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「アフターコロナには『データトランスフォーメーション』も一気に進む」カントリーマネージャー佐藤氏

「Tableau Online」日本リージョン開設、最新版プラットフォームも発表

2020年06月03日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 米Tableau Softwareは2020年6月2日、企業向けデータ分析プラットフォーム/BIツールのSaaS版「Tableau Online」を提供するデータセンターとして、新たに日本リージョン(東京)とオーストラリアリージョン(シドニー)を開設し、サービス提供を開始したことを発表した。国内リージョンの使用によってパフォーマンス(レイテンシ)改善が見込めるほか、データレジデンシー(国内保存)規制のある業界での導入も可能になる。

 また同日には、Tableauプラットフォームの最新版となる「Tableau 2020.2」リリースも発表された。記者説明会に出席したTableau Software カントリーマネージャーの佐藤豊氏は、“アフターコロナ”や“with コロナ”の時代にはDXだけでなく「データトランスフォーメーション」も進むだろうと語り、今回の発表は国内におけるその動きを後押しするものだと位置づけた。

最新版「Tableau 2020.2」のメトリクス機能。ダッシュボードから重要な指標だけを切り出し1カ所にまとめ、モバイルからでも常に監視可能にする

Tableau Software カントリーマネージャーの佐藤豊氏。なお旧Tableau Japanは今年4月からセールスフォース・ドットコムの一部となり、佐藤氏の所属は米Tableau Softwareとなった

東京リージョン開設で規制業界におけるデータレジデンシー問題を解消

 今回同時に開設されたTableau Onlineの東京リージョン、シドニーリージョンは、グローバルでは5番目と6番目、そしてアジア太平洋地域では初のリージョンとなる。新規ユーザー、既存ユーザーとも利用が可能で、新規ユーザーはTableau Onlineのサイト設定画面からこれらのリージョンを選択できる。

訂正とお詫び:掲載当初、「新規ユーザー、既存ユーザーともサイト設定画面でリージョン選択ができる」としていましたが、この設定画面は新規ユーザーのみ表示されるものでした。既存ユーザーの場合は別途、Tableau側での移行作業が必要となります。お詫びのうえ訂正いたします。(2020年6月4日)

Tableau Onlineのサイト設定画面。東京リージョンが選択可能になった

 まずは、東京リージョンの開設によって国内ユーザーにおけるサービスのレイテンシ(遅延)が改善され、パフォーマンスが向上するメリットが見込める。佐藤氏は、東京リージョンの先行利用顧客からは「読み込み時間が短縮され、データ等の抽出が高速になった。体感速度が全然変わるほどパフォーマンスが向上した」と好評を得ていると語る。なお今回の発表においては、キリンビールが東京リージョンを大規模利用開始したことも明らかにしている。

 もうひとつのメリットが、金融機関や政府公共機関など、データの国内保存が義務づけられている業界の顧客でも、Tableau Onlineが利用可能になったことだ。佐藤氏は、これまでは金融機関の顧客から「Tableau Onlineを使いたいが、海外データセンターしか利用できないため自社のデータ保管ポリシーに合わない」との声もあったと説明し、今後はこうした規制業界の顧客にも提供できるとして、国内市場におけるTableau Online導入拡大への期待を示した。

 ちなみに今回、Tableau Onlineとしては初めてSLA(サービスレベル保証)を提供することも明らかにした。プレミアムサポート契約の顧客に提供される。佐藤氏によると、SLA提供の要望は、これまでミッションクリティカルな用途でTableauを利用している顧客からグローバルで多く寄せられており、グローバルで提供する。

最新版「Tableau 2020.2」では大きなイノベーションとなる2機能を紹介

 最新版プラットフォームであるTableau 2020.2については、とりわけ大きなイノベーションとなる2つの新機能、「新しいデータモデリング(リレーションシップ機能)」と「メトリクス機能」を取り上げて詳しく説明し、デモも披露した。

 リレーションシップ機能は、データ粒度が異なる複数のテーブルをドラッグ&ドロップ操作で簡単に結合できる機能だ。シニアソリューションエンジニアの飯塚桂子氏は、この機能によって「データベース構造を深く学んだり、カスタムSQLを記述しなくても、粒度の異なる複数テーブルのデータをより簡単に分析できる」と説明する。

 ただし、この機能は単にデータ統合操作をGUIで簡素化するだけでなく、データ準備のプロセスそのものを大きく変えるものだという。

 従来のプロセスでは、あらかじめテーブルAとテーブルBを結合して分析用のテーブルXを作成し、このテーブルXを使って分析を行っていた。一方で今回の新機能は、テーブルAとテーブルBをそのまま使い「分析するタイミングで結合を行う」仕組みだ。ユーザーは複数のテーブル間で一致するフィールドを指定(定義)しておくだけでよく、あとはTableauが分析のコンテキストに基づいて自動的に粒度を調整し、結合をリアルタイムに実行する。飯塚氏は「すでに利用している顧客は、この機能を“その場でのETL”と表現している」と語る。

従来は分析前にデータ準備を行う必要があったが、リレーションシップ機能では分析のコンテキストに基づいて、分析時に結合が自動実行される

 この機能によって、事前のデータ準備にかかっていた時間が削減されるほか、分析用に準備したデータ(上述のテーブルX)ではなくオリジナルのデータソースを直接参照する仕組みのため、分析結果からの“深掘り(詳細データの確認)”や違う角度からの再分析、インサイト探索といった、異なる分析シナリオにもスムーズに対応できる。また事前準備時の結合ミスによるデータ損失などを防ぎ、より信頼のおける分析処理ができると説明した。

リレーションシップ機能で得られるメリット

複数テーブルを事前集計したデータを分析する場合(左)、詳細データが丸められているため、あらかじめ用意した切り口(シナリオ)でしか見ることができない。リレーションシップ機能は元のデータソースを参照するため、詳細データ(犯罪タイプや物件タイプ)に基づくフィルタも可能だ(デモ画面より)

 もうひとつのメトリクス機能は、複数のダッシュボードから重要な指標(KPI)だけを切り出し、一覧表示させることができる機能だ。Tableau Mobileもサポートしているため、Tableauのヘビーユーザーではない経営層などのユーザーが、いつどこにいてもビジネスKPIを簡単に監視できるようになる。Tableauでは、詳細情報が載ったダッシュボードを“新聞記事”とすると、メトリクスはその“見出し”だとたとえている。

メトリクス機能により、ダッシュボードから特に重要な指標だけを切り出して監視することができる

ダッシュボードで切り出したいデータを選択し、メトリクスメニューをクリックするだけで簡単に作成できる(デモ画面より)

 Tableau 2020.2ではそのほか、Esri地理空間データを直接視覚化できる「Esri Webデータコネクト」、ユーザーが自然言語で質問できる「データに聞く」機能の強化、Tableau Prep Builder/Conductorのデータ増分更新対応などの新機能がある。

 買収元であるSalesforce.comのサービスとの連携強化については、Prep BuilderにおいてSalesforceコネクタが実装された。Salesforce上にあるデータに直接接続して分析できるほか、Salesforceデータとその他のデータを掛け合わせて分析したい場合も、より簡単に実現できるようになった。

「アフターコロナの世界ではデータに基づく意思決定がより重要に」

 新型コロナウイルスの感染拡大によって人の移動や対面が大きく制限され、ビジネス活動の中心が急激にオンライン移行しつつあり、“アフターコロナ”や“with コロナ”の時代にはDXがさらに加速すると言われている。

 佐藤氏もこうした見方に同意しつつ、同時に「データトランスフォーメーション」、つまり「データに基づく意思決定」も一気に進むのではないかと語る。現在のような先の読めない“不確実な時代”には、状況変化をしっかりと理解し、スピードをもって意思決定する必要があるからだ。

 そしてそのデータトランスフォーメーション、さらには誰もがデータ分析ができる「データの民主化」を国内でも推進していくために、今回のそれぞれの発表があると位置づけた。

 「ユーザーがデータのセキュリティを意識しなくても安全、安心に利用できるサービスを、Tableau Onlineで国内から提供する。さらに、データの信頼性を増すようなデータモデリングのリレーションシップ機能、経営者などがKPIを見ていくことが重要なのでメトリックス機能と、今回はそうしたものを中心に発表した」

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