このページの本文へ

10月末までに正式リリース、Kubernetes統合の“サーバ仮想化+コンテナ環境”を本格的に推進へ

VMwareのコンテナ市場攻略でカギとなる「vSphere with Tanzu」とは

2020年09月24日 11時00分更新

文● 平井健 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 VMwareは2020年9月15日(米国時間)、新製品の「VMware vSphere with Tanzu(以下、vSphere with Tanzu)」を、10月末までに正式リリースすると発表した。同社はこのvSphere with Tanzuと、発表済みの「VMware Cloud Foundation with Tanzu(以下、Cloud Foundation with Tanzu)」を通じ、サーバ仮想化とコンテナ環境を統合したITインフラ環境を本格的に推進する。

 「Tanzu」はVMwareによるKubernetes関連製品群の総称だ。Kubernetesを使ったコンテナ基盤に加え、運用支援ツールや開発ツールを用意している。誤解されがちだが、VMwareはTanzuをサーバ仮想化環境との組み合わせでしか提供しないわけではなく、単体でも販売していく。その意味では、Red HatやSUSEをはじめとした、Kubernetesベースのコンテナ基盤提供企業と直接競合することになる。

 だが、VMwareの最大の強みはやはり、サーバ仮想化市場における圧倒的なマーケットシェア、そしてこれを通じて構築した一般企業のCIOやITインフラ担当部署との関係にある。そこで同社は、まずCloud Foundation with Tanzuを提供開始し、さらに今回、vSphere with Tanzuを発表した。

 ご存じの読者も多いだろうが、vSphereはVMwareのサーバ仮想化基盤製品の名称で、Cloud Foundationはこれにストレージ機能の「VMware vSAN」やネットワーク仮想化機能の「VMware NSX」などを統合したITインフラ基盤の名称だ。「with Tanzu」というのはvSphereあるいはCloud FoundationにKubernetes関連製品群を統合し、即座に使えるようにした「バンドル製品」を意味する。

 バンドル製品というと、“お得な人気のお菓子詰め合わせ”のようにしか響かないかもしれない。だが、VMwareの「with Tanzu」は2つの点でこれとは異なる。

 まず、コンテナを採用しようとする一般企業の(特にITインフラ)担当者にとって重要な問題は、コンテナ環境が開発チームにとってのITインフラとして将来ますます重要な存在になっていくことがわかっていても、いつ、どれだけ投資していいかわからないことにある。パブリッククラウドのマネージドサービスを使うならば従量課金で利用できるが、オンプレミスではサーバ機を別途調達し、さらにサポートが必要であれば、コンテナ基盤ソフトウェアのライセンスを購入してコンテナ専用の基盤を構築しなければならない。これではコンテナへの投資に対して慎重にならざるを得ない。

 VMwareは、「サーバ仮想化基盤とコンテナ基盤を単一の物理インフラ上に展開できることで、投資効率が大幅に向上する」と訴える。コンテナによってサーバ仮想化レイヤーが不要になると主張する人もいるが、実際にはパブリッククラウドのコンテナサービスも、ユーザーが意識するかどうかは別としてサーバ仮想化レイヤーを挟んでいる。そうでないと、物理サーバリソースの柔軟で効率的な利用が困難だからだ。

 その上で、vSphere with TanzuとCloud Foundation with Tanzuでは、従来のITインフラ担当部署とソフトウェア開発チームおよびこうしたチームを支援するアプリケーション基盤担当者が役割分担できるようになっている。ITインフラ担当部署は、Kubernetesの「クラスタ」と呼ばれる最大の管理単位を構築し、これにサーバやストレージなどの物理ITリソースや仮想ネットワークを割り当てて運用管理ができる。この際、ITインフラ運用担当者が使い慣れたvSphereの管理コンソールを使える。その上で、このクラスタからKubernetesの「サブクラスタ」とも呼べる「ネームスペース」という管理単位を作り、個々の開発チームに渡すことができる。開発チーム側は、割り当てられたネームスペースを自分たちで完全に制御できる。

vSphere with Tanzu、Cloud Foundation with Tanzuでは、ITインフラ運用担当者と開発者の役割分担が明確にできる

 既に発表済みのCloud Foundation with Tanzuでは、TanzuのベースとなるITインフラ基盤がVMware Cloud Foundation(VCF)であるため、基本的なITインフラ要素はvSphere、vSAN、NSXでそろえることになる。こうしたハイパーコンバージドインフラ(HCI)は、柔軟性や拡張性、管理性でメリットが大きい。だが、一般企業にはストレージに専用装置を採用した環境も多数存在する。

 vSphere with Tanzuは、こうした既存のサーバ仮想化環境にも、Kubernetesによるコンテナ環境を比較的容易に付加することができる。VMwareがコンテナ環境を売り込むことのできる潜在的な市場の規模は大きい。同社はvSphere with Tanzuの発表プレスリリースで、グローバルの数十万におよぶvSphere顧客、7000万以上のワークロードが対象になると述べている。

■関連サイト

カテゴリートップへ

  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード