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女性起業家を阻む3つのハードルとは?

完全副業・時短で女性起業家を羽ばたかせる日本発スタートアップファクトリー

2020年05月11日 09時00分更新

文● 松下典子 編集●北島幹雄/ASCII STARTUP編集部

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 株式会社uni'que(ユニック)は、“女性向けのサービスしかやらない”“全員副業”など一風変わった働き方が話題のITベンチャーだ。2017年に創業し、同年にオーダーメイドネイルサービス「YourNail」をリリース。時短でオシャレが楽しめることが働くママ層に受け、国内最大級のネイルサービスへと成長し、4月30日に株式会社YourNailとして分社化を果たしている。

 また、2019年9月には女性起業に特化したインキュベーション事業「Your(ユア)」を開始し、プログラムから生まれた新サービス「wakarimi」をスタートさせた。同社CEOの若宮和男氏に、女性に特化したサービス、女性起業家のサポート、副業の推進といった活動に取り組む理由を伺った。

株式会社uni'que(ユニック)CEO・若宮和男氏

働く量とバリューは比例しないことを証明したい

 「女性起業家支援」や「副業」と聞くと、まるで社会貢献活動のようだが、これらをミッションに掲げるのは、当然、そこにビジネスとしての勝算があるからだ。若宮氏は、NTTドコモで8年、DeNAで3年と、10年以上新規事業に携わってきた。近年ヒットしたinstagram、LINE、メルカリなどのサービスは、いずれも女性のニーズをつかんでいる。女性が主体でサービスを作れば、より女性のニーズにマッチした事業になるのでは、と考えたのがuni'que創業のきっかけだ。

 全員副業のルールも創業時から決めていた。日本の企業は、働く量で評価される文化が根強い。どんなに男性の育児参加が進んでも、出産や産後の女性の負担は大きく、働く量では男性が有利になりがちだ。

 「同じバリューが出せるなら時短のほうが断然いいはずなのに、産休明けに時短勤務をする女性は肩身が狭そうにしている。働く量とバリューが比例しないことを証明するため、副業を強力に推進することを最初のルールにしました」と若宮氏。

 全員が副業なら、誰にも引け目を負うことがなく、純粋にバリューを追求できる。メンバー全員副業のルールを徹底するため、若宮氏自身もランサーズにタレント社員として雇用契約をしており、事業戦略などのアドバイスを副業として実践しているそうだ。

女性起業家を阻む3つのハードル

 全員副業でサービスを作るノウハウを貯めて、2019年にスタートしたのがインキュベーション事業「Your」だ。副業なので、別の会社に勤めたまま、あるいは子育て中でも、副業で事業の立ち上げにチャレンジできる。一般的なインキュベーション事業のプログラムと異なるのは、起業家本人が会社を立ち上げるのではなく、最初はuni'que内で事業化する点だ。

 若宮氏によると、女性の起業家には3つのハードルがあるという。ひとつは「システム開発」、2つ目は「株式や財務」、3つ目が「労働環境」だ。

 「いいアイデアがあっても技術や財務に疎いと事業化は難しい。ベンダーの技術力を見極められるだけの知識がなければ、費用ばかりがかさみ、質の悪いシステムになってしまう。そこで、プログラムの中で6ヵ月勉強するよりも、自社の中で先に事業を立ち上げて、伴走しながら経営を学んでもらうほうがいいと考えました」と若宮氏。

 Yourのプログラムでは、経営ノウハウと資金を提供し、事業を進める中で財務とシステム開発を実地で学んでいくのが特徴。事業が軌道に乗れば、分社化して独立してもらう形だ。4月30日に分社化した「YourNail」もその好例。代表取締役に就任した村岡弘子氏は、現在もNTTドコモに勤務しながら、副業で事業を進めていくことになる。

 「Your」では、4月15日にサービスインした「wakarimi」に続き、食系サービスやHR系のプロジェクトが進行中だ。「Your」のプログラムには、資生堂のオープンイノベーションプログラム「fibona」やPlug and Play Japanのサポートを得るなど、徐々にCVCや投資家も関心を示している。着実に結果を出し、実例を増やしていけば、女性起業家や副業が社会に受け入れられていくだろう。

YourNail

wakarimi


 今の日本の企業は構造的に、アイデアがあっても事業化のチャンスがなかなかない。若宮氏が前職で新規事業を担当していた当時も、女性発案のいいアイデアはあったが、マネージャーが男性なので、女性のニーズが理解できずに企画が通らないことが多かったそうだ。そんな若宮氏自身も男性だが、3人の姉妹に囲まれて育ったため、若宮氏は、女性独特のほわっとした意見が、なんとなくわかるらしい。わからなくても、とりあえず意見に従ってみると、いい結果になるのを原体験として知っているのかもしれない。

 「うちの会社はバンドスタイル。本人がやりたいと思ったら、決裁が通る仕組みです。マネージャーの仕事はプレーヤーを活用することであって、コントロールすることじゃない。野球部やタレントのマネージャーように、プレーヤーがベストパフォーマンスを出せるようにサポートするが大事です」と若宮氏。

シリコンバレー方式ではないスタートアップのEXIT

 スタートアップは短気的に大きくグロースしなくてはいけないからフルコミットが当たり前。若宮氏も「副業のみではうまくいかない」と周囲からさんざん言われてきたそうだ。確かに副業は、時間のやりくりや、マインドセットの維持に苦労する。しかし、副業によるメリットも大きい。

 一番のメリットは、優秀な人材がジョインしてくれることだという。優秀な人ほど、重要な仕事を抱えており、特定のスタートアップには転職してくれない。しかし、副業で週1日だけといった枠組みなら即決してくれたりする。そしてスタートアップは事業戦略のピボット(方向転換)も早い。ある程度成長するまでは、人材は流動的にしておいたほうが固定費を抑えられる。また、外の情報や副業先の業務とのシナジー効果、広いネットワークによるメリットが得られるのも副業のメリットのひとつだ。

 そもそも世間一般に言われている「スタートアップ」はシリコンバレー発のやり方だが、今はファンドの規模が大きくなっており、大型のバイアウトのケースが少ない日本ではIPOでのEXIT前提でなければVCも出資しづらい。この形は徐々にこれからの日本には合わなくなってくるのでは、というのが若宮氏の考えだ。

 「IPOを目指すのもいいが、日本はもっとバイアウト(M&A)のケースが増えたほうがいいと思っています。シードで1億円調達して、企業価値が2桁億円程度だとバイアウトはほとんど不可能でしょう。IPOでもダウンラウンドになってしまうかもしれない。シード期のバリュエーションは1億円に留めておいて、一桁億後半のバイアウトのサイズが買う側としてもちょうどいいのではないでしょうか」(若宮氏)

 事業は、瞬間的な資産価値の大きさだけではなく、長く継続することにも社会的価値はある。労働集約型ではないネットサービスでも、IPOを目指さない事業もあっていい。100億円のバリュエーションでIPOを目指すよりも、5億円のバリュエーションの事業を5本、10本と立ち上げるような起業家のあり方もこれからはもっと増えてよいのではないか。

 日本はこの先人口が減少し、右肩上がりの経済が続くわけではない。規模が大きくならなくても社会的価値のある事業、サスティナブルに回る成熟した経済を作っていきたいと若宮氏は主張した。

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