世界を席巻している新型コロナウィルス。
いつまで続くのか先行きもわからないが人々の営みはその中でも続いていく。音楽やオーディオの世界も例外ではない。本稿ではすでに都市封鎖(ロックダウン)が進んでいる海外の事情から新型コロナウィルスと音楽の関係性を考えていこうと思う。
音楽ストリーミングサービスの再生数は減少傾向に
ロックダウンによって音楽ストリーミングサービスの再生数はどう変化したのか。動画配信などとは対照的に再生数が大きく減少しているという結果も出ている。みなが家に閉じこもるロックダウン下ではストリーミングの再生回数は増えると思いがちだが、そう単純ではないようだ。
3月のデータはどうだったのか。3月30日付の「Music Bussiness World Wide」誌の記事によると、Soptifyの再生回数が前週に比べて3%上昇したが、実のところこの週にリリースされた人気バンド「The Weekend」の"After Hours"を考慮すると期待よりも少なく2020年に入ってから3番目に低いということだ。
特にイタリアでは3月9日にロックダウンに入ってからSpotify ChartsのTop200としては最低であり、ワールドワイドで見てもおそらくは「The Weekend」のアルバムリリースがなければ最低の再生回数になったであろうとしていた。アメリカではTop200以外のランキングでは、このアルバムがあっても今年度に入って2番目に低いストリームカウントだという。
同じ記事の中でSpotifyのライバルである「Deezer」のコメントも引用されている。3月2日から3月22日までのアクセスを分析して、ロックダウン当初はアクセスが下がるが次の週からまた上昇したので、人々がロックダウンという新生活に慣れるのにおよそ10日かかるだろうと推測している。イタリア、フランス、イギリスはおおよそこのパターンに沿うという。また再生のピーク時間が午前7時から9~10時にシフトしているという指摘も興味深い。
音楽を聴く場所の変化が再生数に影響している
ロックダウン下で再生回数が伸びない原因としてはSpotifyの再生機器が主にモバイル機器やスマホであるからだと考えられる。つまり通勤やジム通いが減ると、モバイル機器の使用頻度が減ってしまい、再生回数も伸びないのではないだろうか。
また欧州市場ではこれに伴い、ストリーミングの再生機器の主流がモバイルからホームデバイスに移りつつあることも示唆され、コンテンツも音楽だけではなく料理やフィットネスのポッドキャスト、子供向けのコンテンツなど家庭内生活に役立つようなものが増えているとする。また、人々のこうしたライフスタイルの変化には時間がかかるということも推測できる。
ストリーミングで広げ、ライブで稼ぐスタイルに変化が
一方でミュージシャンはどうだろうか?
音楽業界の定額制ストリーミング(サブスクリプション)を中心にしたビジネスモデルはミュージシャンをライブで稼ぐ方向にシフトさせたと言われる。そこに新型コロナウィルスが襲った形となる。ライブが開催できなくなれば、ミュージシャンを八方塞がりの状況に追い込んでしまいかねない。
4月5日付の「Newyork Post」誌の記事は、"ミュージシャンのライブストリーミングから新しいビジネスモデルが生まれるかもしれない"と言及している。イギリスのロックミュージシャンYungbludの例を挙げ、彼のUSツアーやアジアツアーがことごとくキャンセルされた後、彼はファンのためにライブミュージックのみならず、クッキングレッスンやゲームも含めた「ショウ」を彼のアメリカの仲間たちとYouTubeチャンネルで開催した例が記事にされている。
これを30万人が視聴したが、その数は3個のスタジアムに相当する人出だと語っている。今後、彼はイギリスで同様なショウを計画しているという。この模様は下記のYouTubeチャンネルで見ることができる。
いまのところは主としてチャリティーを目的としているが、ビジネスチャンスと考えることもできるのではないかというわけだ。
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