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飲食業界にもDXの波!ユーザー行動・好みの解析で苦境を乗り切れるか

2020年06月25日 06時00分更新

文● 吉田克己,筑前サンミゲル(ダイヤモンド・オンライン

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通常のスーパーのように見えるが、天井近くのレールをデリバリー用の袋が移動する(アンリデザイン提供)

 6月に入り新型コロナウイルス感染対策のための緊急事態宣言が解除され、徐々に経済活動が再開してきている。世界的に第2波の恐れはあるものの、各国ともロックダウン緩和の動きを見せている。

 しかし、今回の新型コロナウイルスがもたらした「自粛要請」による経済的ダメージは、まだまだ広がりを見せている。

 中でも大きなダメージを受けているのが飲食業界だ。飲食店は営業時間の短縮や店内飲食の制限を強いられたため売り上げは激減、閉店を余儀なくされるケースが後を絶たない。その一方で、中食需要が高まり、「Uber Eats」を筆頭にテークアウト、デリバリー関連の新サービスが続々登場するなどの変化が起きている。

 今後、社会はウィズコロナを踏まえた新しい生活様式へシフトせざるを得ないだろう。すでにあらゆる業種で先行きが見通せない中での模索が始まっており、今後デリバリーやテークアウトは飲食店のサービスの一つの柱として定着していくとみられる。また、ソーシャルディスタンスの観点から、店内滞在時間を短くしたいと考える人も増えるだろう。

飲食業界のDX
中国での成功事例も

 そこで今、注目されているのが飲食業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)の促進である。DXとは、2004年にスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が提唱したとされる、「進化したITやテクノロジーを浸透させることで人々の生活をより良いものへと変革する」という概念である。これは現在、経営や事業の視点から「ITやテクノロジーの進展を前提に、競争環境、ビジネスモデル、組織や体制の再定義を行い、企業の文化や体質を変革する」という解釈がなされるようになった。いずれにしても、DXは「企業文化や体質の変革」であり、単にITを導入することで業務プロセスの効率化を図ることではない。

 世界的に飲食業界のDXの最先端を走るのは中国である。中国最大のECサイトを有する「アリババ」グループが運営するスーパーマーケット「盒馬鮮生(フーマーフレッシュ)」がその代表例だろう。

 中国では電子決済の利用が進んでいるため、フーマーでの支払いもアリババグループが提供しているアリペイを利用する人がほとんどだという。このアリペイの使用履歴から、「誰が、いつ、どこで、何を購入したか」といった詳細な行動データを取得しており、消費者ごとの嗜好を把握できているといわれている。

 このビッグデータは、パーソナライズされたマーケティングと商品開発に活用されている。例えば、購入した食材で嗜好に応じたレシピが即座に提案されるなど、個別のレコメンド機能を実現している。

 また、不正会計が明らかになって失速したが、破竹の勢いで「スターバックスコーヒー」を脅かした「ラッキンコーヒー」もDXを実現している一例として挙げられる。ラッキンコーヒーは自社のアプリ経由での電子決済からしか購入できない仕組みで、フーマーと同じく購入履歴から行動データを取得、最適なタイミングで購入につながるキャンペーンやレコメンドに生かしている。

 このように、飲食業界のDXの特徴は、消費者の行動データを収集・蓄積し、消費者ごとの好みに応じた提案を行うことで、満足度と客単価やリピート率の向上につなげることができる。

日本の飲食業界でも
DX導入の動きが

 日本でも、マクドナルドやスターバックスといった大手チェーンが自社アプリを活用し、同様の顧客データの活用が進みつつある。そんな中でデータに力を入れるスタートアップ企業も出てきている。

 食べたい一皿から飲食店を探せるユニークなグルメアプリ「SARAH」を運営する株式会社SARAHがその一例である。従来のグルメサイトは、飲食店に関する口コミを集めているのに対して、SARAHは飲食店のメニュー一品一品に対する口コミを集めているグルメアプリである。メニュー単位の口コミを集めることで、誰が、いつ、何を食べ、どう思ったかのデータを取得することができる。蓄積する70万件の口コミデータ、月間100万人を超える利用者データを活用し、SARAHは「Eat Tech」を掲げて食のDXを展開している。

SARAH 高橋洋太代表

「Eat Techは、Eat(食べる)とTechnology(技術)を組み合わせた造語で、人工肉や昆虫食など食材面のテクノロジーが目立つFood Techとは異なり、消費者の食行動に関わる技術革新を指します。SARAHでは自社で取得した食のデータを活用し、Food Data Bankという食品メーカーが商品開発やマーケティングに活用できるビッグデータサービスを提供しています」(SARAH 高橋洋太代表)

 Food Data Bankは、今まで食品メーカーがアナログで実施していた市場分析をWEB上で瞬時に行うことができるサービスで、雪印メグミルクや日本食研などの食品メーカーが導入しているという。

紙メニューの電子化など
感染予防になる取り組みも

「5月28日から飲食店向けに既存の紙メニューを電子化できる『Smart Menu』というサービスを始めています。QRコードを読み込むだけで自分のスマートフォンで電子メニューが閲覧できる仕組みです。物を介した新型コロナ感染が懸念される中、不特定多数のお客さんが同じ紙メニューを使い回すことを避けることにつながり、感染予防になると考えています」(同)

 高橋代表によると、今回のSmart Menuはベータ版で、今夏リリース予定の正式版では、SARAHの豊富なデータと組み合わせることで、メニューの口コミ情報や消費者ごとの行動データから、ユーザーごとに、好きそうなメニューを上位表示させることもできるようになる。

「データの取得に関しては個人が特定できないように必要最小限にとどめています。飲食店のDXは、飲食店だけでなく、飲食店に訪れる顧客に対しても価値を提供しないと実現することが難しい。Eat Tech企業として、今まで消費者を見続けてきたSARAHだからこそ飲食店と消費者の双方にとって価値を提供でき、ほんとうの意味での飲食店のDXを行うことができると考えています」(同)

 飲食店にとってはリピーター顧客の獲得につながり、まさに飲食店のビジネスモデルを大きく変えるサービスとなりそうだ。

(吉田克己&筑前サンミゲル/5時から作家塾(R))

※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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