けた「MS自身のDX」を語る

2020年10月12日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 「デジタルトランスフォーメーションといえばマイクロソフト、マイクロソフトといえばデジタルトランスフォーメーションと、そう思っていただけるようになりたい」

 日本マイクロソフト(日本MS)は2020年10月7日、2024年までの中期経営計画、および7月からスタートした2021年度(FY21、2020年7月~2021年6月期)の経営方針に関する記者説明会を開催した。社長就任から1年が経過した吉田仁志氏は上述のとおりコメントし、日本の政府・自治体や民間企業、教育現場におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進を、同社自身の実践経験もふまえながら「顧客と同じ目線で、顧客に寄り添って」支援していく姿勢を強調した。

日本マイクロソフト 代表取締役 社長の吉田仁志氏。昨年10月の就任から丸1年が経過した

世界最大規模のDXを実践してきたマイクロソフト、それでもまだ「道半ば」

 所信表明として吉田氏が掲げた言葉は2つ。「お客様に寄り添うマイクロソフト」、そして冒頭に触れた「マイクロソフト=デジタルトランスフォーメーション」である。これらは昨年の社長就任以来、吉田氏が繰り返し述べてきた言葉だ。

社長就任後、吉田氏は「お客様に寄り添うマイクロソフト」「マイクロソフト=デジタルトランスフォーメーション」という言葉を繰り返してきた

 DXとは本来、単なる「業務のデジタル化」による効率化や生産性向上にとどまらず、企業やビジネスの「モデルそのもののを変えること」を指す言葉である。吉田氏はその点を指摘したうえで、マイクロソフトほど大規模な企業において、真の意味でのDXを実践してきた事例は数少ないのではないかと語る。つまり「マイクロソフト=デジタルトランスフォーメーション」という言葉には、“顧客のDXを支援するマイクロソフト”である以前に“DXの実践主体としてのマイクロソフト”という意味が込められている。

 「(DXを通じて)マイクロソフトはどう変わったのか。従来のライセンス販売モデルからサブスクリプションモデルへと、ビジネスモデルを大きく変革した。つまり『売る』という行為から『買っていただく』『使っていただく』行為に変わった。そのためには顧客の課題解決に貢献しなければならず、商品だけでなく自分たちの考え方そのものを変える必要があった」

 具体的には、日本マイクロソフトとしての企業ミッションから再考し、それに基づいて顧客との接し方、営業戦略、人事評価、マーケティングの方向性と、あらゆるものを変えなければならなかったと振り返る。

 その一方で吉田氏は、こうした取り組みもまだ「道半ば」であり、社内改革を進めるうえでは「たくさんの失敗もしてきた」と率直に明かす。しかし、だからこそ、顧客と同じ目線に立って顧客を理解し、自らの経験や失敗も共有しながらより良くサポートする「お客様に寄り添うマイクロソフト」が実現できる、それが独自の企業価値になると説明する。

 コロナ禍がもたらした大きなインパクトによって、日本社会においてもDXの必要性が急速に認識され、各方面でDXの取り組みは加速しつつある。吉田氏はそう述べたうえで、ただし「一方で、コロナ禍によって日本のITの弱さ、いかに日本が『IT後進国』かという事実も露呈した」と指摘する。企業ビジネスにとどまらず「日本全体に」DXが必要であることを訴え、日本マイクロソフトもそうした社会変革の支援に取り組むと強調した。

2024年までの中期経営戦略、AWSとのクラウドビジネス戦略の違い

 2024年までの中期経営戦略として、吉田氏はまず「日本マイクロソフトはビジネスの成功だけを目指すのではない」と断言した。コロナ禍を受け今後長引くことが予想される経済停滞とそこからの再生に向けて、重点分野での取り組みを通じて経済や社会の活性化に貢献したいと述べる。

 重点分野としてまず取り上げたのが、政府・自治体におけるDXの推進である。具体的には「デジタル庁の構想をきっかけとして、クラウドによるデジタルガバメントの実現に貢献する」と述べる。行政業務のデジタル化、行政データの一元化を実現する基盤の構築、さらに行政を横断するシームレスなコミュニケーションの確立といったものを、クラウド化の促進を通して実現したいと話す。

重点分野としてまず取り上げたのが政府・自治体におけるDX推進の支援

 ただし、政府・自治体向けのパブリッククラウド市場においては、競合であるAmazon Web Services(AWS)が先行しているのが実情だ。この市場での競合との戦い方について記者から質問された吉田氏は、パブリックセクターに限らず「『DXのソリューションとして』クラウドを提供する。このストーリーはマイクロソフトしかできないと考えている」と答えた。

 「エッジからクラウドまで、IaaSからSaaSまで、マイクロソフトは広範囲で(DXを支援する)ソリューションを提供できる」「われわれの顧客への貢献の仕方は、単にオンプレミスのシステムをクラウド化するというのではなく、『働き方を効率化する』『ビジネスモデルを変える』といった次のステップに行く支援をすること。その中でのクラウド(という位置づけ)である」

 さらに、前述したような“改革の痛み”も自ら経験しているほか、「テクノロジーの会社であるわれわれが、『テクノロジーは最後でもよかったよね』というラーニング(学び)も持っている」。あくまでも目的は「顧客のDX実現を支援すること」であり、クラウド活用はその一手段であること、その意味では競合のAWSとは同じ戦い方ではないと説明した。

 ちなみに、前述した「サブスクリプションモデルへのビジネス転換」は当然、パブリッククラウドサービスの売上拡大と軌を一にするものだ。吉田氏は、日本マイクロソフトにおいては「コマーシャルビジネス(法人向けビジネス)全体のほぼ半分を、クラウドサービスが占めるところまで来た」と説明した。「パブリッククラウドNo.1を目指す」という目標も堅持している。

 民間企業/産業分野でのDX推進については、特に「コロナの影響が大きい産業分野をなんとか盛り上げたい」と語る。具体的には物流、製造業、小売業といった産業を挙げた。さらに別の角度から、「中堅中小企業におけるDXも非常に重要だ」と語る。中堅中小企業分野では、まず事業継続を図るためのリモート環境整備を支援すると述べ、ワークショップやトレーニング、低価格なサブスクリプションを提供していく方針を明らかにした。

運輸業のヤマトホールディングス、製造業の日立製作所、小売業のローソンやファミリーマートといった、AzureやDynamics 365、Hololens 2などを活用したDX先行事例も紹介した

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