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クラウド版オーケストレーターや自動化業務の発見ツール、エントリ開発ツールなど投入

ロボットを作る人、使う人をつなぐUiPathのハイパーオートメーション

2020年05月28日 09時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

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 2020年5月27日、RPA(Robotic Process Automation)ソフトウェアを展開するUiPath(ユーアイパス)は新製品発表会を開催。ロボットを作る人と使う人をエンドツーエンドでつなぐ同社のハイパーオートメーションについて説明されたほか、クラウド型のオーケストレーター、「自動化の種」を発掘するためのツール、現場ユーザー向けの開発ツールなどの新製品がデモとともに披露された。

使い手と作り手をつなぐエンドツーエンドの自動化

 発表会の冒頭登壇したUiPath 代表取締役CEO 長谷川 康一氏は、急拡大するRPA市場においてマーケットリーダーとなっている現状をアピール。海外の調査会社からはリーダーポジションを獲得しており、日本でも顧客満足度や売上シェア、大企業での浸透率などで第一位になっていると説明した。

UiPath 代表取締役CEO 長谷川 康一氏

 ルーマニアで起業され、現在は北米に本社を持つUiPathだが、「A Robot for Every Person」というグローバルビジョンは日本から生まれたものだという。「RPAのプロジェクトはロボットを作るこなすことではなう、ロボットを使いこなす人財を育て、その人財を活躍させる組織を作ることである。これは日本のお客さまから学んだこと」と長谷川氏は語る。ロボットを使いこなす人財が生まれることで、はじめて人間は3M(面倒、マンネリ、ミスができない)という作業から解放され、より生産的で創造的な仕事にシフトできるという。

 このA Robot for Every Personを実現すべくUiPathはRPAとAIを組み合わせた製品群を用意している。具体的には業務の発見、ロボットの開発、管理、実行、協働、測定などの各フェーズにおいて16種類もの製品を用意しており、「使い手と作り手をつなぐエンドツーエンドの自動化を実現するハイパーオートメーション」を実現するという。

UiPathのハイパーオートメーションを支える製品群

 ポストコロナに向けた取り組みも披露した。先日は新型コロナウイルス感染症対策に関するRPA・AIの利活用のため、内閣官房との協働取り組みを開始し、西村国務大臣と日本マイクロソフトの吉田社長とともに協定締結を行なった。そして、これまでの当たり前ができなくなった状態でも事業継続が可能になるように、紙を必要とする商習慣や印鑑が必要な契約形態など会社や社会を変える必要がある説明。その上で、「Web会議やチャットの導入など、対処療法的にデジタル化しても効果は限定的。対処療法で終わるのではなく、次世代の業務を実効的に作るべき」と訴えた。

 新しい働き方を提唱するUiPathとしては、ロボットを使いこなすいわゆる「ロボ人財」を組織内に育てることで、リモートワークであってもさまざまな作業をロボットが行なえる環境を実現。「在宅勤務でもロボ人財とロボが協働することで、危機対応を強化できる。業務のボリュームが増えても圧倒的なスピードで処理を完了することが可能になる」と長谷川氏はアピールした。

UiPathの考える新しい働き方

紙のフローをデジタル化・自動化することで大きな業務時間の削減

 続いて登壇したUiPath マーケティング本部 プロダクト&イベントマーケティング部 部長 原田 英典氏は国内事例を紹介した。

UiPath マーケティング本部 プロダクト&イベントマーケティング部 部長 原田 英典氏

 1件目の事例である日清食品は得意先への「出荷案内リスト」のFAX送付をRPAで自動化した。従来、同社ではシステムから出荷案内リストを印刷し、出荷別ごとに手動で仕訳し、FAXでそれぞれ送信していた。そこで出荷案内リストをPDF化し、出荷先ごとの仕訳とFAXの送信をUiPathで自動化した。在宅勤務であっても、ボタン1つですべての作業が自動で完了し、月で170時間の作業時間の削減が実現したという。

日清食品の出荷案内リストのFAX送付をRPA化

 2件目として紹介されたのは茨城県で、新型コロナウイルスの感染症拡大防止におもなう休業協力金の申請処理をRPA化したという事例だ。今までは紙の申請書を担当者が目視で確認し、支給先情報をシステムに手入力していた。しかし、UiPathのAI-OCRで紙の申請書を自動読み取りし、システムの記入や支払い処理システムと連携させることで、1処理あたりにかかる時間は約8割削減されたという。

 どちらの事例も既存のビジネスフローやシステムにあまり手を入れず、迅速に自動化を実現した好例。新型コロナウイルスの対応という観点でも、RPAやAIを活用した自動化が大きな効果が得られるようだ。

ハイパーオートメーションを実現する新製品を続々投入

 同日、ハイパーオートメーションを実現するいくつかの新製品・サービスも投入された。

 正式稼働開始が発表された「UiPath Automation Cloud」は、UiPathが提供するRPAとAIの機能をクラウド上で提供するもの。第一弾として、RPAの導入から運用保守まで高度な自動化を実現するSaaS版Orchestrator機能の販売を開始。2020年はハイパーオートメーションをクラウド化していくことにフォーカスし、パートナーとの共創プログラムも推進していう。

 また、「UiPath Process Mining」と「UiPath Automation Hub」は自動化できる業務を発見するプロセスで利用する製品。Process Miningでは、エンタープライズアプリケーションのログからプロセスの始まりから終わりまでの流れを分析し、ワークフローを可視化。ボトルネックを特定した上で、投資対効果の高いRPAを提案するというIT部門向けの「発掘ツール」になる。

 一方のAutomation Hubは、社内で発見された自動化のアイデア(パイプライン)を社内で共有するためのプラットフォームになる。前述したProcess Miningで発掘されたパイプラインはもちろん、業務部門のエキスパートが「Task Capture」で抽出したパイプラインを共有し、ロボット開発へのアイデアにする。現時点でも既存の700社、4000個のアイデアが集約されているという。

自動化可能な業務の発見プロセス

 さらに開発ツールとして「UiPath StudioX」の提供も開始される。従来から提供されているRPA開発者向けの「UiPath Studio」に対して、UiPath StudioXは業務部門向けの開発ツールで、シンプルなユーザーインターフェイスと使いやすさが売りとなっている。単純業務の自動化に必須な機能にフォーカスし、Excelのセルで変数を代替することで初心者でも安心して使える。当然、学習コストも低く抑えられ、数十時間かかるUiPath Studioに対して、UiPath StudioXでは約5時間で活用できるという。StudioXで作ったロボットをStudioで編集できるという特徴も持っている。日本語にも完全対応する。

発見と開発のプロセスにおける新製品の位置づけ

 これらAutomation Cloud、Orchestrator、Process Mining、Studioを活用した住宅会社オープンハウスの事例も披露された。OrchestratorによってG SuiteとUiPathを連携したワークフローを構築することで、作業時間のみならず、開発工数の削減も実現したという。

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