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キーワードは、電池寿命アップや端末コスト減、しがらみのない経済圏での広範なアライアンス

ビーコンインフラ本格化なるか 位置情報のプラットフォーム「Pinable」の可能性

2020年09月18日 10時30分更新

文● 松下典子 編集・聞き手●北島幹雄/ASCII STARTUP編集部

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 株式会社スイッチスマイルは、ビーコンを使った位置情報のプラットフォームを開発している会社だ。同社の目的は、ビーコンから得られるデータを消費者の行動・嗜好情報としてデータベース化し、マーケティングや新しいサービスとして活用すること。全国の鉄道会社や企業と提携し、全国約5万もの場所にビーコンを設置し、ビーコンのインフラ化に取り組んでいる。ビーコンインフラによって具体的に何が実現できるのか、株式会社スイッチスマイルの代表取締役 長橋 大蔵氏に伺った。

ビーコンインフラを構築してマーケティングやサービスへ活用

 ビーコンは、最小10センチ単位から100メートルほどの近距離の位置情報を取得できるのが特徴で、GPSやWi-Fiよりもピンポイントなマーケティングやターゲティング広告への活用が可能だ。最近は、スマホのBluetoothをオンにしている人の比率が上がったことから、ビーコンへの商用需要が増えてきている。

 株式会社スイッチスマイルの位置情報プラットフォーム「pinable」は、ビーコンから得られた情報をデータベース化し、広告や多言語情報の配信、クーポンやポイントとの連携、ナビゲーションなどさまざまなサービスに活用するための基盤だ。ビーコンインフラ「Open Beacon Network」の構築に向けて、鉄道や路線バスなどの交通インフラ、ドラッグストアやスーパーの店舗、観光スポットなど、全国約5万ヵ所に無償でビーコンを設置している。

 同社がビーコンを無償で設置する理由は、各所のビーコンをネットワーク化し、ビッグデータとして行動分析やマーケティングへと活用するためだ。

「既に多くの観光地やコンビニ店舗にはビーコンが付いていますが、なかなかマネタイズにつながっていません。なぜなら、個々の企業がデータを管理していており、データの統合や分析が難しいから。大手企業がやると、しがらみで特定の経済圏から出られない。だからこそ、僕らスタートアップがやることに意義があるのです」

株式会社スイッチスマイル 代表取締役 長橋 大蔵氏

 収集したデータをそのまま提供するのではなく、蓄積されたデータを分析して、より付加価値の高い情報として提供していくのが同社のビジネスだ。

 ビーコンから取得したデータには、約1万5千種類の共通の意味タグを付与してデータベース化される。例えば、特定店舗のドラッグストアのコスメとサプリの棚に異なるタグを付けておくことで、来店者が何に興味を持ったのか、行動体験をリアルタイムに取得できる。ビーコンの電池残量や電波強度からは、商品に近づいた距離や滞在時間の計測が可能だ。

 加えて、店舗のPOSデータ、ソーシャルID、気象データといった外部データとも連携し、より細かいセグメントでの行動分析・予測を行なえば、リアルタイムでの行動特性や興味に基づく費用対効果の高い広告配信へと活用できる。

 具体的な使い方としては、物産展などのイベントでスタンプラリーアプリを提供して、スタンプ地点のビーコンに接触すると、別のイベントの案内やお取り寄せのECサイトに誘導する、といったもの。1つのイベントでの売り上げに留まらず、次のアクションやファンの獲得へと広げられる。またアプリへの組み込みもSDKで簡易につなげられる仕組みを意識したという。

「DSPなどのデジタル広告にせよ屋外広告にせよ、その広告が本当に来店や売り上げにつながっているのかは、これまで見えていませんでした。広告主としては、より少ない配信で、よりマッチングした人たちに送るほうがいい。とくにコロナ禍では、来店の頻度が減っていますから、一度来店した顧客に対して何らかのアプローチの手段があるかどうかで勝敗が決まります」

 実際の導入事例として、鉄道のデジタルサイネージにビーコンを設置し、サイネージと同じ広告をスマホ側にも表示する仕組みを作ったところ、ほかの広告に比べてコンバージョン率が高くなったという。確かに、駅のホームや車内では、スマホをいじっており、壁面や車両内のサイネージはあまり見ることがない。乗客へアピールしたい広告は、スマホへ配信するほうが合理的だ。

ビーコンを設置するパートナー企業と広告収入をシェア

 同社がビーコンのプラットフォーム事業を始めたのは、6年前。当初は実証実験ばかりで、なかなか実用化が見えてこなかった。今はようやくインフラへの導入やアプリベンダーとの連携が進み、収益も上がり始めているそうだ。その理由として一番大きいのはビーコンの電池寿命が延びたこと。5、6年前は数ヵ月~1年ほどしかもたなかったのが、今は10年近く稼働する製品も出てきている。また端末コストも半額になり、導入・運用コストが下がっている。

 無償で設置するのはベンチャーにとって大きな負担だ。そこで、ビーコンを設置する鉄道会社や小売・流通事業者等とアライアンスを組み、将来的に得られる収益を分配する形を取っている。

「私たちは、ビーコンを付けてくれた場所をメディアとして捉えています。例えば、ネイルサロンの顧客層にアプローチをしたい企業はたくさんいます。ネイルサロンにビーコンを設置することで、ビーコン自体がメディアになり、来店した方へ広告配信することで、ネイルサロンの新しい収益になるわけです」

 当座の目標は、10万個のビーコン設置。さまざまな業界のパートナーと連携しながらビーコンの設置数を増やすとともにアプリ連携も進め、データ分析基盤としてのデータベースを構築することだ。

 6月には、eギフトプラットフォームを展開する株式会社ギフティと資本業務提携を締結し、pinableとeギフトプラットフォームを連携した「gifteeビーコン」を開始。eギフトを発行する小売店へのビーコンの無償配布し、設置店の来店者へのプッシュ型広告の配信、顧客の嗜好に合ったギフトの配信、さらにはeギフトを送った相手の行動追跡へと活用していく。

 将来は、このビーコンプラットフォームとAIやブロックチェーン技術を組み合わせて、来店予測や行動分析、地域通貨や個人情報の管理などへも展開していく計画だという。

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