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DIY葬儀に注目集まる、安くても「故人らしく」見送る弔い方とは

2020年05月06日 06時00分更新

文● 真島加代(ダイヤモンド・オンライン

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厚労省が発表した2018年の「人口動態統計」によると、年間の死者数は136万人を超え、戦後最多を記録した。葬儀の件数も当然増加しているが、葬儀の形式は多様化の時代を迎えている。そして昨年、駒草出版から出版された『DIY葬儀ハンドブック』は、これまでの葬儀概念を覆す存在になりつつあるという。(清談社 真島加代)

専門業者とDIYの
“ハイブリッド葬儀”が理想

どこまでを葬儀社に任せるか、また、菩提寺との関係性などによって、葬儀代金は大きく変わってくる Photo:PIXTA

 近年耳にする「DIY」という言葉。専門業者の手を借りず“自分で行う”ことを意味する「Do It Yourself」の略語であり、DIY家具やDIY結婚式など、さまざまなモノやコトがDIYされている。そんななか、葬儀を自分の手で行う方法を記した『DIY葬儀ハンドブック』(駒草出版)が登場し、注目を集めている。

 同書には臨終時の対応や、遺体を自宅で安置する際に必要なドライアイスの量、葬儀社の選び方など、さまざまなテクニックが事細かにつづられている。

「DIY葬儀とは、その名の通り『できることを自分でやる葬儀』を指します。親の葬儀などで、いざ自分が喪主になったときに参考になるように、葬儀にかかる費用や段取りをなるべく具体的に紹介しています。DIYはしないまでも、葬儀社に法外なお金を請求されないように、事前に備える入門書としても活用できます」

 そう話すのは『DIY葬儀ハンドブック』の著者、松本祐貴氏。特に近年は、葬儀形式が多様化しているため「知識を身につければ、賢くお金を使って葬儀を行えるはず」と松本氏は話す。

「1980〜90年頃は『一般葬』と呼ばれる葬儀が主流でした。一般葬は大きな式場を借りて30人以上の参列者が訪れるため、費用も60万〜300万円と高額ですが、香典で費用の一部を補填できるのも特徴です。90年代頃には、心ある親族と仲の良かった友人だけが集まる『家族葬』が登場しました。通夜と告別式も行うので60万〜150万円ほどかかりますが、香典の収入は少ないので喪主の自己負担になります」

DIY葬儀でネックに
なるのは「遺体の搬送」

 2000年代に入ると、都市部を中心に通夜・告別式をせずに自宅や安置所から直接、火葬場に行く「直葬」の割合も増えているという。葬儀形式が多様化している背景には「高齢化と死者数の増加が関係している」という。

「2018年の日本人の死者数は136万人で戦後最多を記録し、葬儀の数自体は増えています。しかし現代は、誰もがお金のかかる一般葬を行えるわけではないので、喪主の経済事情を踏まえて直葬が登場したようです。故人が90歳を超える高齢者の場合も、葬儀に呼ぶ知人や兄弟もすでに他界しているため『直葬』を選ぶ傾向がありますね」

 最近では、白と黒の鯨幕が張られるような大規模な一般葬は珍しくなっているという。時代の変化が葬儀形式に反映されているのだ。

 あまたある葬儀形式のなかでも、DIYと親和性が高いのは「直葬」。遺体の搬送、処置というプロの領域まで踏み込めるのならば、自治体の補助金を受け取って、3万円以下で火葬まで行えるケースもあるそう。最低でも数十万円かかる一般葬に比べるとかなりのコストカットだが、葬儀をすべてDIYにするには、それなりの“覚悟”が必要だという。

「DIY葬儀には、いくつかのデメリットがあります。まずひとつは、ハードルの高さです。特に、ご遺体の搬送には特別な車が必要で、亡くなった場所から安置所、火葬場など何度か移動があるので体力がないと難しいですね。搬送を専門にした業者に依頼する方がいいです」

 そのほか、遺体の処置や安置などの難しい工程も、プロの手を借りて行うのがベター。業者に頼んだ場合も、20万円以内に収められるという。ただし、業者の手配もすべて自分でやらなければならないので、その分の手間や労力、精神的負担もかかる。

「理論上は3万円以下に収められますが、現実的には難しいと思います。なので、個人ができる部分と、業者や葬儀社に頼む部分を判断する知識を身につけて、遺された人が納得のいく金額で故人を見送れるようになるのが理想です」

お布施を“節約”するには
どうしたらいいのか

 完全なDIY葬儀をするには、「親族は喪主だけの高齢者」で、「菩提寺と縁を切る」ことができていないと難しいようだ。

 しかし、「葬儀社に頼む場合でも、一部をDIYしたり節約したりすれば、賢くお金が使える」と、松本氏は話す。

「葬儀の工程で節約するとしたら、僧侶に支払うお布施と戒名料、そして食事代です。お布施の相場は、寺の格や地域によっても大きく異なりますが、あえて無理やりお布施の相場を出すと『20万〜40万円』ほど。節約をするなら『お布施』ですが、先祖代々の墓がある菩提寺に『お布施を負けてくれ』とは言いにくいですよね」

 ただし、家計事情もおもんぱかってくれる僧侶もいるという。ちなみに、松本氏が喪主を務めた際は「戒名料とお布施込みで25万円」と僧侶に掛け合い、その値段で進めたという。

「僧侶からお布施の金額を提示することはできないため、私のように喪主側の言い値が通ることもあります。初めは渋い顔をされましたが(笑)。ただ、お布施や戒名は故人への想いにも関わる部分なので、難しい面もあると思います」

 葬儀社を選ぶ際には、事前に相見積もりを取っておくと安心である。

「いざ葬儀の段階になって、各社から相見積もりを取るのは至難の業なので、事前に決めておくのがベストですね。また、故人や喪主の想いをくんだアドバイスをくれる葬儀担当者かどうかも重要なポイントです」

父の好物を通夜振る舞いに…
DIY葬儀の原点

 松本氏は3年前に父を亡くして喪主を務めた経験があり、『DIY葬儀』を執筆するきっかけになったという。

「当時、葬儀の知識は一切なかったので『まず何をすべきか』が、わからなかったんですよね。結局、ネット系の葬儀社にひっかかってしまい、言われるがまま葬儀をして僧侶を呼びましたが、疑問に思うことも多々ありました。事前に葬儀の大まかな流れがわかる本があれば、もっと違う形で父を見送れたのにと感じました」

 悔いが残る葬儀ではあったが、そんななかでも、通夜振る舞いの食事は“父が好きだった老舗うどん屋の弁当”を持ち込み、こだわりを貫いたという。松本氏は「無自覚のうちに葬儀の一部をDIYしていました」と、当時を振り返る。

「父はとても食にうるさい人で、葬儀社と提携している飲食店の仕出し弁当などはひと口も食べないタイプでした。なので『自分の通夜振る舞いや精進落としが仕出し弁当だったら、父は嫌がるだろうな』と、故人の気持ちが想像できたんです。しかも、食事代は葬儀社の葬儀費用に含まれていなかったので、父が好きだった店の味にしようと考えて、自分で弁当を発注しました」

 松本氏の持ち込み弁当は参列者からも好評で「生前はお父さんとこのお店に行ったことがあるよ」など、思い出話に花が咲いたという。この経験が「DIY葬儀」の原点になっている。

「葬儀費用を安くするという部分が注目されがちですが、DIY葬儀には“自分らしく故人を見送れる”というメリットがあります。実際の例では、ワイン好きだった故人のために、告別式の代わりに、知り合いを自宅に呼んでワインパーティーを開いた人もいます。パーティー会場には祭壇もなく、僧侶もいませんが、故人への深い愛を感じますよね」

 松本氏は「気が引けるかもしれませんが、両親に理想の葬儀について聞いてみると意外なリクエストがあるかも」とアドバイスを送る。賢くお金を使いつつ、故人の想いをくんだお別れをするDIY葬儀が、葬儀のスタンダードになる日も近い?

※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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