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創業エンジニアが残すスタートアップ開発ログ 第3回

株式会社UPSIDER リードエンジニア 清水 顕氏

請求書アップで振込まで完了!銀行体験を変えるBtoB Fintechサービスが2ヵ月でローンチされた裏側

2020年06月23日 08時00分更新

文● 清水 顕 編集●ASCII STARTUP

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0→1は、起業家だけでは生まれない。先進スタートアップの創業期エンジニア・CTOは、どのような目線で製品やソリューション開発に取り組んでいるのか。最前線の開発者の生の声から、テックスタートアップの現在を追う本連載。第3回は、銀行体験を変えるBtoB Fintechサービスを運営するUPSIDERのリードエンジニアである清水 顕氏。

 皆さんこんにちは、株式会社UPSIDERというFintechスタートアップにてエンジニアをしております、清水(@kaonash_)と申します。

 UZABASEやBizReach(現Visional)といったスタートアップでの就業経験を経て、UPSIDERにまだソースコードが1行も存在しないタイミングでJOINし、技術選定やアーキテクチャ設計も含めて本当に0からプロダクト開発に関わらせてもらっています。

 UPSIDERではサーバーサイドの開発言語としてKotlinを採用しているのですが、個人的にもKotlinという言語が大好きで、昨年もKotlin Fest 2019にて登壇させてもらいました。もうnull safetyじゃない世界では生きていけない。

 また、「移住したい系エンジニア」というもう一つの顔をもっていまして、来年には家族ともども長野に移住する予定です。

 その夢が実現できそうなのも、UPSIDERという会社が新型コロナウィルスが流行する前からリモートをベースに働く体制を構築していて、「この会社・チームでなら自分が離れた場所にいても事業を成長させていくことができる」という手応えを得られたおかげだと思っています(現に、弊社のCTOは創業当初からずっとイギリスに在住しています)。

法人決済を呼吸感覚までシンプルに

 「今、ようやく世の中ではキャッシュレス決済が普及してきているけど、翻って法人間の決済では未だに超非効率なやりとりが続いているんです」

 弊社のCEOである宮城が初めて会った際に言った言葉です。そんな法人間の決済を呼吸感覚までシンプルにしたい、それによって挑戦を続ける成長企業の背中を押す原動力になりたい。

 そんな想いのもと、2019年12月にリリースしたプロダクトが「UPSIDER」です。

 画面をご覧いただくと、まるでオンラインバンキングのように残高が存在していて、それが日々増減している様子がおわかりいただけるかと想います。これが我々が提案する法人向けの「新しい銀行体験」です。

 なにが新しいかというと、下記のような特徴があります。

 ●請求書をアップロードするだけ! 自動で取引先への振込が完了する
 ●請求書の支払いに使えるリワードが、1%以上付与される
 ※リワードの付与率はご利用状況に応じて変動します

 これらにより、リワードによる財務的なメリットを受けつつ支払いに関する煩雑な業務を大きく削減することができる、しかも、何のための振込か一目瞭然、そんなプロダクトになっています。

 また最近リリースした機能として、会計システムとのAPI連携によってUPSIDER経由の支払い情報を自動的に連携することもできます(※2020年6月現在ではfreeeにのみ対応)。

 おかげさまでユーザー様にも恵まれ、直近数ヶ月は月次GMV(流通取引総額)が80%以上の成長を続けています。

法人カードを提供するための機能から突然の方針転換

 今でこそ無事にプロダクトもローンチでき、日々ユーザー様に使っていただけていますが、実は僕がUPSIDERにJOINした当初開発していたのは法人カードを提供するための機能でした。

 CTOの澤田と僕で役割を分け、澤田は決済情報のprocessing部分、僕は利用履歴などを確認するためのWebシステム側を主に担当して開発を進めていました。

 正確に言うと、もともと上記のような新たな銀行体験を提供する構想はあったのですが、法人カードの提供ができてから徐々に機能拡張してその世界観に近づけていく予定だったのです。しかし、法人カードの開発は複雑性が高い上に大人の事情もいろいろと絡み、通常のWebサービスよりもリリースに膨大な時間を要します。

 スタートアップにとって、実際にユーザーが使ってくれるプロダクトが存在するかどうかというのは非常に重要です。また、先にベースのシステムとして振込機能を開発した上で法人カードをそこに乗せたほうが、最終的に僕らが目指している世界に近づけるだろうという目論見もありました。

 そこで、CTOである澤田は引き続き法人カードの開発を進めつつ、まず先に振込機能をリリースしようという流れになったのです。

 開発優先順位の入れ替えなど、どこのスタートアップでも毎日のように発生している事案です。朝令暮改こそスタートアップの醍醐味。問題は、弊社のCOOである水野(彼はもともとUZABASE時代の同僚で、僕をUPSIDERに誘った張本人なので、気心の知れた仲です)が囁いた悪魔の一言です。

「このプロダクト、なんとか1ヵ月でリリースしたいんですよね」

 最初に聞いた時は、正直「この人、忙しすぎて頭がちょっとアレしちゃったのかな」と思いました。

 一応補足しておくと、彼は普段からこんな無茶振りをするタイプの人間ではありません。どころか、エンジニアとマーケターと起業の経験を併せ持つ超レア人材である彼は、その豊富な知識でビジネスサイドとエンジニアの橋渡しとなりつつ、全方位の問題を事前に検知して解決していってくれる、大変に頼りになる存在です。

 性格としてもイケイケドンドンではなく、むしろコンサバに未来を組み立てていくタイプ。

 であるからこそ今回の無茶振りはそれがビジネス上どれほど重要なインパクトを持つものなのか、察するに余りあります。

 とはいえ、です。単一機能のシンプルなプロダクトならともかく、ユーザー様の大事なお金をお預かりするプロダクトです。「バグだらけでもとりあえず出して、運用しながら修正すればいい」という性質のサービスではありません。

 今までの経験から鑑みても、到底1ヵ月でものになるようには思えません。しかも、並行して法人カードの開発も進める必要がある関係上開発メンバーは基本僕一人、途中からフロントエンドのエンジニアが一人入れるかも(彼は彼でスーパーマンなので相当に心強いのですが、もはやそれで片付くレベルの問題ではありません)、という状況。

 さすがにこれは無理だと伝えようと思いましたが、そこでふと思い立ちました。

 「これ、今までに作ってきた資産を使いまわしながら作れば、1ヵ月とは言わないまでもかなり短期間で作れる可能性があるのでは?」

 というのも、それまで法人カードの開発を進める中で、アーキテクチャー設計および認証をはじめとする共通処理など、最初の立ち上がりで時間を取られる部分はもうすでにできあがっていたのです。

 もちろん機能自体はまったく別物なのでそこはほぼイチから開発することになりますが、その資産をそのまま使えば、かなりの工数を削減できます。

 それに、やはり状況の変化を楽しんでこそのスタートアップです。自分はこういうミッション・インポッシブルでカオスな状況に立ち向かうのが好きでスタートアップにいるのです。やる前から「無理」と諦めるよりは、なんとかする方法を探りながらまずは一歩踏み出してみよう。そう考えて、開発をスタートしたのでした。

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