前へ 1 2 3 次へ

Webサイト管理者のための2020年版“IPv6対応入門”第1回

Webサイト管理者やWebサービス事業者、アプリ開発者に「IPv6対応」を進めてほしい理由

なぜいま、あらためて「IPv6」を学ばなければならないのか

文●大塚昭彦/TECH.ASCII.jp 監修● 久保田 聡/日本ネットワークイネイブラー

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

はじめに:皆さんはIPv6を「使って」いますか?

 読者がWebサイト管理者やアプリケーション開発者といった立場であれば、「IPv6」という言葉そのものは耳にしたことがあるだろう。「インターネットプロトコル バージョン6」の略語であり、インターネット通信で使われる標準的なプロトコル(通信規格)の現行最新バージョンだ。

 では皆さんは、IPv6についてどのくらいの基礎知識をお持ちだろうか。「IPv4の次のバージョン」「IPv4よりもたくさんのIPアドレスが使える」ことなどは、なんとなくご存じなのではないか。「10年ほど前によく話題になっていたな」などと思い出す読者もいるかもしれない。

 それでは皆さんはいま、IPv6を使っているだろうか。そう聞くと「使っていない」あるいは「わからない」という方が大半ではないだろうか。Webサイトを構築したりアプリケーションを開発するうえでも、あまり意識したことがないかもしれない。それでも、現実にはインターネットにアクセスしたり、Webサイトを構築/開発したりすることができている。「それならば、わざわざIPv6について学ぶ必要はないのでは?」と思われるかもしれない。

 だが、インターネットを取り巻く状況は大きく変化し続けている。いまこそIPv6について最低限の知識を学び、それをふだんの業務の中でも生かしてほしいというのが、本稿のメッセージである。

 まず今回は、「なぜいまIPv6を学ぶべきなのか」について考えてみたい。

IPv6の登場をめぐる歴史、IPv6移行の現状

 そもそもなぜIPv6が登場したのか。ここに大きく関わるのが、前バージョンのIPv4で発生した「IPv4アドレス枯渇」問題である。よく知られた話でもあるので、ここでは要点だけかいつまんで説明しておこう。

 インターネットでパケット(データ)をやり取りする際には、パケットに「宛先」や「送信元」の情報を書き込まなければならない。このインターネット上での“住所”にあたるのがグローバルIPアドレスだ。

 パケットが正しい相手に届くためには、インターネットに接続する個々のノード(サーバーやルーター、クライアントなど)に割り当てられるグローバルIPアドレスは、世界中で重複することのない、ユニークな(唯一の)ものでなくてはならない。しかし、インターネットが世界中に普及して接続ノード数が急増したため、IPv4を使って割り当てられるグローバルIPアドレス数の限界を超えてしまった。これが「IPv4アドレス枯渇」という現象である。

 アドレスが不足するようになった理由は、IPv4アドレスを表す数字列の桁数がもともと小さかったためだ。具体的には、IPv4アドレスは「32ビット」(2進数で32桁)の数字列であり、最大でも約43億個しか確保できない(実際に割り当て可能なグローバルIPv4アドレスはさらに少ないが、ここでは単純化して説明する。次のIPv6アドレスも同様)

 この制約を解消するために、新たに「128ビット」(2進数で128桁)でIPアドレスを表すIPv6が策定され、標準化された。下の数字を見比べてほしいが、IPv6アドレスの数はまさに“桁違い”に大きいわけだ。

・IPv4アドレス:4,294,967,296 個(2の32乗個)
・IPv6アドレス:340,282,366,920,938,463,463,374,607,431,768,211,456 個(2の128乗個)

 こうして、IPv6を使ったインターネット(IPv6インターネット)への移行が始まった。ただし、これまでのIPv4インターネットが廃止されたり、使われなくなったりしたわけではない。現在は、IPv4インターネットとIPv6インターネットが「並行運用」されている移行期にあたる。

 それでは、IPv6インターネットへの移行はどの程度進んでいるのだろうか。「IPv6移行」をどう定義するのかにもよるが、たとえばグーグルが同社サイトに対するIPv6アクセスの割合を公開しているデータ(http://www.google.co.jp/ipv6/)を参照すると、グローバル全体では現在30%程度がIPv6によるアクセスとなっている。また、国別のIPv6利用率には大きな差があり、日本からのIPv6アクセスは34%程度だ。

 日本の場合、LTEが導入された2012年ごろから、モバイル通信事業者(モバイルキャリア)各社のネットワークがIPv6への移行を開始している。接続する個々のスマートフォン(のOS)がIPv6に対応していれば、グローバルIPv6アドレスが割り当てられ、IPv6インターネットにも直接アクセスできる仕組みだ。

IPv6接続のテストサイト(test-IPv6.com)にスマートフォン+4Gネットワークでアクセスした画面。ちゃんとIPv6接続されている

互換性のないIPv4/IPv6プロトコルを共存させるには?

 前述したとおり、現在はIPv4/IPv6インターネットが並行運用されている状況だ。しかし、IPv4とIPv6という2つのプロトコルの間に互換性はない。前述のとおりIPアドレスの形式も異なれば、パケットのデータ構造も異なる。ほかにも多くの違いがあるが、端的に言って、IPv4のノードとIPv6のノードが直接通信をすることはできない。“違う言語”を話す人同士での会話が成り立たないようなものだ。

 したがって、たとえばIPv6でWebサイトを公開したい場合、自社のサーバーだけでなく、ユーザー側のクライアント(PCやスマートフォン)も、そしてその間をつなぐ多数のネットワーク機器(ルーター)も、すべてIPv6を扱えなければならない。誰もが接続できる巨大なインターネットで、ある日を境として全員が(すべてのノードが)IPv6に切り替わる――これは実現不可能だ。

 そこで生まれたのが、さまざまな「IPv4/IPv6共存技術」である(「IPv6移行技術」とも呼ばれる)。これまでどおりIPv4が利用できるインターネット環境も維持しつつ、IPv6が使える条件が整っていればIPv6を使えるようにすることで、IPv6インターネットへの漸進的な移行を可能にする。

前へ 1 2 3 次へ

この連載の記事

過去記事アーカイブ

2020年
03月
04月
2012年
02月
2011年
05月
07月
2010年
08月
09月