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さいたま市教育委員会 教育長 細田眞由美氏にインタビュー

GIGAスクール構想 民間ICT人材を教育に生かす「さいたま市モデル」

2020年09月02日 09時00分更新

文● 相川いずみ 編集●ASCII STARTUP

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 2020年7月8日、埼玉県さいたま市は「GIGAスクール構想」を実施するためのIT・ICT人材として、転職サービス「ビズリーチ」を使って一般から公募した。文部科学省による「GIGAスクール構想」は、全国の小中学校の児童生徒に「一人一台」の学習用コンピュータのほか、学校に高速大容量の通信ネットワークを整備し、学びのICT環境を整える教育改革プロジェクトだ。当初の予定では2023年までに「一人一台」環境を整える計画となっていたが、コロナ禍による臨時休校で、子どもたちの学びを止めないための早急な環境整備が全国で必要とされ、現在は急ピッチで導入が進められている。

 諸外国と比較してICT教育後進国といわれる日本において、このGIGAスクール構想をうまく生かすことは大きな課題のひとつとなっている。GIGAスクール構想については文部科学省からガイドラインが明示されているものの、具体的にどんな端末を使ってICT環境を学校の学びにどのように生かしていくかは各自治体や学校に委ねられている。そんななか、さいたま市では自治体としては初となる、教育現場の外からデジタルトランスフォーメーション(DX)人材を募ったことで話題になった。さいたま市では、市の特長である「スポーツ」をふくめたSTEAMS教育を実践しているほか、コロナ禍の休校時にはウェブ学習コンテンツ「スタディエッセンス」を全家庭に向けて配信を行うなど、ICTを活用した独自の取り組みを進めている。

 今回、さいたま市教育委員会の教育長である細田眞由美氏に、さいたま市の教育ビジョンからGIGAスクール構想への取り組み、さらに今後の展開までをお聞きした。

さいたま市教育委員会の教育長である細田眞由美氏。2017年より、さいたま市初の女性教育長に就任(現在二期目)した

「さいたま市GIGAスクール構想プロジェクトチーム」を発足

――さいたま市の教育の取り組み、特にGIGAスクール構想についてお話をうかがいたいと思います。さいたま市はとても人口が多いですが、この規模でGIGAスクール構想を進めていくのは大変ではないでしょうか。

細田氏(以下、敬称略):はい。さいたま市の人口は120万人を超えています。学校が小中高特別支援中等教育まで合わせて168校、児童生徒は約10万3000人。学校職員も6600人ほどいます。とても大きな自治体で、教育委員会も大所帯です。

 実は、GIGAスクール構想については、もともと2023年までに「一人一台」ということでしたので、もう少し時間をかけて大きな学びの展開をしていこうと考えていましたが、コロナ禍により、「明日からやりましょう」ということになってしまいました。これまで各校に数10台だったタブレットが、年度末には800~1000台導入されることになるので、教育委員会も学校もとにかく頑張っていかなければ思っています。

――現在のさいたま市のICT環境の整備状況や、GIGAスクール構想の準備はいかがでしょうか。

細田:学校現場には、9月に約2万台のタブレットが導入されます。児童生徒が10万人超ですので、年度末までに残りの8万台以上を整備する必要があります。 予算については、国の補正予算の補助で2/3を使わせていただき、残りの自治体からの3分の1については6月の定例議会で認可され、確保することができました。各学校に一気にタブレットを用意することは可能ですが、実は「インフラ整備やタブレットがそろえばGIGAスクール構想が何とかなるわけではない」のです。

 私たちは、「さいたま市GIGAスクール構想プロジェクトチーム」を発足して、GIGAスクール構想を実現していくためには、どんなことを考えなければいけないのかを細かく洗い出しました。すると、洗い出せば洗い出すほど大変だということがわかりました。ぼーっとしていたら、「学校の中にタブレットはいっぱい溢れたけれど、どうしたらいいの?」という事態になってしまうと感じました。

――先にICT機器ありきで学校に導入してしまって、結局ほとんど使われないという例もありますね。

細田:プロジェクトチームで考えている中で、「私たちは“教育のプロフェッショナル”ではあるけれども、ITやICTを整えていくスペシャリストではない」ということに、はたと気づきました。当たり前と言えば当たり前なのですが、IT・ICTのスペシャリストが、チームの中にいないことに気づいたわけです。

 そこでどうしようかと思っていたところに、ITやICTの専門家を教育の中に取り込んでいく方法があることを教えていただき、そういった専門家の方に「さいたま市GIGAスクール構想プロジェクトチーム」が一員となる、さいたま市らしいGIGAスクール構想を青写真から一緒に書いていきたいと考えました。

 スキルの高いプロフェッショナルの人材がたくさん登録されており、しかも兼業副業という形でならプロフェッショナルの技量を教育行政に貸していただけるシステムがあることをお聞きしました。GIGAスクール構想の実現で、学校の学びは大きく変わります。この歴史的転換点に立った時に、教育のプロではあるが、そこから先の発想がなかなかできない私たちに、まったく違う視点でGIGAスクール構想を実現するための画期的なアドバイスをいただけるのでは……という期待感でいっぱいです。

セキュリティやデジタルコンテンツの専門家など4種

――ITやICTのプロフェッショナルというのは、具体的にはどんな方を募集されるのでしょうか。

細田:私たちはそのあたりの知見もまったくないので、どのような求人をすればよいのか、プロジェクトチームで一緒に青写真を描いてくださるには、どういうスキルを持つ方を求めていったらいいのかなどを、ビズリーチさんに色々とアドバイスをしていただき、結果として4人のスペシャリストを求人しています。

 1人は、さいたま市らしいGIGAスクール構想のプロジェクトをきちんと動かしていくための青写真を描いていただくようなPM、それから大量のインフラを短時間で整えていかなければいけないので、そのインフラを整備するためのアドバイザーです。また、一気に10万台以上のタブレットと高速大容量LANが導入されるにあたり、セキュリティについて専門的なアドバイスをしてくださる方、そしてもう一人は、私たちは教育の専門家ですがデジタルコンテンツについてはまだ知見が浅いので、コンテンツのアドバイスをしてくださる方の4名です。

――なるほど。この方たちはそれぞれ本業があって、あくまで副業兼業と言う立場で参加されるわけですね。

細田:はい。現在のコロナ禍によりリモートの働き方などが浸透してきた中で、兼業副業に魅力を感じていらっしゃる方も増えているのではと思っています。また、スペシャリストの方が、ご自身のキャリアを積んでいくなかで、教育行政の中に入って時代の転換点に未来の教育を作っていくという経験も面白いと思ってくださるのではという期待感もあります。

――教育の中だけでは、今挙げた4つの条件も浮かんでこないということでしょうか。

細田:GIGAスクール構想を進めているなかで、漠然と「その辺が課題になるだろう」ということは出ていました。ただ、課題として捉えていても、我々の中にそれをグイグイと引っ張っていける力がある人材はいないと気付いたのです。

 外注される自治体もありますが、私たちは外部のプロフェッショナル人材の方に中に入って一緒にやっていただき「さいたま市モデル」を打ち出したいと思いました。他の1700ある自治体の皆さんも、「外注以外にも、こういうやり方があるんだな」とご参考になればうれしいです。

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