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“Akerun第2フェーズの幕開け”フォトシンスが新戦略と新サービス発表

ビルの来訪者受付/入館管理を効率化する「Akerun来訪管理システム」、三井不動産が実証実験

 スマートロックを用いた「Akerun入退室管理システム」を提供するフォトシンスは2020年8月4日、アクセス認証プラットフォームの新戦略「Akerun Access Intelligence」と、同基盤を用いたオフィスビル向けの新サービス「Akerun来訪管理システム」を発表した。新サービスでは、クラウドシステム上でビル来訪者が持つ交通系ICカードなどに入館のための“鍵(アクセス権限)”を発行し、セキュリティゲートを通過できるようにすることで、受付対応の自動化/効率化やデジタル化を図ることができる。

新サービス「Akerun来訪管理システム」の概要。ホスト側でゲスト(来訪者)を登録すると、クラウド基盤上でゲストの持つ交通系ICカードなどの物理IDに入館権限が付与される

 記者発表会にはフォトシンス 代表取締役社長の河瀬航大氏が出席し、新戦略や新サービスの狙い、さらに新戦略に合わせたコーポレートのロゴの刷新や、総額35億円の新たな資金調達を実施したことも明らかにした。またゲストとして、自社新オフィスにAkerun来訪管理システムを導入し、実証実験を行っている三井不動産も登壇した。

フォトシンス 代表取締役社長の河瀬航大氏(左)、ゲスト出席した三井不動産 執行役員 ビルディング本部副本部長 兼 法人営業一部長委嘱の中村健和氏

複数の“鍵”を交通系ICカードなど1つの物理IDにまとめる新プラットフォーム

 登壇した河瀬氏はまず、同社ビジネスの現況を紹介した。2014年9月創業の同社は、現在東京、大阪、福岡にオフィスを構え、従業員は100名を超える規模に成長している。法人向けスマートロック「Akerun Pro」は4500社が導入しており、これを利用するユーザー数(アカウント数)はおよそ66万人。「これは東京都のオフィスワーカーのうち7.4%に当たる数字だ」(河瀬氏)。

 「世界から、鍵をなくそう。」というキャッチフレーズのもと、キーレス社会実現に向けたビジネスを展開してきた同社だが、その新たな一歩が今回発表したアクセス認証基盤、Akerun Access Intelligence(以下、AAI)である。これは、これまで「扉」の数だけ持ち歩く必要があった「鍵」をなくし、個人が持つICカードのような物理IDにすべてのアクセス権限をひもづけるクラウドプラットフォームだ。

河瀬氏は、従来の「N:N」の鍵ではなく、「N:1」の“鍵”をキーレスで実現すると説明する

 具体的には、AAIのクラウドプラットフォーム上でユーザーアカウント情報と、メールアドレスや電話番号といったデジタルID(連絡先情報)、ユーザー本人だけが持つ物理ID(ICカード、スマートフォン、顔や指紋など)、そして付与された権限情報(アクセス可能な対象、有効期限など)をひもづけて一元管理する。さまざまな外部システムがこのプラットフォームを参照して本人認証を行うことで、1つの物理IDで自宅やオフィスの解錠、訪問先ビルへの入館、ホテルやカーシェアリングなどの一時利用を可能にする仕組みだ。

 こうした仕組みのため、ユーザーが物理IDを登録する必要があるのは初回利用時だけで、以後は本人認証にAAIを利用する扉やサービスであれば、その物理IDを“共通の鍵”として利用できる。物理IDとしてはICカード(FeliCa、TypeA/MIFARE)だけでなく、NFC対応スマートフォン、生体情報なども登録が可能で、1人のユーザーが複数の物理IDを登録することもできる。

 「たとえば、賃貸住宅の申込書に記入されたメールアドレスにアクセス権限を付与すれば、入居者はふだん使っている交通系ICカードを自宅の鍵として利用できる。同じように、ホテルの予約時に伝えた電話番号に権限を与えれば、同じカードがホテルの鍵にもなる」(河瀬氏)

AAIが管理するデータの概要と、2つのユースケース例

 前述したAkerun Proユーザー66万人の物理ID情報はすでにこの仕組みで管理されており、今後AAIの適用先が拡大すれば、同じ“鍵”をさまざまな場面で利用できるようになる。

煩雑な受付登録なしでスムーズに入館できる「Akerun来訪管理システム」

 このAAIを利用した新サービスが、同時に発表されたAkerun来訪管理システムだ。河瀬氏は、「新たなターゲット市場はオフィスビル」だと説明する。

「Akerun来訪管理システム」はビルに既設のセキュリティゲートと連動する

 最近のオフィスビルには、無許可での侵入を防ぐセキュリティゲート(フラッパーゲート)が設置されているケースが多い。入居オフィスの従業員は社員証ICカードなどで通過できるが、来訪者(ゲスト)の場合は一般的に、受付で入館手続きを行ったうえで入館証の発行を受ける必要がある。受付対応の効率が悪いうえに、受付で来訪者の本人確認を確実に行うのが難しいというセキュリティ上の問題もあった。

従来の一般的なビル来訪者受付/入館管理の方法。その都度手続きが必要で煩雑だった

 これを自動化、効率化するのがAkerun来訪管理システムの狙いだ。ホスト(応対側)は、来訪予定が決まったらクラウド上で来訪者のメールアドレスを登録する。前述したAAIの仕組みによって、来訪予定日時になると来訪者が登録してあるICカード(物理ID)に対して鍵権限が付与されるため、ゲストは受付手続きなしで入館できる。

 AAIに未登録の初回時のみ、受付端末でICカード登録を行う必要があるが、ゲストの氏名などの情報はホストが入力済みのため、案内メールで届く暗証番号の入力のみで登録作業ができる。

 ゲストが入館すればメールやSlackなどでリアルタイムにホストを呼び出すことができるほか、ゲストの入退館記録もデジタルデータとして記録できるため、従来の紙に記帳する仕組みよりも精度や効率が高い。メールアドレスと物理IDによる本人認証となるため、確実さも増す。

Akerun来訪管理システムによる入館フロー。来訪者はふだん持ち歩いているICカードを使って入館できる

ホスト(応対側)が来訪予定を登録すると、来訪予定日時にのみ、ゲストの持つICカードに鍵権限が付与される

 Akerun来訪管理システムは同日より、ベータカスタマー導入プログラムを開始している。発表会では、自社新オフィス(日本橋室町三井タワー)で同システムを導入し、実証実験を行っている三井不動産から、執行役員 ビルディング本部副本部長 兼 法人営業一部長委嘱の中村健和氏がゲスト登壇した。

 三井不動産では、同社が運営するシェアオフィスの「ワークスタイリング」において、2018年からAkerun入退室管理システムを採用しているほか、自社オフィスでの入退室管理にもAkerunを利用してきた。同社グループの中期経営計画では“リアルエステートテック”を掲げ、ICT活用によるビジネスモデル革新や顧客利便性や満足度の向上を目指している。今回の実証実験およびAAIについては、次のようにコメントした。

 「今回の実証実験では自社オフィスに導入した。これまでは来訪者に対し、その都度QRコード(入館証)を発行していたが、来訪するお客様からは『そうした煩わしさが解消された』と評価いただいている」(中村氏)

 さらに、前述のシェアオフィスなど三井不動産としてさまざまなサービスを展開しており、それらの共通アクセスIDを実現できるAIIをどのようなシーンで活用できるのか、これからフォトシンスと一緒に追究していきたいと語った。

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 なお今回の発表では、Akerunの新たなブランドロゴも発表されている。

 「これまでAkerunは『スマートロック』として親しまれてきたが、今回の(AAIの)要素を取り入れた新しいロゴに変更する。スマートロックから脱却し、アクセス認証プラットフォームとしての覚悟を表明する意味がある。“Akerun第2フェーズの幕開け”として、もっと賢く、もっと動的で、広がりを持ったロゴにした」(河瀬氏)

Akerunの新しいブランドロゴ。左のマークはインテリジェンス=“脳”をイメージしている

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