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機械学習/統合データ基盤などでソフトウェア事業を再構築、「GreenLakeクラウドサービス」も発表

“ライバルはOpenShiftとVMware Tanzu”、HPEが「Ezmeral」発表

2020年07月03日 07時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 米Hewlett Packard Enterprise(HPE)は2020年6月23日と24日、年次イベントのオンライン版「HPE Discover Virtual Experience」を開催した。同社CEOのアントニオ・ネリ氏は、「エッジからクラウドまでの広範なプラットフォームを提供する『サービス企業』を目指し、急速にイノベーションを進めている」と述べ、最新のサービスとソフトウェアブランドを発表した。

HPE CEOのアントニオ・ネリ(Antonio Neri)氏

 2015年の分社後、HPEでは数年がかりで“新たなかたちのハードウェアカンパニー”を目指した取り組みを進めてきた。前CEOのメグ・ホイットマン(Meg Whitman)氏のもとで新生HPEのアーキテクチャと製品ポートフォリオを構築し、2年前からCEOとして同社を率いるのがネリ氏だ。

 AWSを「競合ベンダー」と呼んではばからないネリ氏が掲げる戦略は、「エッジからクラウドのプラットフォームの提供」と「2022年にすべての製品をアズ・ア・サービスで提供する」だ。今年も会期中にハードウェアの発表はなく、「GreenLake」ブランドで展開する新サービス、そして数年がかりで構築したソフトウェアブランド「HPE Ezmeral(エズメラル)」を発表した。

 6月22日(米国時間)に開催された記者向けラウンドテーブルにおいて、ネリ氏は「新型コロナウイルス感染症で明らかになったことは『エッジ中心』『クラウド化』『データドリブン』が必要だということ。これは現在、実現可能であり、将来の姿だ。今後はさらに“分散化した世界”になる」と述べた。

コンテナ、機械学習基盤、IaaSなどを包括提供「HPE GreenLakeクラウドサービス」

 会期中、HPEでは「HPE GreenLakeクラウドサービス」を発表した。これはコンテナ、機械学習基盤、仮想マシン、ストレージ、コンピュート、データ保護、ネットワーキングのサービスを網羅的に提供するものだ。昨年発表したマルチクラウドの一元管理ポータル「HPE GreenLake Central」を通じて全体を管理できるという。

発表された「HPE GreenLakeクラウドサービス」

2019年に発表した「HPE GreenLake Central」で資産全体を管理できる

 このGreenLake Cloud Servicesを統括するのがキース・ホワイト氏だ。ホワイト氏は米Microsoftに25年以上勤務し、直近ではAzureでソリューション分野を担当していた人物で、今年1月HPEに入社した。

 ホワイト氏はGreenLakeクラウドサービスを「IT-as-a-Service」だと説明する。顧客企業が自社の規模に応じてSmall/Medium/Largeの3種類から選択すると、ワークロードに最適化された事前設定済みのハードウェアやソフトウェアが入手できる。「Tシャツのサイズを選ぶような感覚だ。最短14日で届けることができる」(ホワイト氏)。

 また、企業ワークロードの70%がまだオンプレミス環境に残っていることにも触れて、「(クラウドに)簡単に動かせるワークロードはすでに移動している。HPE GreenLakeは、すぐに動かせないワークロードに対してモダンなクラウド体験を提供する」と述べた。

 GreenLakeは現在40億ドル規模の事業に成長しており、顧客はグローバルで1000社に及ぶという。また、GreenLakeを提供するパートナーは700社以上ある。そして、ホワイト氏が胸を張る実績が、顧客企業の「契約更新率」だ。90%以上の企業が契約更新しており、「これはGreenLakeが顧客ニーズを満たしている証拠」だと強調した。

右上からクマール・スリカンティ(Kumar Sreekanti)氏、キース・ホワイト(Keith White)氏、ジョン・シュルツ(John Schultz)氏

「HPE Ezmeral」ブランドでふたたびソフトウェア事業を立ち上げ

 HPE Ezmeralは、HPEがここ数年間で構築してきた待望の新ソフトウェアブランドとなる。Ezmeralとは、スペイン語で「エメラルド」を意味する。Ezmeralについては、HPEが2018年に買収したBlueDataの共同創業者兼CEOを務め、現在はHPEのCTO兼ソフトウェアトップのクマール・スリカンティ氏が説明した。

 「HPEのトランスフォーメーションにおいて、ソフトウェアは重要な部分を占める」とスリカンティ氏は強調する。実はHPEでは、分社直後の組織再編のなかで過去のソフトウェア事業をMicroFocusに売却している。今回のEzmeralは、その後に買収したBlueData SoftwareやMapR Technologiesのソフトウェア資産を生かしたものだ。

 具体的には、2019年末に発表済みの「HPE Container Platform」を名称変更した「HPE Ezmeral Container Platform」、さらに最新の「HPE Ezmeral ML Ops」と「HPE Ezmeral Data Fabric」が発表された。それぞれAIと機械学習(ML)、アナリティクス向けのソフトウェアであり、GreenLake経由またはライセンス形式で提供する。

HPEのEzmeralはPaaSを中心としたソフトウェアブランド

 CEOのネリ氏は、過去のソフトウェア資産は素晴らしいものだったものの「クラウドやAIの現実に即したものではなかった」と述べる。時間は要したものの、古い資産から解放され、新たな買収で土台から構築し直すことができたと自信を見せる。現在のHPEは、8000人規模のソフトウェア開発者を抱えているという。

 Ezmeralの競合について聞かれると、スリカンティ氏は迷わず「Red Hat OpenShift」と「VMware Tanzu」の名を挙げた。両製品ともKubernetesを統合したエンタープライズ向けコンテナプラットフォーム製品である。

 それでは競合とどう差別化を図るのか。これについては「MapRを支える拡張性のあるファイルシステムベースの永続ストレージ」「ステートフルとステートレスの両方のワークフローを動かすことができるBlueDataのテクノロジー」といった機能面での優位性を挙げた。

「HPE Ezmeral Container Platform」(旧称:HPE Container Platform)は、コンテナプラットフォームにBlueDataとMapRのテクノロジーを組み込んだ製品(画像は5月の日本ヒューレット・パッカード発表資料より)

 “サービス企業”を目指すHPEでは、製品や課金モデルを整えるとともに、ITサービスの「HPE Pointnext」も持つ。これに加えて、今年1月には「トランスフォーメーションオフィス」も立ち上げている。これは顧客のトランスフォーメーション(変革)を加速させることを目的とした組織で、社内のさまざまな部門から専門知識を持つ社員を集めた。これにより「すべてが調和したエンドツーエンドの体験構築」が可能となり、たとえばGreenLakeクラウドサービスを14日間で提供するといったことを可能にしたという。

 同オフィスを率いるジョン・シュルツ氏は、「クラウドサービスの提供、ソフトウェアの開発、素晴らしい顧客体験の提供がHPEのフォーカスだ」と述べる。その一方でハードウェアビジネスについては、「将来もハードウェアを販売するが、そこでの顧客体験を変える必要がある」と指摘した。「ソフトウェアだけ、ハードウェアだけ、市場戦略だけでは、新しいレベルの体験を提供できない」(シュルツ氏)。

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 なおHPEでは、7月末まで引き続きHPE Discover Virtual Experienceをオンライン開催している。新規ライブ配信およびオンデマンド配信で150を超えるセッションとデモが視聴可能だ(日本語翻訳付きセッションもあり)。

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