このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

NASに採用されるストレージの条件とは

NASメーカーQNAPカントリーマネージャーに訊くSeagateとの取り組み

2020年03月31日 11時00分更新

文● 飯島範久 編集●ASCII編集部

提供: 日本シーゲイト

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 NASなどの製品を手掛けているQNAPをご存知だろうか。2004年に台湾で創業したQNAPは、単なるストレージサーバーの枠にとらわれず、バックアップやマルチメディア、仮想化などといったソリューションをNAS上で動作するアプリとして提供。業界の最先端を突き進んでいくイノベーティブな企業だ。

 業界的にはエンターブライズ市場に強い印象のあるQNAPだが、中小企業やコンシューマーまで幅広いラインアップを誇る。エンタープライズで培った技術や経験、性能をコンシューマーレベルに降ろして製品を提供しているので、高い信頼性と使い勝手のいいNASが揃っている。

 そんなQNAPは、ストレージメーカーなくして成り立たない企業でもある。そのため、Seagateとは良好な協業関係を保ちつつ、お互いの製品づくりに貢献してきている。そこで今回は、QNAPのカントリーマネージャー楊正安(Jack Yang)氏とSeagateの技術本部本部長である横山智弘氏のお二人に、NASやストレージ市場、更には両社の結びつきについてお話を伺った。

QNAPとSeagateが密に協業する理由

―― 現在のNASの市場についてお聞かせください。

楊氏(以下敬称略) :現在のトレンドとして、扱うデータ量が格段に大きくなっています。以前であれば、大きなデータは大企業だけだったのですが、コンシューマーレベルにまで降りてきています。

 NASは、Network Attached Storageの略なのですが、最近はいろんなアプリケーションが多重化しています。NASをご存じない方は単なるストレージユニットという認識が高いかもしれませんが、実は中にCPU、ならびにOSが入って、さまざまなアプリケーションがNASの環境上で動くようになっています。

 ライフスタイルの変化により動画や写真など個人が持つデータサイズも大きくなっており、それに応じてNASそのものも成長しています。コンシューマーでも便利に活用できるアプリケーションも増えており、今後もNAS市場は成長し続けていくでしょう。

QNAP カントリーマネージャーの楊正安氏。

―― QNAPとSeagateとの取り組みは、どのような活動をしているのでしょう。

楊 :Seagateさんとは10年ほど前からお付き合いさせて頂いております。NASのデザインのレベルから、検証や評価、互換性以上の、いわゆる、単に動くかどうかだけレベルの動作確認をしているだけではなく、プラットフォームとのマッチングを含め、エンジニア同士が協力して、製品開発に取り組んできています。Seagateさんには手厚いサポートをいだいており、とても助かっています。

横山氏(以下敬称略) :Seagateは全世界で展開していますが、台湾にQNAPさんをサポートするための専属チームがあり、絶えずQNAPさんの新製品と、我々の新製品とのマッチング作業を行なっています。開発レベルから一緒に評価し、お互いの製品がリリースされる時点ですべての製品において、お互いに評価済みというコラボレーションになっております。

Seagate 技術本部 本部長の横山智弘氏。

―― QNAPさんはストレージメーカーに対して要望や改善点をお願いすることはあるのでしょうか。

横山 :QNAPさんとは、未来に向けたロードマップを四半期ごとにやりとりしています。その中で、こういう製品があるから、こうしてくれああしてくれ、我々としては出来る、出来ないという議論を喧々諤々とやっています。このようなフローに則って、弊社ではマーケットへ出す前に、QNAPさんを始めとした、さまざまなパートナーの方々にサンプルを出しています。

 その中で、時にはQNAPさんが開発している自社製品を評価している際に、ある問題点をストレージサイドで改善してほしいという要望を受けることもあります。あるいはQNAPさんが見つけた問題を我々が修正することもあります。QNAPさんの製品と我々の製品が市場に出る時には、お互いの一定レベルにおける製品評価が完了したあとということになります。

―― つまりQNAPとSeagateを組み合わせた製品は、相性がバッチリだということですね。

横山 :そういうことになります。コラボーションというのは分かりづらいのですが、ユーザーにも分かりやすい活動の1つがIronWolfシリーズの「IronWolf Health Management(IHM)機能」でしょう。QNAPさんと我々の間には、いかに両社が協力して、お互いの製品の信頼性を高めていくという目標があります。そのために、お互いが貴重なリソースをかけ製品ごとに味付けを変えてさまざまな課題、あるいは問題解決を試みています。

 NASには2ベイ、4ベイなどさまざまな仕様がありますが、HDDをどこのベイに搭載するかによって振動特性が変わってきます。でも、どのベイに搭載したかどうかは、HDD側では分かりません。そのため、1つ1つの製品に対して、振動特性のパラメーターなどを認識して動作させています。

 これはアプリをダウンロードして動いたり、S.M.A.R.T.のデータを読んで動かしているだけというような単純な機能ではありません。さまざまなNASメーカーがストレージの状態を検出していますが、それらの多くの仕組みは、ある一部分のS.M.A.R.T.データを参照しているにすぎません。

 弊社のIHMは、1つ1つの製品に対し、1つ1つのデバイスがどう対処していくのかを、もの凄く考えて調整されています。その実現のためには、QNAPさんを始めとしたさまざまなパートナーさんのエンジニアが協力してくれないと成り立ちません。万が一の時にどのようなことが起こり得るのか。それをどのように予見して、どのようにユーザーに伝えていくのかということを地道に取り組んでやっています。

―― NASは大切なデータを保管することが多いですから、非常に重要なことだと思います。QNAPとしてはNASをどのような活用法を提案しているのでしょうか。

楊 :我々はピュアなNASだけでなく、メディアアプリケーションにも力を入れており、写真やビデオを簡単に扱えるような仕組みを用意しています。また、HDMI端子を搭載することで、テレビなどに直結して利用できるものも用意しています。この辺りが、他社との違いであり、ユーザーにさまざまな選択肢を提供しています。

 また、我々の強みはクラウドストレージのサポートです。現在22種類のクラウドストレージサービスと連携しており、クラウド上に置いておくもの、NAS上に置いておくものとしっかり使い分けて利用できます。ユーザービリティーも含め、圧倒的に使い勝手がいいと自負しております。

 もちろん、OneDriveやDropbox、Google Driveなどコンシューマーで利用されるクラウドストレージサービスにも多数対応しています。現在、日本のベンダーと話が進んでいるので、日本独自のクラウドサービスにも今後対応させていく予定です。

――なぜクラウドストレージサービスとの連携に力を入れているのでしょうか。

楊 :クラウドストレージサービスは非常に便利ではあるものの、その分コストがかかります。無料で使える容量はわずかしかなく、すぐに逼迫してしまいます。そうすると、必要なものはクラウド上に置いておき、あまり必要ではないものはNAS上に置いておくことが重要になります。クラウドストレージサービスの利用は最小限に抑えておくことで、コストを抑えられます。

 こうした運用方法は再び注目を集めています。他社はその辺りに注力しておらず、クラウド連携がうまくいかず、我々の製品に乗り換えたというケースも多いですね。クラウド連携に注力してきた我々としては、嬉しい限りです。

―― コンシューマー向けのNASで使ってほしいHDDは、やはりIronWolfシリーズですよね。その理由というのはIHMの対応以外にもありますか?

横山 :Seagateもエンタープライズからコンシューマー向け製品まで取り揃えており、用途に合わせて味付けを変えています。NASは24時間365日稼働することを想定した高信頼性のHDDを使わないと、パフォーマンス面でも信頼性面でもさまざまな所に影響が出てきてしまうと思います。そのためにもNASにはIronWolfシリーズを強くオススメしています。

 また、最近はIronWolfをデスクトップPCでも利用するケースをよく聞きます。それは、デスクトップPCでもHDDを複数台装着しているケースで、そうなるとNASと同様に共振による振動が発生する可能性が高くなります。HDDから見たらリードライトされているだけなので、何のシステムで使われているのか判断できないのですが、IronWolfは駆動時の外乱振動に対して、パフォーマンスや信頼性を担保した設計になっています。そのため、パソコン用途であってもIronWolfをオススメしていきたいと思っています。IronWolfは決してオーバースペックでは有りませんので。

―― QNAPが考えるストレージメーカーに必要なこと、求めていることとは?

楊 :やはり高い信頼性ですね。また、NASもイーサーネットがどんどん速くなってきているので、ストレージのあり方もパフォーマンスが要求されてきています。今後はよりHDD、SSDのどちらもパフォーマンス面を要求されていくだろうと予想します。

 また、NASとしては多様なアプリケーションもキーワードになっています。ハイパフォーマンスのストレージデバイス、より簡単なマネージメントの仕方も期待したいですね。操作自体が難しいのはコンシューマーに向けてはあまり良くありません。アプリケーションを通じて、いかに簡単にエンドユーザーでも扱えるのかが重要だと思っています。

横山 :パフォーマンス面でいうと、すでにNASで活用されているNVMeのSSDも評価済みです。QNAPさんの製品にはスロットが搭載したモデルがすでにいくつか発売されています。ハイエンドのNASだと、ホットデータはSSD、コールドデータはHDDという階層的な使い方をするシステムがラインアップされています。そういった動作もしっかり検証済みです。今後もQNAPさんの製品に適合するよう努力して参ります。

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ