フレーバーだけでなく、デバイスそのもののデザインや質感にも徹底的にこだわりぬいた

今までになかった休憩体験を作るデバイスston開発の裏側 ─ BREATHER 御神村友樹CTOインタビュー

文●牧野武文/編集 ASCII

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 今までになかった休憩体験が得られることで話題になっているston(ストン)。カートリッジ内のリキッドを熱し、発生する蒸気からフレーバーや成分を楽しむというもの。もうひと踏ん張りしたい時には爽やかなミントフレーバーでカフェイン配合の「POWER」、気分を落ち着かせたい時には心安らぐココナッツフレーバーでGABA配合の「CALM」。2種類のカートリッジを気分に合わせて交換して楽しめるのも魅力だ。

 エンジニアやデザイナーの間で話題になっているのが、stonデバイスの完成度の高さだ。UI/UXにこだわり抜いたデザイン、製造技術の高さなどから、プロダクトとしても注目されている。

 そのstonの開発から量産までを指揮したBREATHER(ブリーザー)社の御神村友樹CTOに、stonデバイスの完成度の秘密を聞いた。

御神村友樹 CTO(獣医師)

 1988年生まれ。東京大学卒業。大手消費財メーカーで研究開発員として病態モデル開発(in vivo)、研究職採用業務等を担当した後、BREATHER株式会社の設立に参画。現在に至る。神奈川出身。

「休憩体験を魅力的なものにしたい」そこがすべての出発点

※本インタビューはオンラインにて行われたため、一部画像が鮮明でない場合があります。

──なぜ、stonのような斬新なデバイスを開発されたのでしょうか?

 私たちBREATHERのミッションは、「ひと休みをアップデートする」ということです。

 今、在宅テレワークをされて、仕事とプライベート、オンとオフのメリハリをつけるのが難しいと実感している方も多いのではないでしょうか。オフィスワークでもそうです。メールやメッセージなどの情報が絶えず飛び込んできて、Aという仕事をしているのに、Bの仕事をしなければならなくなるなど、仕事の切れ目がどんどん曖昧になってきて、仕事と休憩のリズムがとても作りにくくなっています。自分が知覚している以上に疲れている状態になっています。

 現代の働き方では、仕事の切れ目に休憩するのではなく、休憩は戦略的に取る必要があるのではないか。それにより、最適なリズムを作り、仕事の質を上げていくことにもつながるのではないか。その仮説から私たちは出発しています。

 しかし、そうは言っても「戦略的に休憩する」というのは簡単ではありません。そこで、私たちBREATHERは、休憩体験を魅力的なものにするプロダクトを提供したい。そこがすべての出発点になっています。

「手にした時の手触りの心地よさ」にもこだわりたい

──stonは、プロダクトの完成度の高さが話題になっています。例えば、LEDライトを目立たすのではなく間接照明風に使うとか、キャップをマグネットにして、正しい方向で閉めるとすっと引っ張られ、逆方向で閉めようとすると反発されて閉まらないなど、デザイン的に面白い工夫がいくつもされています。なぜ、ここまでこだわりを持ったデザインにされたのでしょうか?

 私たちBREATHERがやるべきことは、今までになかった休憩体験を創ることです。休憩体験を豊かなものに感じていただけるようにするためには、「ひと休みをアップデート」のコンセプトにこだわり続けて、それを妥協することなく製品に表現することが重要だと思いました。「stonを手にした時の手触り感の心地よさ」が大切で、stonを持っている自分が好きになれたり、stonを使う生活を送りたいと感じていただけるものにしたかった。それには、stonが工業製品に見えてしまうのは絶対に避けたかった。自然の中に溶け込むことができるデバイスにしたかったのです。

 デザイナーとディスカッションをする中で出てきたのが、「河原にあるひとつの小石」というイメージです。ふと拾って、ポケットに入れたり、掌におさめたくなるサイズ感。そして、河原の小石の手触り感。そういうものを大切にしています。

──stonというネーミングは、「小石」の意味ですか?

 そうです。それと「胸にストンと落ちる」というオノマトペとのダブルミーニングになっています。

 stonは丸い本体の中にバッテリーや基板などの電子パーツが収まっています。一般的に、こういうデバイスを作るときは、ケース部分を表と裏の2つに分けて、電子パーツをサンドイッチのように挟み込む形で製造します。でも、そうなると側面部分にパーティングライン(つなぎ目)ができてしまいます。stonは、自然の中に存在するものというコンセプトなので、それは絶対にあってはいけないことでした。

 それで、1枚のアルミ板を何工程にも分けて、少しずつプレスして丸めていき、途中で電子パーツを入れて、さらにプレスして成形するという難易度の高い製造法を採用しました。

 普通はやらない、やろうとは思わない製造方法です。さらに、電子パーツは四角いので、それを丸いボディに入れると無駄な空間が生まれてしまう。電気的な安全面を加味しながらその空間をどこまで攻めて、削っていけるのか。基板回路にも従来にない工夫が必要でした。小さなstonですが、開発ではものすごく大きなチャレンジをいくつもやっています。

──カートリッジは使い捨てであるのに、金属筐体になっていて、しかもネジを回して装着する仕様になっています。これもあまりない仕組みですね。

 私の責任分野は、開発、製造、品質保証の3領域です。開発でプロダクトの優位性が決まり、製造でプロダクトの信頼性が決まります。

 カートリッジの仕様/仕組みは珍しいものではありませんが、カートリッジを金属筐体にしたのは、コンセプト上高級感を演出したい、デバイス本体の質感に合わせたいということもありました。さらに、回して装着するというギミックも提供したかった。かと言って、装着するまでに何回も回さなければならないのでは体験が損なわれますし、短すぎてカートリッジが安定して装着できないというのもまずい。ネジの巻き数は何種類も試作をして、比較検討をしました。

 また、電気的な接点もある場所なので、金属クズが出るようなことがあると故障の原因にもなります。ネジの精度にもかなり気を使いました。

気分に合わせてひと休みの仕方を変えられる「吸引」方式を採用

──吸引摂取するstonは、電子タバコと比較されることも多いかと思いますが、電子タバコと同じカテゴリーのデバイスなのでしょうか?

 まったく違うんです。私たちBREATHERの原点は「ひと休みをアップデート」です。そこで最初は、頑張れるように飲むエナジードリンクのようなものを漠然と考えていたんです。ですから、最初は「飲むもの」を考えていたのです。

 でも、ディスカッションをするうちに、「ひと休み」って、いつも気合いを入れるものだろうかという疑問が湧いてきたんです。仕事の合間にひと休みをして気合を入れるということは多いでしょうが、落ち込んでいる時や緊張する時にひと休みして心を落ち着けるなど、ひと休みにもいろいろあるという話になりました。

 そうすると、1つのプロダクトで1つの気分転換じゃなくて、1つのプロダクトで複数の気分転換ができないと、休憩体験をアップデートしたことにならないという話になって、そこから中身を交換できるようなプロダクトアイデアが浮上してきたのです。

 ドリンクでは何種類もいつも持ち歩くことは難しいですよね。でも、stonであれば、デバイスとPOWERとCALMのカートリッジを用意していただければ、その時の気分に合わせて、もうひと踏ん張りしたい時には爽やかなミントフレーバーでカフェイン配合のPOWER、心を落ち着かせたい時は心安らぐココナッツフレーバーでGABA配合のCLAMと使い分けることができます。

 成分的にもタバコとはまったく別物で、どちらかと言えばエナジードリンクに近いんです。「吸うエナジードリンク」と考えていただくとわかりやすいかもしれません。

「吸う」エナジードリンク

──カートリッジの中身はどんな成分が入っているのでしょうか?

 一言で言えば、フレーバーとカフェイン、もしくはGABAの成分が配合されています。stonは食品添加物として認められている成分のみを使用しています。もちろん、過去の臨床研究等の公知情報をベースに、健康懸念が出ないとされている情報を確認していますが、それだけでなく、摂取方法の差異に関する文献情報等を参考に、大幅な安全マージンをとった自主基準を設けています。フレーバーの味わいや香りの強度ももちろん大切ですが、お客様に安心してご使用頂くための基準設定は厳しすぎる方が良い、というのがBREATHER社の考えです。

 このレシピ調合も簡単ではありませんでした。必要な成分とフレーバーをただ混ぜればいいというわけではなく、製品化するためのさまざまな条件を最適化するのには時間がかかりました。他にも検討段階でのアイデアはありましたが、製品化するための条件をうまく見つけることができたのがPOWERとCALMの2種類なんです。

 stonを吸引していただくと、煙が出ますね。あれは煙と言っても、正確にはただの蒸気です。この蒸気が見える吸引法と見えなくする吸引法があるんです。吸って口で吹かすように吐くと蒸気が見えます。一人でゆっくりと落ち着きたい時は、蒸気をだすことで休憩体験が豊かなものになるという方もいます。一方で、深く吸い込むようにすると、蒸気は見えなくなります。周りに人がいる環境などでひと休みする場合を想定しています。吸い方によって、蒸気を見せたり、見えなくしたりできるんです。

 これは、意図的にそうなるようにレシピ調合しています。これも休憩体験を豊かなものにするための演出のひとつだからです。

ハードワーカーや接客業に支持されるston

──現在stonはどのような方々に使われているのでしょうか?

 第一に、ハードワークをする人です。勤務時間と仕事の成果が比例関係にはない働き方をされる方。職業で言うと、エンジニア、デザイナー、コンサルタントなどが多いです。企業内では商品企画や販促企画を立案されるような方々です。

 また、吸引という新しい摂取方法であることから、新しいものに対する好奇心が強い方に受け入れられていると実感しています。そういう方々が実際に日常の中でstonを使う姿が見られるようになり、それを見た人が使ってみるかどうかを吟味し始めているという段階だと感じています。私たちBREATHERも、そういう方々に対して、stonを体験していただける場を提供するなど、吟味している最中の方の背中を後押しできるプロモーションを実行することを検討しています。

 また、私たちにとっても少し意外だったのが、接客業の方の間でもstonが受け入れられていることです。長時間アテンドをするような接客業では、ストレスがたまる仕事であるのに、自分のタイミングではなかなか休憩時間が取れません。そういう方が、数分の隙間時間にstonで気持ちを切り替えるという使い方をされているようです。

 また、面白いところでは、職業ドライバーの方にも広まり始めています。トラックドライバーの方などは、缶コーヒーを飲まれる方が多いそうなのですが、よくトイレに行きたくなる。それが困るので、stonに変えたという方がいらっしゃいます。

 いずれの方も、私たちBREATHERの「戦略的にひと休み」という考え方に共感をしていただけていると感じています。

 stonのプロダクトとしての完成度の高さは、写真などからはなかなかわかりづらいかもしれない。手触り感が決め手のプロダクトだからだ。BREATHERでは、興味を持たれた方に触れていただく機会をできるだけ用意していきたいという。見かけた時は、ぜひ手にとって、キャップの開け閉めをしてみていただきたい。その数秒だけでも、stonのプロダクトとしての完成度、デザインのレベルの高さが感じられるはずだ。

(提供:BREATHER)

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