このページの本文へ

40歳の新CEOが率いるSAP、日本法人では“日本発”インダストリー4.0機能などに意欲見せる

「SAP自身が改革のロールモデルでありたい」SAPジャパン鈴木社長

2020年08月11日 07時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 独SAPの年次イベント「SAPPHIRE NOW Reimagined」が2020年6月後半にオンライン開催された。今年4月に単独CEOとなり注目を集めている40歳のクリスチャン・クライン氏は、基調講演において、新型コロナウイルス感染症への対応の先を見据えた「インテリジェント・エンタープライズ」を目指そう、とのメッセージを顧客に送った。

独SAP CEOのクリスチャン・クライン(Christian Klein)氏

 SAPはERP大手であり、デジタルトランスフォーメーション(DX)の観点でもその動向は注視しておく必要がある。日本の顧客やパートナーは何を知っておくべきか?――クライン氏と同じく、今年4月にSAPジャパンの代表取締役社長に就任した鈴木洋史氏にオンラインで話を伺った。

SAPジャパン 代表取締役社長の鈴木洋史氏

――SAPでは9年ぶりにCEOが交代になり、新CEOが登場しました。クライン氏のスピーチをどのように受け止めていますか?

鈴木氏:私自身は、これまでのSAPPHIREの中で最も腹落ち感がある基調講演でした。SAPは「インテリジェントエンタープライズ」という言葉を3年ぐらい前から口にしていますが、その意味をしっかり伝えたスピーチだったと思います。

 クリスチャン(クライン氏)は今回、「プラットフォーム」「アプリケーション」「ビジネスプロセス」という3つの領域で、インテリジェント・エンタープライズを定義しました。

 まず、ビジネステクノロジープラットフォームのレイヤーでは、Azure、AWSなどの4大ハイパースケーラー(Amazon Web Services、Microsoft Azure、Google Cloud、Aliaba Cloud)のクラウドを利用し、SAPとしてIaaSはやらないということを明確にしました。その上のデータを単一リポジトリで構築し、その上にアプリのレイヤーが載る構造です。

 アプリレイヤーでは、調達や販売といった業務ごとの「業務プロセス」、そして金融、製造、公共といった業種ごとの「インダストリー」、この2つがマトリックスでビジネスプラットフォーム上に載り、インテリジェントエンタープライズを作り上げています。さらに、その先にビジネスネットワークがあり、SAPが持つ様々なSaaSが繋がります。

新たに発表された「SAP Industry Cloud」の構成

 新型コロナの影響は業界により異なりますが、回復していち早く“ニューノーマル”の環境に慣れる企業と時間がかかる企業の差が出てくると予想しています。クリスチャンは「回復力」「持続性」「収益性」という3つのキーワードを挙げました。「変化への対応力」が重要で、そのためにはデジタルトランスフォーメーション(DX)が必要です。DXという言葉はバズワードになっていますが、DXに取り組まなければ企業は存続できない――すでにそういう段階まで来ていると思います。

――「Industry Cloud」というキーワードも出てきました。こうした新CEOのメッセージをどのように日本で伝え、展開していくのでしょうか?

鈴木氏:インテリジェントエンタープライズを推進するうえで、日本では製造業が特に重要だと感じています。日本はものづくりに強い国で、もう一度日本の“ものづくり”の強みを生かしたインテリジェントエンタープライズにしていく、これはSAPジャパンとしてのミッションの1つです。

 2019年、「SAP Labs Japan」というグローバルの研究開発機関を東京にオープンしました。ここで最も注力しているのがインダストリー4.0です。SAPは、インダストリー4.0をさらに進め、エンドツーエンドのデジタルサプライチェーン全体をどうコントロールするか、その先の体験やエンゲージメントとどうつなげるかなどを網羅する“Industry 4.Now(インダストリー・フォー・ドットナウ)”を発表しました。日本でもチームを作ってやっていきます。

 さらに、日本の工場や機器とSAPのインテリジェントエンタープライズがつながるとどのようなことが可能になるのかの実験も進めていきます。

 このように、日本発でサプライチェーンやインダストリー4.0の機能を開発、強化していきます。日本で開発したインテリジェントエンタープライズの機能強化を世界に出していきたいと思っています。

――日本企業のDXの現場をどう見ていますか?

鈴木氏:インテリジェントエンタープライズという点で、日本企業は遅れている部分もあります。SAPジャパンはそこに対して、しっかりとDXの推進と加速を支援していきます。

 SAP自身は10年をかけてDXを行ってきました。その結果、収益性を上げることができましたし、コロナ禍でも99%以上がリモートに切り替わりました。ビジネスはまったく止まることなく動いています。

 このような仕組み、プロセス、さらには人や組織、そのさきのKPIと四位一体となって改革を進めてきましたが、ここがロールモデルになると思っています。

――SAPが行った改革を背景に、SAP自身がロールモデルになって日本のお客様に伝えていくということですね。

鈴木氏:SAPの取り組み、DXの進め方を経営改革の参考にしたいというお客様が多くいらっしゃいます。システムを提供するだけではなく、そのシステムを作り上げる中で、組織のあり方や企業の文化、人事制度の改革などのプロセスも含めて改革は進みます。これらすべてが詰まったものをインテリジェントエンタープライズとして、パッケージ化したソリューションとしてご提供していきます。

 インテリジェントエンタープライズのモジュールはさまざまですが、お客様にはトップと現場の両方でコンセプトを理解していただき、取り組みを行う。ここを、SAPのソリューションを理解しているパートナー様とともにしっかり支援していきます。

 SAP自身はコンサルティング企業ではありません。あくまでもクラウドを中心とした製品を提供するベンダーですが、我々自身が改革のロールモデルであり続けたいと思っていますし、その考え方とともに日本企業のDXを支えていきたいと思っています。

――2019年のSAPPHIREでは“XO”として、エクスペリエンスデータ(Xデータ)とオペレーションデータ(Oデータ)の両方を活用する重要性を強調していました。今年は、クライン氏の重要なメッセージとして温暖化対策への呼びかけがありました。

鈴木氏:“XO”へのフォーカスは継続していますが、メッセージの出し方は去年から変わりましたね。

 クリスチャンはちょうど2人目の子供が生まれたばかりで、「子供たちの世代にどうやって地球を良くしていくのか」という観点を持っています。世界のビジネストランザクションの約80%は、何らかのかたちでSAPの仕組みを経由しています。われわれには責任があります。SAPとしていま何ができるのか、それぞれの社員がそれぞれのレベルで考える、クリスチャンはそれを自分の言葉として語っていました。さらに、それを今後の製品戦略にも浸透させていくという決意も示したと感じています。

――SAPジャパンとして、今後の最優先事項は?

鈴木氏:まずは新型コロナの対応です。従業員とその家族の安全安心、そしてお客様やパートナーの安全を最優先させます。

 もう1つは、DXの推進です。3月にグローバルでカスタマーサクセス部隊を立ち上げました。これまでは、営業は営業、導入するコンサルはコンサルなどと組織が分かれており、両者が密接に連携してお客様に提供するというやり方をとってきました。この顧客に対面する組織を1つにまとめたのが、新しいカスタマーサクセスの組織です。われわれのソフトウェアを導入するだけでなく、しっかり活用いただき、価値も享受していただく。一貫した体制で、そこまでをしっかりと支援していきます。

 組織は立ち上げましたが、まだマインドセットの転換を含めてやるべきことがあります。お客様から見て「SAPは変わったね」と言ってもらえる組織にしていくという作業も進めます。

■関連サイト

カテゴリートップへ

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ