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末岡洋子の海外モバイルビジネス最新情勢 第258回

苦境のファーウェイ、独自OS「HarmonyOS 2」搭載スマホは2021年末に登場へ

2020年09月27日 12時00分更新

文● 末岡洋子 編集● ASCII

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 ファーウェイが開発を進める、自社OS「Harmony OS」の計画が明らかになってきた。同社が9月10日に中国で開催した「Huawei Developer Conference 2020」(HDC)で、端末事業トップのRichard Yu氏は最新となる「HarmonyOS 2」を発表、同OSを搭載したスマートフォンは2021年末に登場するという。

Huawei Developer Conference 2020の模様は、ファーウェイのサイト上で英語吹替付きで見ることが可能

年内にも中国の開発者向けに
モバイル端末向けのベータ版を公開

 ファーウェイが「Harmony OS」を発表したのは1年前の同じイベントのこと。当時のRichard Yu氏は、スマートTV、ウェアラブルなどの組み込みからスマートフォンなど、「”すべて”のシナリオ体験をカバーするOSが必要」としていたが、最終的な狙いがスマートフォンであることは、米国との関係を考えると明らかだった。

 今年のHDCでファーウェイは最新となる「HarmonyOS 2.0」を発表、OpenAtom Foundation(開放原子開源基金会)という中国ベースの基金に寄贈することで、正式にオープンソースプロジェクトとなった。このOpenAtom Foundationだが(https://www.openatom.org/)、2020年6月に登録されたばかりで、中国初のグローバルな非営利団体とうたっている。ウェブサイトには「TencentOS Tiny」「AliOS Things」などもインキュベーションプロジェクトとして並んでいる。

 ファーウェイによると、2020年内に中国の開発者向けに、モバイル向けHarmonyOSのベータ版を公開するとのこと。まずは128KB~128MBのIoTデバイス(スマートTV、ウェアラブル、自動車など、とのこと)に公開し、2021年4月には128MB~4GBのデバイス向けに、同年10月には4GB以上のデバイス向けにオープンにするという。

 HarmonyOSを搭載したファーウェイ製スマートフォンは2021年末に発表するという。

GMS代替のHMSは「世界第3のモバイルアプリエコシステム」

 ファーウェイはAndroidを活用して現在の地位(2020年第2四半期にスマートフォンで世界シェアトップに)を築いた。そのファーウェイが独自OSを開発する理由は、米国との関係以外にない。ファーウェイは2019年に米政府によってエンティティリストに入ったことで、Googleの「Google Mobile Services(GMS)」の新規ライセンスが得られなくなった。GMSはアプリストアのGoogle Play、地図のGoogleマップなどのGoogleサービスとAPIを含むソフトウェアバンドルである。GMSがなくてもオープンソースとしてのAndroidを使ってスマートフォン自体は作成できるが、Googleアプリが入っていないと訴求力が落ちる。

 ファーウェイが対策として開発したのが、「Huawei Mobile Services(HMS)」だ。ファーウェイによるとHMSはすでに世界3番目のモバイルアプリエコシステムに成長しているとのこと。7億人のファーウェイデバイスユーザーがおり、アクティブユーザーの数は4億9000万人以上。2020年1~8月のアプリのダウンロード・配布の累計は2610億と発表している。

 HMS Core 5.0では、オープン機能は14から56に増え、API数は885から14倍以上の1万2981になるという。グローバルには160万人の開発が登録しているそうだ。HMS Coreに統合済みのアプリは9万6000。これは5月の6万アプリ/開発者140万人からの増加となる。

 もっともファーウェイの願いはあくまでもGoogleのエコシステムのはずだ。2月のスペイン・バルセロナでのオンライン発表会において、Yu氏はステージ上ではHMSのメリットを強調したつつも、日本の記者の取材に応じた際には「GMSのライセンスが得られることを望んでいる」と語っていた。HarmonyOSをスマートフォンに搭載する計画についてはこれを認め、2020年の後半に最終的な決断を下すとしていた。HDCでの発表は、その決断の一部と言えるだろう。

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