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ASCII STARTUP イベントピックアップ 第71回

2020年2月開催の「GET IN THE RING OSAKA 2020」レポート

グローバル化を目指す日本農業が優勝 ボクシング形式のピッチ大会

2020年04月09日 09時00分更新

文● BookLOUD 根本 編集●ASCII STARTUP 撮影●曽根田元

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 グランフロント大阪のナレッジシアターで2020年2月20日に、ピッチイベント「GET IN THE RING OSAKA 2020」が開催した。

 「GET IN THE RING」は2012年にオランダで始まった起業8年以内のスタートアップ企業によるピッチ(自社の事業計画や将来性を短時間で表現するプレゼンテーション)コンテストで、世界100ヵ国でその予選が開催されている。各国予選を勝ち抜いた企業は世界大会への出場権を得る。2020年はカナダのモントリオールで開催される予定。「GET IN THE RING OSAKA 2020」は、その大阪予選だ。

 残念ながら「GET IN THE RING OSAKA 2020」は新型コロナウイルス感染症による影響を考慮し、一般観覧が中止となった。なお、イベントの模様はYouTubeで公開されている。

 

「GET IN THE RING OSAKA 2020」とは?

 「GET IN THE RING OSAKA 2020」の特徴はそのピッチスタイルにある。ボクシングリングを模したステージで、ピッチはふたつの企業によるバトル形式だ。ステージにはボクシングにおけるレフェリーのようなリングマスターも登壇しており、自社紹介と5ラウンドに分割されたピッチの合間合間にリングマスターのコメントが入る。登壇者は自分のスピーチだけでなく、相手のスピーチも目の前で聞くことになり、そのプレッシャーは通常のプレゼンの比ではないだろう。そしてそれが来場者にとっては非常に臨場感のあるイベントとなっている。

 また、「GET IN THE RING OSAKA 2020」は企業評価金額(投資額・純利益・成長率等を元に判定)によってふたつのカテゴリーに分かれている。50万ユーロ以下がライト級、50万ユーロ以上がミドル級にエントリーされる。

 各企業からのエントリーは事前に審査され、数社が予選に招かれる。さらにイベント当日に審査員2名に対して3分間のピッチおよび3分間の質疑応答をし、そこで選ばれたライト級2社、ミドル級4社だけが観客の前でピッチができる本選へと進める。

 今年はライト級7社、ミドル級6社が予選に招かれた。

ライト級

  企業名 事業内容 本社
1 HoloAsh, Inc. ストレスや不安を和らげてくれるAIフレンドの開発 アメリカ
2 IPPLUS Technology Co., Ltd スタートアップが知的財産を作成、管理、商業化するためにカスタムされたシステム 台湾
3 株式会社funky jump コワーキングスペースに特化した顧客管理システム 日本(宮城)
4 WTF - Where's The Food レストランやカフェなどで、ウェイターを呼ばずに自分の携帯電話端末から商品を注文できるサービス インド
5 WToii Inc. 拡張現実(AR)と LBS(位置情報サービス)を使ったゲームの開発 台湾
6 株式会社MILE SHARE 世界の航空会社の活用できるポイント・マイルの、シェアリングサービス 日本(北海道)
7 株式会社Root はたけを遊ぶ!スマート体験農園システム開発 日本(神奈川)

ミドル級

  企業名 事業内容 本社
1 株式会社クォンタムオペレーション 光センサーで血糖値を取得するウェアラブル端末「バイタルバンドVer2」の開発 日本(東京)
2 Que Q Thailand デジタル支払いが可能な仮想チケットプラットフォーム タイ
3 株式会社HACARUS 解釈性の高いスパースモデリング技術を開発、Deep Learningの大量データ問題を独自のAIシステムで解決 日本(京都)
4 マイキャン・テクノロジーズ株式会社 マラリアやデング熱といった感染症の研究者に製造の難易度が高い血球細胞を提供 日本(京都)
5 EAGLYS株式会社 AI×秘密計算の研究開発を行ない、企業のデータ資産の活用を進める 日本(東京)
6 株式会社日本農業 日本の農産物の輸出や品種の保護 日本(東京)

 先に記載したように、本選に進んだ企業は2社ずつがリングに登壇し、バトル形式でピッチをする。ピッチの内容は、最初の1分間で自社の事業内容、サービス、製品について紹介し、続いて各30秒5ラウンドのピッチが始まる。ピッチは各ラウンドごとに順番を交代し、目の前で相手企業の話を聞くことになる。

 登壇した2社によるピッチが終了すると、3人の審判員による8分間の質疑応答が始まる。そしてその後すぐに勝者が決まる。このスピード感が「GET IN THE RING OSAKA 2020」の真骨頂だ。

 具体的なピッチの構成は以下のとおり。この構成はピッチイベントごとに異なると思われるが、これから起業しようとしている人、起業したばかりの人には参考にしてほしい。

■Round 01 : Team(30秒)
チーム編成を紹介し、メンバーの多様なスキルや経験など、なぜこのチームが独特で成功するかをアピールする。
■Round 02 : Achievements(30秒)
営業実績及び収益、カスタマー数、またパートナーや投資家との繋がりなど、今までに何を成し遂げたのかアピールする。ここで述べるのは「何を得たいか」ではなく、「何をすでに獲得したか」であることに注意が必要。
■Round 03 : Business model & market(30秒)
ビジネモデルや市場について、自社の戦略に加えて独自のセールスポイントなど、競合との違いを説明する。
■Round 04 : Financials & Investment Proposition(30秒)
財務状態と、どれくらいの投資を求めているのか、資金以外に何が必要なのかについて説明する。また投資家へのリターンなど、3年後、5年後を見据えてのアピールも求められる。
■Round 05 : Freestyle(30秒)
最後に自分が特に伝えたいことを、自由に熱量をもってアピールする。なぜ自分たちに投資をするべきなのかを投資家に納得させることが目的。

 本選ではいずれも数多くのスタートアップの発掘・育成に関わってきた3名の審判員によって審査される。

・小田嶋 Alex 太輔氏:EDGEof株式会社 代表取締役
・Tim S. Miksche氏:ドイツスタートアップ協会(German Startup Association)日本代表
・潮 尚之氏:ITPC (International Technology Partnership Center) Principal

 司会進行を担当するリングマスターはネイサン ブライアン氏。ITコンサルタント、テレビ司会者、ラジオDJとしての顔を持ち、「GET IN THE RING OSAKA」の名物司会者だ。

ネイサン ブライアン氏

 ライト級の本選に進んだのは米国に本社を置くHoloAsh, Inc.と日本の株式会社Rootの2社。

 HoloAshは、ストレスや不安を和らげてくれるAIフレンド(AIチャットボットの一種)を開発をしている。米国では約4,400万人が精神障害を持っているとされているが、セラピストへのアクセスの悪さやその高額な料金などの理由により、そのうちの半数以上が何の治療も受けていない。

 HoloAshのAIフレンドは、スマホなどを用いていつでもどこでも精神障碍者がサポートを受けられる。テキストではなく音声での入出力に対応しているのが特徴で、テキストでは伝わらないユーザーの心の中をテンポや抑揚を含む音声によって表現しようとしている。また、将来的には患者とセラピストと直接結ぶことも目指している。

 一方、Rootは小規模農家向けのスマート農業システムを開発している。農業体験プラットフォーム「Root Farm」では都市生活者が好きな畑を購入でき、遠隔で気温や降水量などを確認したり肥料や虫対策など指示したりする。小規模農家の安定した収入源となると同時に、都市生活者が自分で育てた収穫物を手にできるのだ。また、TwitterやLINEを通じて野菜ボットと会話可能なシステムを提供し、農業にゲーミフィケーションを適用したエンタテインメントコンテンツの創出も推進している。

 HoloAshのCEOは認知心理学の専門家であり、ヘルスケア分野や医療分野におけるアドバイザーも抱えている。またほかにもデータ解析や自然言語処理の専門家もメンバーにおり、開発体制に抜かりはない。

 4ヵ月前にモバイルアプリをリリースしており、すでに5000人のユーザーと25万の雑談データが集まっている。この分野のデータは、まだアマゾンやグーグルなどでも集めきれておらず、非常に貴重なデータと言える。

 収益源は、無料アプリのカスタマイズ開発と、セラピストとのオンライン対話などプレミアムサービスからだ。将来的には精神障碍者の音声チャットデータを集めたビッグデータもアプリを通じて収益化を狙っている。

HoloAsh, Inc.

 対してRootは2017年末に立ち上げたばかりで、現在スタッフ1名の体制となっている。AIエンジニアを見つける必要を感じているが、なによりも農業が好きなことが前提となっていることがハードルを上げているかもしれない。

 すでに1万人のユーザーを抱える企業と提携しており、スマホで農業体験を楽しめるシステムを提供する。都会生活者の農業体験となると年間100億円程度のニッチビジネスだが、大企業には参入しづらく、スタートアップには十分という適切な市場規模と考えている。

 審判員から出された「なぜほかでもなく、あなたがそれに取り組まなくてはいけないのか?」という質問に対し、「私は農業が好きなんです。私自身が農家であり、情熱を持って取り組んでいるからです」という回答が印象的だった。

株式会社Root

 これら2社によるピッチバトルの勝者はHoloAsh, Inc.となった。審判員からのコメントとしては、何があってもあきらめない熱意、ひとつに決めたらとことんやり切るという集中力が挙げられていた。HoloAsh, Inc.の今後に期待したい。

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