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躍進するライフスタイルブランドのスタートアップが語るD2C市場で勝ち残る術

次世代D2Cはエンタメがカギ FABRIC TOKYO×Spartyが語る最先端パーソナライズの現在

2020年07月10日 09時00分更新

文● 松下典子 編集●北島幹雄/ASCII STARTUP 撮影●曽根田元

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 ひとりひとりの顧客に合わせたマーケティング手法として日々進化が進むパーソナライズ。アパレルや美容業界にはもともと注文服や美容サロンがあり、業界大手もD2Cやパーソナライズ事業に参入してきている。

 ウェブとリアル店舗との連携でビジネスウェアのカスタムオーダーサービスを提供する株式会社FABRIC TOKYOのCEO、森 雄一郎氏と、パーソナライズヘアケアブランド「MEDULLA」を運営する株式会社Spartyの深山 陽介氏に、パーソナライズに必要な体制とブランディング戦略について聞いた。ファッションやビューティーテックのアクセラレーションプログラムやイベント運営・リサーチなどを手掛ける合同会社pilot boat 代表社員CEO 納富 隼平氏によるモデレーターでお届けする。

オンライン販売+実店舗のパーソナライズドブランド

――まずは、SpartyとFABRIC TOKYO、お二人が手掛けるそれぞれの事業について教えてください。

深山氏(以下、敬称略):Spartyは、2018年5月22日にパーソナライズヘアケアブランド「MEDULLA(メデュラ)」からスタートしました。2周年となった2020年5月22日に「HOTARU PERSONALIZED(ホタル パーソナライズド)」という新しいスキンケアブランドを立ち上げたばかりです。MEDULLAは9つの質問から髪質に合ったシャンプーとトリートメントのセットを、HOTARUは10の質問とカメラ撮影による肌診断でローションとモイスチャライザーをお届けするサービスです。ウェブでのオンライン販売のほか、実店舗として有楽町マルイと提携サロンでも提供しています。

森氏(以下、敬称略): FABRIC TOKYOは、2014年にオンラインから生まれたビジネスウェアのカスタムオーダーサービスです。特徴は店舗を18店舗構えていることで、一度お店で採寸してクラウドにデータを登録すると、次回からはオンラインでオーダーメイドのスーツやシャツを購入できます。モノを売らない店舗なので、お客さんが来店する目的は相談や体験がメイン。オーダースーツはハードルが高いイメージがありますが、買わなくてもいいので安心してご来店いただけています。

 商品はウールなどの定番の生地に加えて、速乾性に優れて、シワが寄りづらいスーパーストレッチなど、スポーツウェアで使われている素材をビジネスウェアに取り入れており、20~30代のアクティブなビジネスマンに向けたブランドを展開しています。

株式会社Sparty 代表取締役 深山 陽介氏
1988年千葉県生まれ。慶應義塾大学理工学部卒業後、株式会社博報堂に新卒入社。大手通信会社の営業職を経て、数多くのクライアントのデジタルマーケティング戦略策定に従事。2017年5月に退職し、株式会社Spartyを創業 。“色気のある時代を創ろう”をミッションに掲げ、美容とテクノロジーの融合により、誰でも・簡単に、自分に合った商品を生産/販売/利用できるインフラの構築を目指している

既存のサプライチェーンに縛られないことのメリット

――そのようなパーソナライズのサービスを始めたきっかけは?

森:一般的にD2Cって、自分がほしいものをつくるパターンが多いですよね。深山さんは男性なのに、あえて女性向けのプロダクトに挑戦して、しかも売り上げが伸びている。どういう考え方でブランドづくりをしたのか、前から気になっていました。

深山:最初は、海外でビューティーテックが伸びているし、なんかパーソナライズっておもしろいんじゃない? というふわっとした気持ちで始めました。あとは、奥さんが髪に悩んでいたので、最初のプロダクトとしてヘアケアを選びました。ただ、デザインや開発などフロントラインは全員女性で固めて、僕は口を出さないように気を付けたのが、うまくいったのかもしれませんね。

森:パーソナライズの方針は、深山さんが決めたんですか?

深山:僕が決めていたのはパーソナライズという方針だけ。でもどうやって作ればいいのかわからないので、デザイナーと処方の専門家を集めて作っていった形です。

森:しっかりマーケティングしたものよりも、すごく属人的な課題でつくったプロダクトのほうが意外と当たったりしますよね。パーソナライズは、10万人のニーズに応えられるのに、最初はひとりのために作っていたりする。自分は営業時代に、腕が長くて既成服のサイズが合わなかったんです。でもオーダーメイドは知ってはいたけれどハードルが高いじゃないですか。それを解決するために自分で作りました。ハードルを下げるためにインターネットでの24時間販売、モノ売らない実店舗で採寸して、価格も抑えれば、一般に広がると思いました。

株式会社FABRIC TOKYO 代表取締役CEO 森 雄一郎氏
1986年岡山県生まれ。香川大学工学部卒業後、ファッションイベント企画会社にて、ファッションショーのプロデュースに従事。その後、ベンチャー業界へ転向。不動産ベンチャー「ソーシャルアパートメント」、フリマアプリ「メルカリ」の創業期に参画後、2012年に株式会社FABRIC TOKYOを創業。自身が洋服のサイズに困っていた経験から、カスタムオーダーECサービス「FABRIC TOKYO」をリリース

納富氏(以下、敬称略):既存のアパレル業界や化粧品業界からの反応はどうです? うらやましがられることはありますか?

森:(コロナ禍における)今はとくに、うらやましがられていますね。既存のファッション業界は、3月からのほぼ3ヵ月間、商売が止まっています。しかも、アパレルのサプライチェーンの仕組み上、販売ができなくても、商品は入ってきてしまう。そのため、在庫が物流倉庫に収まり切れずに、新しい倉庫を借りて不動産の経費がかさんでいる状況です。しかも、アパレルは保証もないし、テイクアウトもできないから飲食店よりも実は厳しい。

 うちの場合、抱えている在庫がほぼゼロで、店舗も商品を置かないので15坪~20坪とコンパクト。かつ、自粛期間中はリアル店舗を閉めていても、データを登録している既存顧客がいるので、既存小売店の売上が平時の20%程度まで落ち込むなか、弊社は45~50%くらいの落ち込みで済みました。

深山:最近、美容業界の人と話をしていくうちに気付いたことなのですが、パーソナライズは、SKU(Stock Keeping Unit、受発注や在庫管理を行う際の最小管理単位)が表から見えない。今までの商品は、SKUが見えるから、必ず横流れしてしまうんです。公式サイトで売ろうとしても、Amazonや楽天などのストアに流れて、価格が落ちていく。大手メーカーは横流しが起こらないように販路を縛るなど必死に対策をしています。

 ところがパーソナライズは、SKUがわからないから、横に流しようがない。パーソナライズの面白さの本質は、販路をコントロールでき、価格統制権があることかもしれない。データも自社でとれるから、試験的な面白さがあるんですよね。

森:それってスタート時は、深山さんもそこに気付いてなくて、事業が拡大するなかで見えてきた魅力ですね。

パーソナライズとクロスセルは相性がいい

深山:FABRIC TOKYOはスーツだけでなく、ポロシャツなども出していますよね。そういったカジュアルウェアのリピーターも多いですか?

森:めちゃくちゃ増えていますね。もともとはスーツが売り上げのほとんどを占めていましたが、今はスーツが半分強ほど。ポロシャツやTシャツ、単品のカジュアルジャケットなど、クロスセルがすごく伸びています。

深山:うちも予想以上だったのが、ヘアケアの領域でなく、スキンケアでもクロスが発生しました。UX、パーソナライズに興味や関心がある人って、クロスしていくのかな。

納富:髪のデータと肌のデータを一緒にデータをもっていることで相乗効果はありますか?

深山:たとえば、肌と髪のデータから不足している栄養分を推測して、サプリメントを提供する、といった展開も考えられますよね。

合同会社pilot boat 代表社員CEO 納富 隼平氏
1987年生まれ。明治大学経営学部卒、早稲田大学大学院会計研究科修了。在学中公認会計士試験合格。大手監査法人で会計監査に携わった後、ベンチャー支援会社に参画し、300超のピッチ・イベントをプロデュース。2017年に独立して合同会社pilot boatを設立。自社・他社メディアでスタートアップ関連のライター、大企業向けオープンイノベーション・コンサルティング、スタートアップ関連のリサーチも手がける。得意分野はFashionTech・BeautyTech・FemTech

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