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「梅雨バテ」「夏バテ」に効くのは本当か?ウナギ、ニンニク、マムシ、サソリ…

2020年07月09日 06時00分更新

文● 川口友万(ダイヤモンド・オンライン

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写真はイメージです Photo:PIXTA

梅雨入りし、蒸し暑さや気温の変動で「梅雨バテ」する人も多いだろう。さらに梅雨が明ければ、いよいよ夏。今年はコロナの影響によるマスク着用もあり、暑さにスタミナを奪われる人も増えそうだ。「夏バテ」といえばウナギと焼き肉。ほかにもスタミナがつくといわれるものはいくつもある。果たして本当に効果が期待できる食べ物は何か。(サイエンスライター 川口友万)

うなぎと焼き肉は
疲労回復に効くのか

 中年は夏に弱くなる。あれだけ楽しみだった夏の強い日差しがつらい。暑いからとクーラーの温度を下げれば、それはそれで調子が悪い。体力がないのだ。昭和の言い方なら、スタミナがない。

 スタミナという言葉、今ではすっかり使わなくなった。スタミナ定食にその名残があるぐらいか。

 夏にスタミナといえば、ウナギと焼き肉。

 江戸時代の中頃に平賀源内という発明家にして実業家が、知り合いのうなぎ屋のために作ったコピーが「本日土用丑の日」。日本で初めての広告コピーといわれている。

 だからスタミナが切れて夏バテ気味なら、今も昔もウナギだ。

 ウナギでなぜスタミナが付くのかといえば、正体はビタミンBである。

 疲労の正体はいくつかあるが、その一つに生産する熱量の不足がある。

 細胞は糖を分解する過程で熱を作り出し、その熱が体の機能を正常に保つ。だが、入ってくる糖が少なくなったり、糖を分解するのに必要な物質が足りないと熱の生産量が減ってしまう。極端に言えば、細胞レベルで体が冷えるわけだ。体の機能が低下し、動けなくなる。

 疲労回復には、糖をとる、あるいは代謝の過程で不足した物質を補充してやればいい。

 ビタミンB群は熱生産の代謝回路に欠かせない物質で、ウナギはビタミンB1の含有率が高い。ビタミンB1を多く含む代表的な食べ物は豚肉で、特にヒレ肉には100gあたり0.98mgが含まれる。ロース肉はやや落ちて0.69mg。

 うなぎはその中間の0.75mgで、魚の中では圧倒的に多い。

 一方、なんとなく栄養が高そうなマグロ(赤身)は0.1mgしかなく、牛肉も低い。和牛のサーロインにはたった0.05mgしかないのだ。

 したがって、夏のスタミナにはうなぎというのは正解である。

 では、焼き肉はどうか。こんなにおいしいのに、ビタミンB1が少ないということは、夏バテ回復の効果はないのか。

 疲労には代謝が悪くなる疲労もあれば、体力を使って出る疲労もある。運動や肉体労働で筋肉を使うと、筋肉は目に見えないほど損傷する。その損傷が筋肉の動きを鈍くし、動かすと痛くなる。回復にはタンパク質が必要で、タンパク質といえば肉である。

 また細胞に分布するカルニチンという物質があり、これもビタミンB1と同じく熱生産に関係している。長鎖脂肪酸(一般的に食品に含まれている脂肪分)を酸化させて熱を生み出すのだ。また細胞の中の有害物質をミトコンドリア(細胞内で熱を作る器官)の外へ排出する働きもある。

 したがって、焼き肉もまた疲労回復の味方である。カルニチンは赤身に多いので牛の赤身、牛だけではなく豚肉も食べてビタミンB1も補給したい。

マムシ酒のある成分は
ウナギの2000倍

 スタミナをつける食べ物は、なぜか昔からゲテモノ系が多い。マムシにスッポン、サソリ、ハチ……。

 中高年にもなれば、日中もさることながら、夜のスタミナが月のように欠けていくので、そこを何とかしてくれるだろうと頼るのが、こうしたゲテモノの数々だ。

 珍しいものほど効力があるというのは、おまじないの世界である。普段食べないものを食べれば、暗示でパワーアップということもなくはないだろう。

 しかしそれだけなのだろうか。こうしたゲテモノがスタミナをつけてくれる根拠はないのか。

 ゲテモノの代表格といえばマムシ酒だ。

「マムシがスタミナ回復に効くわけがない」という人たちが、その理由とするのは“タンパク質は分解される”説だ。

 つまりはこういうことである。

「マムシのパワーの根源がその肉にあるのなら、つまりはタンパク質だろう。タンパク質はアミノ酸から構成されるが、そもそも人間の体に含まれないアミノ酸を、人間は吸収できないし、過剰なアミノ酸は排出される。ステーキを食べるように大量に食べるなら、ステーキで精力がつくようにヘビ肉でも精力がつくだろうが、それ以上の効果はない。しかもマムシの場合はアルコールに漬け、それを飲むのだ。アルコールに溶けたわずかなアミノ酸が体に有効に作用するとは到底考えられない。マムシが効くなんて迷信である」と。

 マムシ酒がきく成分が一般的なアミノ酸であるならば、この説は正しい。しかし、マムシの成分でもっとも効くとされるのはシスタチオニンというペプチド(いくつかのアミノ酸が結合したもの)なのである。

 細胞は酸化する。酸化した細胞は機能を失う。だから抗酸化物質を使って、細胞を守る。抗酸化物質は体内で合成されるが、年をとるにつれ、抗酸化物質の生産量は減っていく。そして、抗酸化物質の生産が減り、細胞がバタバタと壊れて体の機能が落ちていくと老化や慢性疲労が始まるといわれる(諸説あり)。

 細胞内の抗酸化物質のうち、最強とされるのがグルタチオンというペプチドだ。このグルタチオンの前駆体(その物質が生成する前の段階の物質)がシスタチオニンである。

 タンパク質はアミノ酸に分解されて吸収されるので、特定のタンパク質の持つ効果はなくなるが、ペプチドはそのまま吸収される。ペプチドであるシスタチオニンは分解されずに腸から吸収され、細胞内で抗酸化物質のグルタチオンに変換されるのだ。

 マムシ酒を扱う陶陶酒製造の研究によれば、マムシの持つシスタチオニンの濃度は牛肉の80倍以上、うなぎの2000倍!

 グルタチオンの抗酸化作用は全身に活力を与えるため、マムシ酒は効果が期待できるといえるだろう。

中国でサソリが
効くとされる理由

 中国ではサソリやアリが効くという。

 これは漢方特有の考え方で、2つの理由からだ。

 1つは色。サソリもアリも黒い。漢方では黒い食材は腎臓に良いといわれていて、黒豆や黒胡麻が良いといい、その並びにサソリやアリがある。

 もう1つは虫。虫は脳梗塞の治療によく使われる。ゴキブリやゲジゲジを使うこともある。なぜ虫なのかというと、体の中に入った時に穴を掘ると考えられるから。

 疲労やスタミナ不足の一因は血流が悪くなることだと考え、詰まっている血管を通すため、虫を食して血管を掘るというわけだ。

 サソリは体を温める作用が強く、人によっては体が熱くなって寝れなくなることもあるという。

 また、メタボっぽい、体に脂がたまっているような人は、血流の通りが良くなるので外に脂が出るそうだ。中国で実際にサソリを食べた人によると、翌日、若い時のように顔が脂でベタベタになっていたという。

 だが、残念ながら漢方における昆虫の効能は、科学的にはほとんど研究されていない。だからその効果は不明だが、マムシ酒の例もあるし、暗示で顔から脂を出すことはできないだろうし、ひょっとしたら何かがあるのかもしれない。

日本人が発見した
ニンニクパワー

 スタミナといえばニンニクを思い浮かべる人は多いだろう。ニンニクが効くのはアリシンという物質の働きだという。

 アリシンはビタミンB1と結合し、アリチアミンという物質に変わる。ビタミンB1は体内に吸収されにくいが、アリチアミンの形になると吸収率が2倍になるのだ。

 しかし真の有効成分はスコルジニンである。

「ニンニク博士」の異名を持つ京都帝大の小湊潔博士がニンニク中に発見したスコルジニンは、糖とアミノ酸の結合体で、血管を拡張して血圧を下げ、消化器官を活性化し、老廃物の排出を促進する。

 小湊博士による実験結果が、にわかには信じがたいほどすごい。

 マウスに与えて水の中に放り込む。マウスは必死に泳ぐが、やがて溺れ死ぬ。溺れ死ぬまでの時間を測るとスコルジニンを注射したマウスは何もしないマウスに比べ、4倍の時間、泳ぐことができた。また、トレッドミル(回し車)でどのくらいの距離走れるかを調べると、スコルジニンマウスは普通のマウスの2.14倍(人間換算で通常摂取量の10倍量の場合。20倍量で2.45倍)の距離を走ったという(参考:『にんにく新発見』 小湊潔他2名・叢文社)。

 ニンニクを食べたら元気になるといわれるが、ここまでとは。

 なお、スコルジニンを商品化したものがオキソアミジンだ。疲労回復を謳う栄養補助薬にはこのオキソアミジンが使われている。成分表で確認してほしい。一般的に1日2錠に配合されているオキソアミジンは50mg。これはニンニク2片(1片が6~12グラムなのだ)ほどに相当する。ニンニクが苦手な人は栄養補助薬を使うのもいいだろう。

 いずれにせよ、夏バテにニンニクはおすすめである。

※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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