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ソニーが金融事業を完全子会社化、真の狙いは「脱エレキ」の加速

2020年05月28日 06時00分更新

文● ダイヤモンド編集部,土本匡孝(ダイヤモンド・オンライン

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コロナショックをものともせず、ソニーが攻め続けている。来春63年ぶりに商号を変更し、ソニーグループとなる。また金融持ち株会社を完全子会社化する。業績堅調なソニーは電機業界で勝ち続けられるのか。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)

新生ソニーへ3つの組織変更
すでに現れていた予兆

Photo by Masataka Tsuchimoto

「ファウンダーの盛田からの学びの一つに、『長期視点に基づく経営』があります。新型コロナウイルスが世界を変えた今、私は改めてその重要性を感じています」

 5月19日に開かれた、ソニーの吉田憲一郎社長兼CEO(最高経営責任者)による経営方針説明会。冒頭に創業者の一人、盛田昭夫氏を持ち出す辺りが、吉田社長の生真面目さ、あるいは強かさの表れなのだろう。

 吉田社長が長期視点に基づく経営感覚から導いたという、この日のビッグニュースは3点あった。

 1点目に、グループ本社機能とエレクトロニクス(家電)事業の間接機能が混在していた「ソニー」を再定義。ソニーの社名を2021年4月から「ソニーグループ」に変更し、ソニーグループは本社機能に特化した組織にする。1946年創業の東京通信工業を58年にソニーと改称して以来、実に63年ぶりの社名変更となる。

 2点目に、ソニーの商号は祖業のエレキ事業が継承する。吉田社長は「創業以来、ソニーというブランドを築き上げてきた主役」「ソニーの商号を受け継ぎ、価値向上を目指す」とエレキ事業を持ち上げて説明した。

 3点目として金融持ち株会社の「ソニーフィナンシャルホールディングス(HD)」(持ち株比率65%)を完全子会社化する。吉田社長はコロナ危機で地政学リスクが高まる中、日本に安定した事業基盤を持つ会社の取り込みは、「経営の安定につながる」と説明。少数株主に帰属する利益として流出していた配当を取り込み、さらに税務上のメリットもあり、連結で年400~500億円の純利益増が見込めるという。

 すでに組織変更の予兆はあった。

 今春、エレキ事業を束ねる中間持ち株会社「ソニーエレクトロニクス」を設立。表向きの理由は「事業間の一体運営をさらに推進する」などと発表されたが、これまでも事業内連携は強めており、敢えて新組織を作ることに説得力がなかった。だが、今回ソニーを継承する受け皿としての位置付けが示され、外部から見ればようやく合点がいった。

 他にも、ソニー関係者によると、ゲーム子会社の「ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)」に出向中だったソニー社員たちが今春、SIEへ転籍したという。この関係者は意図を測りかねていたが、「ソニー本体の先行整理」という意味合いがあったとすれば納得がいく。

 ソニーの歴史と照らし合わせると、おもしろいのはやはり、エレキ事業がソニーの商号を継承することだ。

 これまでの流れはむしろ逆で、ソニーからエレキ事業を外出ししていた。テレビ部門など次々と分社化を進め、各部門の経営責任を明確にした。パソコン(バイオ)、バッテリーなどは部門ごと売却した。

 そんな厳しさはあっても、前社長兼CEOの平井一夫時代は、「エレキ復活」を掲げていた。ウォークマンなど輝かしいエレキ全盛時代の復興を望む、ソニーOBやソニーファンからの根強い声もあったからだろう。

 吉田社長に代わってからは、たとえ看板倒れであったとしてもエレキ偏重の発言は少なく、今回の組織改編に当たっても、「多様性は経営の安定性」などと、グループ経営の重要性が強調された。

 エレキ事業にソニーの“のれん”は譲って、祖業のプライドは傷つけない。されど本社からは切り分けて、グループの一事業としてこれまで以上に冷徹にコントロールする。今回の組織改編からはそんなソニーの意思が垣間見える。

 奇しくもコロナショックにより事業別で最大のダメージを受けそうなのはエレキ事業だ。ソニーは21年3月期の営業利益で、20年3月期比50%以上減という悲惨な予想を立てている。吉田社長は経営方針説明会で「環境変化に応じた体質の強化にも取り組んで参ります」と意味深な説明をしており、リストラの四文字がちらつく。

金融の完全子会社化の是非
米GEはリーマンで大痛手

 前述のように、ソニーは金融持ち株会社のソニーフィナンシャルHD(傘下にソニー生命、ソニー損保、ソニー銀行)を完全子会社化する方針を示した。ゲーム事業、半導体事業、エレキ事業と肩を並べ、バランスよく利益貢献させるイメージだ。

 吉田社長は、「コア事業であるからこそ、ここ数年で複数回にわたり持ち分比率を引き上げた」と説明した。だが、2代前のCEO、ハワード・ストリンガー時代は非コア事業と位置付けられ、だからこそ07年に上場子会社となった経緯がある。ソニーフィナンシャルHDにしてみれば一連の扱いはソニーの“ご都合主義”以外の何物でもないだろう。

 それはさておき、金融事業への注力で思い起こされるのは米GE(ゼネラル・エレクトリック)の失敗だ。

 周知の通り、GEは08年のリーマンショックで、当時収益の柱になっていた金融事業が大ダメージを受け、その後、「メーカー回帰」に向かった。

 ソニーフィナンシャルHDの主力事業は個人向けの生命保険(ソニー生命)であり、中小企業向け融資やクレジットカードが主力だったGEの金融事業とはかなり異なるのは確かだ。金融事業とソニーが持つテクノロジーとのシナジーなど、吉田社長の説明にも一定の説得力はある。

 ただし、GEは金融事業の大ダメージから大構造改革を進め、数年後には創業以来続いた家電事業を売却した。

「多様性による経営の安定性」を強調する吉田社長によもやそのようなことはないだろうが、メーカーが金融事業に深入りすると足下をすくわれることを、歴史は教えている。

※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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