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部下から慕われる上司が実践している「2.5人称」の話し方とは

2020年09月23日 06時00分更新

文● 渡部 卓(ダイヤモンド・オンライン

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一緒に同じ方向(目標)を向いて部下を導いたり、仕事に取り組んだり、問題を解決していく。そんなイメージで部下と向き合うことが大切(写真はイメージです) Photo:PIXTA

近年、「自分の意見をハッキリ言えない」「ちょっと注意をしただけで、すぐに心が折れる」といった繊細な若手社員が増えています。さらに、新型コロナ禍でオンライン会議、リモートワークなど働き方が変化したことで、ステレオタイプな上司と繊細な部下の溝はますます深くなっているといいます。この先、ウィズコロナに対応した新時代の職場のコミュニケーションをあらためて見直す必要性があるでしょう。そこで前回に続き今回は、産業カウンセラー・渡部卓氏の新刊『あなたの職場の繊細くんと残念な上司』(青春出版社)から、新時代の若手の力を引き出すコミュニケーション方法を紹介します。

できる上司は部下に「2.5人称」で話す

 前回、若い世代における価値観、メンタル、仲間意識などの潮流が変わってきたことを解説してきました。そしていま、ウィズコロナによって職場での新しい関係性が求められています。

 当然、ビジネスにおいて、若手社員を導くリーダーシップも以前とは変わる必要があります。従来は会社で働くビジネスパーソンの仕事観やキャリア観はほぼ一元的なものでした。高い愛社精神を抱き、上司に従って、出世の道を目指す。全国のビジネスパーソンが大なり小なり、同じような価値観で仕事に取り組んでいたのです。

 しかし、いまや生活様式、家族観、人生観などが多様に混ざり合って、働く人間それぞれの個性となっています。一律に「いまは我慢して仕事第一で取り組め」などと叱咤激励しても若いビジネスパーソンはついてきません。働く部下のワークライフバランスを理解し、彼らと価値観や倫理観なども含めたコミュニケーションが取れる、総合的“人間力”が求められる時代なのです。

 そのうえ、いまの管理職は部下の管理だけをしていればいいわけではありません。プレーイングマネージャーとして、自分自身も担当を持たされて成果を出さなければならない人がほとんどです。

 さらに、個々の部下の事情を酌み取ってマネジメントもする必要がある。オールラウンドの気配り、目配りまで課せられているわけです。たしかに大変な状況です。ですので、コミュニケーションの構築ではすべてを一気にやろうとするのではなく、できることから対応していくことが必要です。

 では、まずは何から始めるか。私は、管理職研修会などで「2.5人称で部下と接することから始めましょう」とアドバイスしています。この2.5人称というのは、ノンフィクション作家の柳田邦男氏が説いている言葉で、もともとは事故や事件、災害現場を取材する際の、被災者や弱者に対する距離感を示しているのですが、これは職場における人間関係にも通じる視点だと、私は考えています。

 たとえば、2人称であれば「You」です。対面して話をするイメージ、真っ正面から向き合うイメージです。これは彼らには息苦しい。「あなた、おまえ、キミ」という感覚になると、親身になって話を聞ける状況ですが、職場では距離が近すぎて、時に感情的になったり、冷静な判断ができなくなる危険性があります。若手社員からすると、完全にストレスです。

 かといって、三人称は「He、She、They」であり、「彼(彼女)、彼(彼女)たち」という距離感は、同じ職場で働く関係としては、あまりにも他人行儀で、共に力を合わせて目標に向かっていく関係としては、少しもの足りなく感じるでしょう。

 その中間である「2.5人称」の距離感にこそ、どちらにも心地よい関係性を維持できると私はアドバイスしています。

 イメージとしては、真正面から対面するのではなく、大声を上げないと届かない距離にいるのでもなく、「ベンチに腰かけて同じ方向を眺めながら話している」イメージでしょうか。感情的になりすぎず、かといって突き放した感じにもならず、一緒に同じ方向(目標)を向いて部下を導いたり、仕事に取り組んだり、問題を解決していく。そんなイメージで部下と向き合うことが大切なのです。

「不安を共有」できる上司ほど部下から信頼される

 例えば、部下に仕事の指示をするとき、「その件は前に指示しただろう」などと言っていませんか?これは上司がわりと言いがちな台詞ですが、若手社員に対しては避けたほうがいいでしょう。社会人なんだから、指示は1回で十分との思い込みは捨てたほうがいい時代です。若手社員には、何度も同じ話をしてかまいません。

 いえ、むしろ、何度も繰り返して指導するほうが効果的なのです。かく言う私も学生に対して、あまりクドクド言うのは逆効果だと思って、かつては1回話しただけで済ませていました。いまは違います。彼らは指示を1回聞いただけでは不安なのです。繰り返し確認して初めて、安心してくれるのです。

 その意味では、言葉足らずの上司が多くなっています。ましてや、納期に対する自分自身の不安を紛らわせるために、「間に合わなかったら、とんでもないことになる」「そんな暢気な仕事の進め方では、この先、生き残れないぞ」などと、彼らの心理的な不安をあおるような上司さえいます。これは決してやってはいけません。

 不安をあおることは、若手社員には逆効果にしかなりません。そんな不安な心理状態をさらに悪化させるような言い方は御法度です。頑張って業務を遂行しようとする気持ちより、不安への怯えが勝ってしまうからです。

 学生も新社会人も、以前は5月、6月頃に心が不安定になりました。いわゆる五月病、六月病です。しかし、2020年はコロナ禍で、6月頃までは緊張感が先に立って、うつや不安を凌駕し、なんとか学生や新人社員たちを持ち応えさせました。そのうち終息するだろう、もうちょっとの辛抱だ、との頑張りも効いたのです。ただ、コロナが長期化しつつあり、蓄積したストレスに心身はきしみや崩壊を見せ始めています。

 とにかく「大丈夫だよ。不安にならなくていいよ」とメンタル面でケアし続けることが上司や経営者には求められています。たとえば、在宅勤務をケース・バイ・ケースで柔軟に整備するなどです。そういった気持ちを酌み取る姿勢を持っている経営者も少なくはありません。そして、そういう会社は若手からの求心力を揺るがせていません。

 実際、私は毎年たくさんの企業研修や勉強会に参加していますが、「ワタナベさん、いまの若い人は大変だよね。我々の頃と違うからね」と共感し、不安を共有しようとする上司や経営者は、会社をうまくまとめています。必然、若手社員の離職問題に悩むという話も人事から聞こえてきません。

新入社員が部下になったら“2年待てる上司”になろう

 私は研修で、新入社員があなたの部下として配属されたら、2年間は辛抱強く見守ってほしいと伝えています。

 いまはすぐに結果を求めすぎる傾向がビジネスの世界ではあります。働き方改革なども、働かせ方改革になり、働く楽しさを無視して、生産性の向上目標を数字で性急に追求したりする企業が多いのです。

 私は20年近く大学教員として学生を見続けてきましたし、また300を超える企業や官庁、地方公共団体で新人や管理職研修の講師を実施してきました。以前に比べて、自分の意見をハッキリ主張したがらない学生や若手が増えていることは肌で感じています。でも、学生や若手社員の能力やモチベーションが落ちてきているとはまったく感じていません。

 それは経営者や管理職が見えていないだけです。だからこそ“2年待てる上司”であってほしいとアドバイスしています。3年目を過ぎた頃から、目の色が変わって、頼もしい戦力になる。私はそういう例をたくさん見てきているので、これだけは間違いありません。

 同世代のビジネスパーソンからすると、「若者を甘やかしてどうするんだ」と思うかもしれません。でも、そこは前向きに諦めることです。そこを短期間で強引に染め直そうとすれば、ストレスで離職の引き金になります。少し注意したら、翌日から出勤してこなくなったという事例は、日本だけでなく、中国やタイの大企業でも聞く話です。

 もちろん、いまでも、自分を成長させるために厳しい環境に身を置きたいという意識の高い若手は多くいます。とくにITベンチャーでは顕著です。彼らは新人であっても「この会社だと自分が成長できない」と感じたら、転職してしまいます。半年、少なくても1年で自分の成長を実感できなければ、さっさと見切りをつけます。

 もし、いまいる新人社員がそういうタイプではないのなら、“2年待てる”家康型の上司、あるいは成長を助けて“2年続けさせられる”秀吉型の上司であってほしいのです。

 これから本格化する変化と多様性の時代。全世代がお互いを理解し、共感し合いながら、新しい時代の働き方を味方につける必要があります。そのためには、まずは身近である職場の人間関係を一歩、歩み寄って縮めてみてはいかがでしょうか。

※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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