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クラウド管理製品にフォーカス、マネージドサービスパートナーを主軸に「中小企業のDX推進」支援

シスコ、中小企業向けブランドを「Cisco Designed」に刷新

2020年06月29日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 シスコシステムズは2020年6月26日、新しい中小企業向けブランド「Cisco Designed」の国内展開開始を発表した。2015年から日本法人が独自展開してきたブランド「Cisco Start」を、グローバル展開に伴ってリブランディングするもの。

 同日の記者説明会においては、Cisco Designedでは中小企業のデジタル変革(DX)支援を目的として、特にクラウド管理型のソリューションにフォーカスし、マネージドサービスパートナー(MSP)経由でのサービス提供に注力するなどの戦略が語られた。今後1、2年のうちに、ターゲット企業層での導入率を30%まで拡大する目標を掲げている。

新しいシスコの中小企業向けブランド「Cisco Designed」。“中小企業向けにデザイン(設計)された”製品やソリューション、サービスを展開する

あらためてグローバルで中小企業向けブランドを展開開始

 今回発表されたCisco Designedは、シスコ日本法人が2015年に立ち上げた日本市場独自の中小企業向けブランドであるCisco Startの後継となる。シスコシステムズ 専務執行役員 パートナー事業統括の大中裕士氏は、Cisco Startはこれまで20万以上のユーザーが採用し、数年前からはアジア地域にも展開を拡大するなど「一定の成功を収めてきた」と説明する。

 こうした成功を受けて、グローバルのシスコとしてあらためて中小企業向けブランドをリブランディングし、80カ国で展開していくことになった。これが今回のCisco Designedである。従来のCisco Startと同様に、Cisco Designedにおいても従業員1000名までの企業をターゲットとするが、特に注力するボリュームゾーンは25~250名規模の企業だ。

 大中氏は、日本の労働人口の68%を雇用し、企業数では99%を占める中小企業においても、新型コロナウイルスによる経済/社会活動の停滞を経験して“ニューノーマル”に向けた変革が急務になっていると指摘。具体的に直面する課題としては「セキュリティ対策」と「ビジネスの継続」、そして「デジタル変革(DX)」を挙げる。

中小企業が現在直面するIT課題。新型コロナ感染拡大を受けて、この課題対策が喫緊のものとなった

 その一方で、中小企業層のおよそ半数は「IT人材不足」を実感しており、運用管理のクラウド化や、地元販売店も含めたIT面のパートナーによる支援を必要としている。そこでCisco Designedでは、マネージドサービスパートナー(MSP)の認定プログラムであるCMSP(Cloud and Managed Service Program)を強化し、新たにエントリーレベルの「CMSP Express」を設けた。

 「CMSP Expressは、たとえばMeraki、Webexといった、特定のソリューションに特化したMSP認定を行う。これにより、従来の販売パートナーがこれからマネージドサービスビジネスを始めるといったケースでも、迅速に新サービスを市場投入しやすくする」(大中氏)

 今回はまず、Cisco Designedに賛同する国内9社のMSPと共に展開をスタートする。大中氏は「中小企業にリーチされているパートナーにサービス化してもらうことで、市場への浸透を図る」としたうえで、サービス価格についてもターゲット顧客層のニーズに応じたリーズナブルな価格設定をすると述べた。

 「個人事業主を除いた中小企業法人は全国におよそ170万社あり、現在のシスコのシェアはおそらく10%強。これを1年、2年で50万社、およそ30%まで広げていきたい」(大中氏)

マネージドサービスプロバイダープログラムを拡充し、参入の敷居を下げてMSPパートナー拡大を図る。スタート時点でのパートナー9社も紹介された

「クラウド管理型製品」にフォーカスした製品ポートフォリオ

 続いて同社 APJCアーキテクチャーセールス ビジネス開発担当の中元聡氏が、Cisco Designedの製品ポートフォリオについて説明した。ポートフォリオは大きく「コネクト(ネットワーク)」「コンピューティング」「コラボレーション」「セキュリティ」で構成されており、Cisco Startで展開してきた製品シリーズにいくつかの新製品が追加されている。

Cisco Designedポートフォリオの概要(提供する製品シリーズ)

 前述のとおり、シスコではCisco Designedのターゲット顧客におけるボリュームゾーンを25~250名規模と考えており、その層に適したものとして特にクラウド管理型(クラウドマネージド)製品群にフォーカスしている。ネットワーク製品であるCisco Merakiのほか、コラボレーションサービスのWebex、セキュリティのCisco Unbrella、Cisco Duoセキュリティ(多要素認証)といった製品/サービス群だ。

 また中元氏は、“ニューノーマル”に向かう中では「ビジネスの継続/維持」と「ビジネス変革/成長」の両面での取り組みが必要であることを説明。ビジネス継続のためのソリューションとして、自宅から会社へゼロタッチプロビジョニングでのセキュアアクセスを可能にするMeraki MX Small Branch+Z3(ゲートウェイ)やWebexシリーズのコラボレーション製品群を、またテレワーク環境でのセキュリティ対策としてDuoセキュリティやUmbrellaといったサービス群を紹介した。

 もうひとつ、ビジネスの成長に向けたソリューションとしては、Webex RoomやWebex Eventsなどを活用したオンライン医療/教育/イベントなどを、また堅牢な社内ネットワークを実現するMerakiのWi-Fi6対応アクセスポイントやスイッチ、Catalyst 1000シリーズスイッチ、そしてHyperFlex EdgeなどのHCI製品があると述べている。

 「学習塾を運営するある顧客(NPO法人)では、新型コロナの影響で対面での授業ができなくなり、オンライン授業を展開することになった。ただし、以前から教室に通えない生徒のためにオンライン授業を検討していたため、今後も授業の柱のひとつとして展開していく予定だという。このように、状況に迫られて『仕方がなく変える』だけでなく、今後に向けたポジティブな展開としてデジタル変革に取り組んでいただけたら」(中元氏)

中小企業に提供する価値と、具体的なソリューション例

 また同社 マーケティング本部 部長の水谷雄彦氏は、Cisco Designedのブランド展開やプロモーションについて紹介した。Cisco Designedブランドは「中小企業の成長とデジタル化を支援する」グローバルブランドであり、80カ国以上でパートナーと共に展開していくという。また、ブランドアセットはすべてのパートナーが活用可能となっており、パートナーがCisco Designedブランドを使って顧客提案することもできる。

 なお日本法人でも、Cisco Designedの中小企業向けオンラインイベントとして7月9日に「Cisco Engage」を開催する。「ニューノーマル時代のセキュアな働き方」をテーマに、IT整備とセキュリティ、労務/人事制度、コスト負担といった課題の解決法を紹介するという。

Cisco Designedは中小企業向けグローバルブランドとして、各国のパートナーと共に展開していく

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