今回はHPから独立したAgilent Technologiesの続きだが、その前に連載552回の最後に紹介したXeroxによる敵対的買収の話を書こう。
Xeroxが敵対的買収を断念
Xeroxは3月31日、HPの買収を断念する旨の発表を行なった。理由はCOVID-19である。
3月に入るまで、おおむね30ドル台を維持していたXeroxの株価は、3月に入ってから急落。直近の株価は16.9ドルと、そもそもHPの買収提案を行なった昨年11月21日の株価(38.69ドル)から半分未満に下落している。
ここまで下落すると、当初の買収提案(HP株を1株あたり17ドルの現金と残りはXeroxの0.137株と交換で22ドル相当)が成立しない(ほぼ0.3株相当までXerox株を増やす必要がある)。
ただそれ以前にCOVID-19の影響を受けてXeroxも急速に売上を落としているようで、とりあえず手持ち資金を増やすべく、金融機関からの借入を増やす必要がある。ところがここでHPの買収のために240億ドルもの借り入れをしてしまうと、同社のクレジットライン(信用供与枠:要するに借り入れできる限度枠)をほぼ使い切りかねない。
仮にCOVID-19に起因するロックダウンや不況が長引くようだと、手持ち資金を使い切って「買収には成功したけどそのまま倒産」という笑えない状況に陥りかねない。そのあたりを勘案して、今回の買収は断念したようだ。
これにともない、XeroxはHPの株式総会で取締役入れ替えの提案を行なう予定だったが取り下げ、TOB(株式公開買付)も取り下げた。
もっともリリースの最後では「XeroxとHPの合併は長期的には財務および戦略的なメリットがある」としており、あくまでも今回は断念したものの、将来的にはまだ同様の手段を取る可能性が残っていることを匂わせている。
ただ仮に同種のことを再び行なおうとすると、少なくとも2021年の株式総会まで待つ必要があるわけで、とりあえずEnrique Lores氏には1年あまりの、買収提案に対抗できる環境づくりの時間がプレゼントされた形だ。
もっともLores氏にとってもCOVID-19の対応は急務であり、XeroxほどではないにせよHPも株価を落としているわけで、まずはこちらへの対応で当面は手一杯であろう。
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