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GUがコロナ禍でも「EC売り上げ約4倍」の成果を上げられた理由

2020年09月10日 06時00分更新

文● 大来 俊(ダイヤモンド・オンライン

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Photo:JIJI

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、店舗休業に追い込まれたアパレルは大打撃を受けた。だが、逆風下でSNSを駆使して顧客とのエンゲージメントを高め、商品によってはECの売り上げがコロナ前のおよそ4倍になるなど、成果を上げたのがGU(ジーユー)だ。今後も起こり得るパンデミックの中での有効な施策を聞いた。

大切なのは
生活者同士をつなげること

 アパレル業界は、コロナの影響で店舗の休業や営業時間短縮を余儀なくされ、厳しい局面に立たされた。そうした中、どのような施策を打つべきか逡巡していたメーカーも少なくないだろう。だが、GU(ジーユー)は違った。効果的な施策を次々と進め、コロナ禍においても生活者とのつながりを深めていたのだ。

 特に力を入れたのが、Instagramの活用だ。「GUの主な顧客層である20代~40代の女性がニュースや情報を得るメインの手段はInstagramなどのSNS。コロナ禍で家にいる時間が長くなり、不安や疑問も募る中、そうしたSNSを使って積極的に情報を取りにいく機会は、ファッション分野でもより増すと考えた」と、GUのマーケティングを担当する若山幹晴氏は話す。

 ただし、テレワークが一気に普及し、プライベートでも外出自粛、ステイホームを強いられる前代未聞の状況の中、生活者がどのような情報を求めているのかは、企業側にとって未知数だ。そこでGUが打った手が、当の生活者に直接、話を聞くこと。Instagramに「おうちコーデ(家の中での洋服のコーディネート )で気になることはありますか?」とアンケートを投稿し、回答を募ったのだ。すると、GUの公式アカウントを登録しているフォロワーから投稿が相次いだ。

 特に多かったのが「テレワークでどんな洋服を着たらいいか分からない」という意見だ。生活者(顧客)が欲しい情報が分かったので、GUから例えば、Web会議でも使いやすい服として楽に着ることができ、襟付きで首元がきれいに見えるシャツや、首元にワンポイントがあり、見た目が映えて好印象を持たれるシャツなどを提案。「こういったシャツが欲しかった」とコメントが寄せられ、評価を得た。

ヒアリングで
「身近」「親近感」「共感」を意識

 一方で、全く違うアプローチも試みた。フォロワーに向けて「皆さんはテレワークでどんな洋服を着ていますか?」と、逆に問いかけたのだ。結果、GUの商品によるコーディネートを撮影した画像が続々と投稿された。自社からの提案にとどまらず、ユーザーからの提案も募った理由を、「お客様が知りたいのは、自分たちと同じ生活者がどんな洋服を着ているのかということ。そうした情報は身近に感じて参考にしやすく、共感を得やすいから」と、若山氏は答える。

 また、投稿する生活者の中には、フォロワー数が数千~数万人など、有名人ほどは多くないものの、影響力を持つ“マイクロインフルエンサー”が少なくない。

「今や、トレンドの最先端はそうしたマイクロインフルエンサーをはじめとする生活者から発信されることが多い。芸能人のような遠い存在ではなく、言ってみれば“おしゃれだけど親近感のある存在”からの提案こそが、一般の方々には大きく響く」(若山氏)

生活者のGUコーデが投稿されるInstagramのアカウント(gu_for_all)のフォロワーは約118万人にも及ぶ(8月末時点)。コロナ禍では多くの投稿が寄せられた

 GUでは、さらにフォロワーに対し「おうちコーデ」を撮影した画像も募り、これにも、親子で同じルームウェア を着た“親子リンクコーデ”の写真、兄弟でペアルックのルームウェアを着用した写真など、数多くの投稿が寄せられた。こうして生活者発の情報発信を活性化させることによって、GUの商品への関心を高め、店舗に足を運べない状況下でもECの売り上げの伸長につなげた。例えば、子ども向けのルームウェアは前年比約4倍を記録するなど、成果も出たのだ。

「アンケートや問いかけなど、インタラクションを促す仕掛けをつくり、そのやり取りの中に時折GUも入らせていただく。そうやって顧客の方たちとGUが共存するエコシステムをいかにつくれるかが重要」(若山氏)

こうしたエコシステムがあれば、今回のコロナ禍のみならず、今後起こり得る他のパンデミックなど未曽有の状況が訪れても、生活者が求める情報を引き出し、企業から、あるいは生活者同士で提案し合うサイクルを回すことが可能になり、ブランドの存在価値を維持したり、より高めたりすることができるというわけだ。

EC急伸の決め手は
販売スタッフの投稿

 コロナ禍で、Instagramの活用に加え、GUが注力したもう一つの施策が、国内約400店舗で働く販売スタッフ自らがモデルになり、自社商品を使ったお勧めのスタイルをWebサイト上に画像で投稿する「GU STAFF STYLING(ジーユー スタッフ スタイリング)」だ。

 実は、GUの店舗で試着や購入をする際に、同じ背格好のスタッフの着こなしを観察し、自分に似合いそうかどうか、参考にする客は多い。そこで、昨年12月、1万人以上いるGUの販売スタッフの中からえりすぐりの約500人を選抜(現在は約1000人に増加)。各自が週1~2回、多いときで1週間に合計1000~2000件の着こなしが提案される大規模なスタイリングコンテンツをローンチさせたのだ。

GUの公式サイトにある「GU STAFF STYLING」。昨年12月にスタートし、今では計4万5000件以上の着こなし提案が載る一大コンテンツになっている

 通常、こうしたスタイリングはモデルを使った画像で提案するのが一般的だ。だが、一般の生活者にとっては、「手足がすらりと長いモデルだからきれいに着こなせる、自分には無理」と思ってしまいがちだ。その点、「GU STAFF STYLING」であれば、自分たちの体形に割と近い販売スタッフを見つけることができ、各自の身長も併せて記載されているため、着用したときのイメージがしやすい。

 このコンテンツが、コロナ禍で効果を発揮した。つまり、店舗に行く機会が減り、販売スタッフの着こなしを直にチェックすることができなくなる中、「GU STAFF STYLING」の投稿がその代役を果たし、ECでの購入促進につなげる仕掛けとしてうまく機能したのだ。結果、コロナ禍での店舗休業に伴い、リアル店舗の売り上げは減ったが、ECは逆に前年比で倍増と急伸した。

 投稿には「いいね」ボタンがあり、300近くの「いいね」を集め、投稿をきっかけにヒット商品になる場合もある。販売スタッフも今までは店舗に来る人にしか接客できなかったが、「GU STAFF STYLING」では全国の生活者に向けて提案が可能になり、「新たなモチベーションにもつながり、やりがいを感じて生き生きとしている」(若山氏)という。生活者、販売スタッフ双方にとってメリットが高く、両者をコネクトする(つなぐ)優れたコンテンツとなっているわけだ。

コロナ禍で新たに
「おうちファッション」が台頭

 インタラクションを徹底的に追求すると共に、生活者に近い存在からの情報発信や共有ができる仕組みづくりにも力を注ぐ――。こうした生活者同士をつなげたり、メーカー自らもつながろうとしたりする施策が、コロナ禍という誰もが経験したことがない未知の状況で、非常に奏功した。今後もそうした施策は、コロナなどの感染症と共存するニューノーマルな世界において、事業を継続し、成長させる原動力となりそうだ。

「Enjoy Style at Home」のコンテンツでは、部屋着やワンマイルウェアとして使えるパジャマの提案に注力

 一方、コロナによって開拓されたアパレルの新領域もある。それは、外出自粛下の家を中心とした生活で、洋服を楽しく着こなすための「おうちファッション」だ。GUでも今夏、Webサイトで「Enjoy Style at Home」と打ち出し、パジャマでありながら家の中だけでなく、近所のコンビニにも着ていけるワンピースタイプの“ワンマイルウェア”などを提案している。「家で過ごす際のファッションがクローズアップされたことはコロナ禍の大きな変化。今後、おうちファッションは定着し、アパレル業界の新たなカテゴリーになる可能性を秘めている」(若山氏)。

 アパレル業界は、レナウンが倒産し、ワールドは今年度中に国内の358店舗を閉店する発表を行うなど、コロナによる影響が甚大だ。GUの取り組みは、こうした厳しい状況下で行うべき一つの方向性を示している。また、これは何もアパレル業界に限ったことではなく、BtoCのビジネスを展開している企業にとっては、良い手本になるともいえるだろう。

(大来 俊/5時から作家塾(R))

※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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